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ハガル・トッカータ  作者: 借屍還魂
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突然の脱出ゲーム?

 翌日、フィッシャー辺境伯爵子息は授業に来なかった。どうやら、まだ意識が戻らないらしい。昨日は偶然行動を別にしていた彼の友人がそう呟いていたのを聞いて、ミフネ嬢は怪訝そうな顔をした。

「よっぽど打ち所が悪かったんですかねぇ……」

「致命的な傷なら、既に大事になっていると思うのですが」

「見たところ大きな外傷はない、と仰っていた筈だよ」

 よくわからないが、僕達は医療系の知識があるわけではないし、特にできることも何もない。ただ、不可思議な現状に首を捻るだけだった。

「明日の授業、参加できるといいですね」

「確かに。重要な授業らしいからね」

 更に次の日は一年生全体での魔法の授業である。午前中に魔法の理論を勉強し、午後からはグラウンドで実践すると言う一日魔法漬けの予定だ。

「丸一日って、結構時間ありますよね」

「普段の授業時間を全て魔法に当てるとなると、単純に倍以上魔法に触れる時間になるからね」

「魔法の授業はない日もありますからねぇ」

 他の科目は勉強しなくてもいいのだろうか、とは思ったが、これは毎年恒例の行事らしい。魔法は魔力のコントロールが最も重要なので、一日魔法に集中して自身の周りの魔力の流れを掴むことで大きな成長を期待できるそうだ。

「それにしても、魔法の勉強ということ以外全くわかっていませんが、何か準備するものはあるのでしょうか?」

「午前中は理論だと言われているし、筆記用具を揃えていれば大丈夫なのでは?」

「それか、何かしたらこれが見れるんですかねぇ?」

 事前にに日程表を配られたのだが、分厚い割には全て白紙になっており、何も分からなかった。魔力を表面に流してみたり、紙が変色しない程度に軽く火で炙ってみたりしてみたのだが何も浮かび上がってこなかった。

「水でも掛ければいいでしょうか?」

「もしかしたらノート代わりにするのかもしれない。下手な事をせずに明日の指示を待ったほうがいいだろう」

「ですよねぇ……」

 ミフネ嬢、クインテット嬢と試行錯誤したものの、明日のことは何も分からなかった。毎年恒例行事ならばと思い、兄二人から話を聞いたことがないか思い返してみたがそんな話をされた記憶はない。恐らく、初日の授業同様に内容が秘匿されている可能性が高い。

「まぁた、土壇場の実力を問うタイプですかねぇ」

「予習なしでの吸収力を見るのかもしれないよ」

「どちらの場合も全力を尽くすのみです」

「そうだね」

 事前に何も知らせないということに意図があるなら、それに従った上で実力を示すのみだ。そんな気持ちを胸にして、僕は眠りについた。筈だった。


「……どういうこと?」

 目を覚ますと、何故かベッドの上では無く、床の上に四肢を拘束された状態で転がされていた。後ろでに拘束されて床に転がされていた割には体が痛くないので、そこまで時間が経っていないことがわかる。

「いや、ていうか、何で?誰が?何時?ここ何処?どうやって運んだの?僕気付かなかったんだけど」

 ある程度、不審な気配は察知できるように訓練していたつもりだったのだが、まだまだ未熟のようだ。今何時だろう。自然に目が覚めたなら朝だと思うんだけど。

「寝返り……は、なんとかできそうか」

 取り敢えず情報を集めなくては。そう思い、周囲を見渡すが現時点の視界には壁と床、天井しかない。視点を動かすべく体を動かすと、カーテンが閉まった窓が見えた。

「あ、下の方微妙に光が入ってきてる」

 少なくとも日の光が僅かながらある時間帯のようだ。そのままぐるぐると体を回していくと、扉と僕との間に日程表が開いた状態で置かれていた。真っ白だった筈の日程表には何かが書かれているのがわかるが、暗くて字は読めない。

「え?」

 どういうことだ、と思いつつ、取り敢えず光を取り込むためにカーテンに向かって風魔法を撃つ。が、カーテンの端に当てただけでははためくだけで開けることができない。

「手で方向指定しないと難しい……!!」

 普段は指先で放つ方向を指していたのだが、意外とあれは効果があったようだ。そんな事を実感しつつ、今度は集中してカーテンの中央から両端へ、端を窓横の出っ張りに引っ掛けるように風を撃つ。

「やった!!」

 カーテンが再び閉まらない事を確認して、日程表を見る。そこには、一年生魔法強化訓練実施日程(特別版)と書いてあった。

「いや、特別版って何?」

 通常版ではないのだろうか。文句を言っても書いてある内容は変わらない。仕方がなく続きを読むと、見覚えのある字で特別版についての補足説明が書いてあった。

『この授業では、各生徒の魔法の技術向上を目指す為、通常日程では課題が足りないと判断された生徒には別に課題を課すこととする。この課題はモミジ・ストックデイル専用課題である。尚、全ての授業の内容を口外する事を禁止する』

 間違いなくヴィヴィア先生の字である。そして、事前情報が無かった原因もわかった。溜息を吐きながら長い説明文を読んでいくと、最後に簡潔な一文があった。

『次のページへ』

 と。

次回更新は10月23日17時予定です。

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