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ハガル・トッカータ  作者: 借屍還魂
129/200

点と線

「日付?」

 僕は首を傾げた。日付、そう言えば、そんなものも書いてあった気がする。でも、重要なのは黒魔術の改良点や手順であって、誰が行っているのかもわからないのに、日付だけ知ることができても大して意味がないと思っていた。

「そうです。筆跡からも分かりますけど、同じ人物が魔術を繰り返し行った場合は、並ぶ日付は近いじゃないですか」

「まあ、貴族院には三年間しか在学しないから、同じ人物が書くなら三年以内になるね」

 当然と言えば当然である。ただ、人から隠れて行っていることや、道具の準備などを考えるとそう頻繁には行えないだろう。なので、日付が開くことがあっても不思議はないと思うのだが、ミフネ嬢が引っ掛かるほど違和感のあるものだったのだろうか。

「で、研究を引き継ぐとするじゃないですか」

「黒魔術の研究と考えるとリスクが高い気がするけど」

 引き継いだ相手に摘発されたらまともな人生は送れないことになる。が、そんなことを気にしていると話が進まないので、摘発しそうにない黒魔術に興味があるような相手を選んだことにする。

「三年生が一年生に引き継いだとして、流石に人目を気にした次の人は中々魔術に取り掛からなかったとしても、多分在学中に一回はやりますよね?」

「三年間も生活してたら、一人や二人、呪いたい相手はいるだろうからね」

「そうやって、脈々と受け継がれていくとするじゃないですか。そうしたら、日記の日付は、最大でどの程度、期間が開くと思いますか?」

「五年くらい?」

 一年生の時に教えて貰って、一度試す。その後は何もせずに、三年生の時に一年生に教える。そして、次の人物が三年生の卒業前に一度試したとしたら、六年は開かないだろう。

「でも、今回の、モミジさんを呪った相手の直前の日付、何時だったか覚えてますか?」

「覚えてないけど……」

 確か、三回目までは最初の人物が行ったもので、それが十五年前だったはずだ。というか、日付は書いてあったが、年数は書いていなかったので特定は不可能なのではないだろうか、という事を思い出す。

「ミフネ嬢、あれはノートや蝋燭から年を推測しただけで、他の実験の年は特定できていない筈じゃ……」

「魔導士塔の魔法と、文官によるインクや紙の状態からの解析である程度結果出てますよ」

「え、僕知らないんだけど」

 いつの間に調査結果が出ていたのだろうか。僕が単純に注意していなかったのか、それとも、ミフネ嬢が特殊な伝手で手に入れたのか。でも、ミフネ嬢は重要と思った情報なら僕が嫌な事を思い出すことなんて関係なく共有するはずだ。

「殿下は……」

「最初に私の所に情報が来たから、確認後にミフネ嬢に渡したよ」

「ミフネ嬢」

「勿論読みました。で、クインテットさんに渡しましたよ」

「クインテット嬢……」

 じ、とクインテット嬢の方を見つめる。すると、後ろめたいことがあるのだろう、クインテット嬢はゆっくりと僕から視線を逸らした。

「申し訳ございません……。既に終わった事件だったこと、モミジ様が精神的疲労を感じられていたことから、ヴィヴィア先生に相談した結果、情報を共有しないことにしたのです」

「あ、いや、そういう理由ならいいんですけど……」

 あの時は、黒魔術のことについては魔導士塔に任せておけばいい、と思っていたこともあるし、クインテット嬢は僕を心配してくれたのだ。それを責める気にはなれず、段々と声が小さくなってしまう。

「モミジさんが役に立たないから情報共有しなかったわけじゃないので安心してください」

「ミフネ嬢、もう少し言い方考えられなかったんですか?」

 どちらかというと、今のミフネ嬢の発言の方が傷付いたのだが。兎も角、少々脱線したが解析結果曰く、最後のページに記載されていた結果は八年前の物だったらしい。全部で十回以上の実験結果があったはずだが、意外と短い期間に何度も行われていたようである。良い事ではないけれど。

「モミジさんの分に関しては、結果が出る前に解除されましたし、ノートも回収されたので記載なし。つまり、直近であの隠し部屋が利用されたのは八年前の可能性が高い訳ですよ」

「でも、それなら、さっきの計算と合わない……」

「そう、それなんです!!」

 意外と頻度の高い実験、八年もの空白、都合よく見つかった隠し部屋。ミフネ嬢が偶然ではない、と思う理由はそこにあるらしい。

「隠し部屋に入る仕掛けは簡単ではありませんでした。わたし達より成績がいいとは言えない人たちが、自力で見つけることができたとは考えにくいと思っていたんです」

「容赦ないな」

「あの悪魔との儀式もです。最終的に悪魔は加護があってもわたしを乗っ取って魔力を集めようとした位なのに、何故、態々あの儀式を利用して魔力を集めるなんて面倒な方法を取ったのでしょう?それに、あの儀式は図書室の本をかなり探して出てきた土着の儀式。退学した方は地方の出身なのに、何故知る機会があったのでしょうか?それに、悪魔の保有魔力量からして、儀式は何度も、別の人物が行ったいた筈では?」

 その全てが、繋がっているとしたら?


次回更新は11月16日17時予定です。

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