プロローグ③
開いたドアから出てきたのは、白に近い金髪の髪が少し目立つ男。
目は糸目と言うやつだろうか。見えてるか疑問だけど、意外と見えてるらしい。
しかし1番目を引くのは細い身体とその横幅よりでかい背負いカバンだ。
前から思っていたけど、戦闘向きの体をしていない。
冒険者と呼ばれる魔物を狩って生計を得るタイプの旅人にも色々いるが、身軽な者だってちゃんと鍛えている。
私も前衛としては期待できない魔法使いだが運動して体力をつけている。
彼とは勇者パーティでの知り合いだったが、彼が鍛えているところを見たことがないし、身軽に行くにも彼の背負う大きいかばんがその邪魔をしている。
じゃあ彼の役割は何か?
旅の商人、その中でも高価で珍妙な品を扱うとされている薬売りだ。
「待っていたのよ、具体的には1年くらい。あなたがあんな状態じゃなければ、もう少し早く集まれたのに。」
1年も経てば、人の気持ちなんて当然冷める。
なのに何故1年も置いたかというと、この男は勇者パーティを抜けて親殺しの犯罪者になっていたからだ。
つい最近釈放されたらしい。
噂では勇者が金を渡し、刑期をかなり短くしたとか。
当の本人がどう思ってるのかは知らないが、さすがに待たせたことくらいは申し訳なく思っていてほしい。
「久しぶりだと言うのに相変わらず辛辣だね、ルロウ。おや、君とは初対面かな?大男くん。名前を教えてくれるかい?」
薬師はそういうと肩を竦め、そしてアルデアの方向に腕を伸ばす。
「ラステ、呼び捨てを許可した覚えはないのだけど?」
パーティに所属していた時から、ラステとはあまり話さなかった。お互い目的達成に必死だったから。
彼は必死さを表に出そうとはしなかったけど、同類は何となくわかる。
「君も呼び捨てじゃないか。…辛辣で、そして細かい。懐かしいなあ…刑務所で過ごしてた時には思い出すことしか出来なかったけど、また会えるとは。」
ラステは懐かしむように目を細めていたけど、「…アルデア」という声で帰ってきたようだ。
「アルデア君、ね。OK覚えたよ。しかし、ちょうど待ち合わせの時間くらいに来たのにあと2人くらい来ていないような…」
そう、まだ2人来ていない。
正直、あと2人とは話したことすらない。
アルデアと知り合いだと言うので伝えては貰ったのだが、来てくれるだろうか…
基本的な情報はある。
1人は火の聖女。ワマタ王国は、エルズ教会が王と同じくらいの権力を握っている。
教会には、複数いるとされる神の使いを任される役職がふたつある。
1つは教皇。陽の神の使いであり、教会のトップでもある。
もう1つは聖女。神1柱ごとに1人使いとなる。
こちらは教会の政治に直接は関われないが、聖女で組織された「聖女の集会」を無視することは教皇でも難しい。
そして神の1柱たる火の神の使いが、火の聖女。
スペイヤという名前の聖女は、王国1の弓の使い手でもある。
火の神の加護で火を自由に操れて、弓まで扱えるとなれば正直ずるいとすら思う。
同じ火の神の加護を受けた勇者とは相性が良かったはずだけど、なぜパーティを辞めたのか。
聞いてみたいものね。
もう1人は確か魔法剣士だ。勇者に憧れて猛アピールを繰り返し、なんとかパーティに入れて貰えたらしい。
剣士としての腕は確か。しかし魔法が雑という極端な一面があるらしい…
魔法剣士として重要なのはバランスだ。頭を使う前衛とも呼ばれている。
どのように魔法を使えば剣を振るう時に有利になるか?
そういうものを常に判断しなければならない。
噂だが、アハサキに向いていないとはっきり言われて故郷に帰ったらしい。
葬儀には出たらしいが、来てくれるのだろうか?
開いたドアが答えを示した気がした。
見なくてもわかる。
そもそもこんな日に普通の客は来ない。
2人が、来た。