第六話 謎の刺客
立ち止まり、歩み出す。
そしてまた立ち止まる。
包まれた森を真っ直ぐ突き進む。
辺りはもう真っ暗で、目的地に向かっているのかも定かではない。
それに激しい飢餓感が襲ってくる。
普段の日本での生活では、仕事で金銭を稼げば食住に悩むことはなかった。
しかし、この異世界に来たばかりの他所者にはどうもそうは問屋が卸さないらしい。
ブランの姉妹たち、待ってろよ。
生憎、俺という生き物は諦めが悪かったらしい-それはそうだ。
アラフォーになってもまだ、妹を作ることを諦めていないのだから。
妹好きのアラフォー男に二言はない。
妹百人作るか…。
少しゾッとするがそれが俺なのだから、認めようじゃないか。
今はただ生きよう。
生き延びよう。
この異世界-ブリテンの地で。
再び自身を鼓舞して歩み出す。
しかし、妙だ。
歩みを進めるごとに何やら美味しそうな西洋料理のシチューのような匂いが香ってくる。
俺は好きな食べ物は何だと聞かれれば、間違いなくシチューだと答えるくらい、シチューに目がない。
こんなの反則だ。
(小学生が鬼ごっこでバリアを使うくらいに。)
そんな事はどうでもいいのだが。
間違いなく、俺以外の何かが近くに居るという事だ。
警戒しなくてはっ。
身構えていると、茂みから黒い影が飛び出た。
「金髪の不審者発見。かなり疲弊仕切っている模様。直ちに捕獲します。」
目の前にはさっきの声の主であろう奴が立っている。
濃紺の服にフリルのついた前掛けを羽織った使用人姿の幼女が月夜?…に照らされ、立ちはだかっている。
顔には影ができ、表情は見えないのだが、カールのかかった翠色の長髪からは、森人の様な長耳が伺える。
『きっ…君は誰?』
「……………。」
返答は無言だった。
そして、右手には小銃を構えてこちらにじりじりと詰め寄ってくる。
身の危険を案じた小太郎は、一心不乱に両手を挙げ、白旗を上げた。
「ドシュン!」
『え?!』
小太郎は地べたに倒れ込んだ。
横目に駆け寄ってくる人影を眺めていると、いつの間にか視界が霞んでゆき、意識が遠のいていく。
『ふぁっはぁ〜。』
小太郎が次に目を覚ました時には、暖かいふかふかのベッドの上に寝ていた。
初心者なので、コメントくれたら嬉しいです。