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 残り人数はもう残りわずか。私、蒼士、恵、翔平の4人にまで迫っていた。蒼士は無事だろうか。蒼士の無事を願いながら私は3階の部屋を探していた。恐らく、鬼は3階に人が複数人いることに気づいている。でも、一体何が目的でこんなことをしているのだろうか。私は無条件に突きつけられたこの現実と向かい合いながら、一向に見つからない鍵を見つけるべく3階を探し回ったが見つからない。

 3階の探索ももうあと数部屋で終わろうとしていた。恐らく、私の反対側に恵がいるだろう。今の状況を精査すべく、恵に会いに行くことにした。



「恵? いる?」


 近くに鬼がいたら困るため、小さな声で呼び回った。こんな声じゃ聞こえないかもしれないが、近くにいたら何かしらの反応はあるだろう。


「おい」


私の後ろから声がした。この声には聞き覚えがある、翔平だ。


「あ、翔平くん」


「俺はお前と別れたあと、3階を探索したが鍵はなかった」


「え、どういうこと……」


3階も全部屋探索済みだとしたら、この施設全てを探索し終わったことになる。それでも鍵が見つからないということは、きっとどこかに見落としているのだろう。無論、鍵なんてなかった、という説もある。


「鍵はこういう部屋には多分、隠されてない。もしかしたらと思って地下と屋上に続く道を探したが、どこにも無かった」


「じゃあ、どうすれば」


また1から鍵を探すなんてもうしたくない。いっそこのまま鬼に殺されたい、なんて思ってしまった。


「鬼を倒すんだよ」


翔平は何を言っているのだろうか。私には訳が分からなかった。


「あ、ちなみに恵と蒼士も多分殺られた。恵がどこで死んだのか分からないが、蒼士は階段で倒れていたぞ。恵ごめんって叫び声もしたし、恵も多分殺されたでしょ」


蒼士に対する悔いの気持ちが湧き出ると共に、軽々しく言う翔平の姿に腹が立った。


「そんな簡単に死んだって言わないで」


「何を今更そんな綺麗事言ってるんだよ。お前は復讐したくないのか、鬼に」


翔平は復讐の思いで鬼を殺そうとしているようだった。


「鬼を殺してここから逃げれるなんて保証は?」


「ない。ないけど、殺る」


翔平の意思はかたかった。


 もう、どうでもよかった。最愛の彼氏は奪われ、仲間も失った。別に死ぬことにもう抵抗はない。私は翔平に気付かされた。何に気付いたかと言われたら答えることは出来ない。でも、また翔平によって私の気持ちに変化が生じたのは事実だった。


「分かった、殺ろう」





 10分近く経過しただろうか。翔平とまた3階で会おうと待ち合わせをし、私は武器になりそうな用具を探していた。幸い途中に鬼に会うことは無かったが、恵と蒼士の死体を運悪く見てしまった。ぐっと溢れ出る涙をこらえ、戦えそうな物を探す。病院に武器具があるかと言われたら無いだろう。私は少し小さめのナイフ、ロープ、そして、何に使われていたか分からない盾に使えそうな木板を手にして3階へ戻った。


「遅かったな」


既に翔平は待っていた。見た感じ何も持ってないが、恐らくナイフか何かは持っているのだろう。


「ごめん」


「もう、勝負は始まってるよ」


翔平はそう言うと、私の方に向かって歩いてきた。私を殺そうとしているのだろうか。確かに、言われてみれば何人かの死体は翔平に教えてもらったものばかりだ。私が実際に殺害されている現場を見たのは百奈だけ。翔平がグルで黒幕だなんて話も有り得る。

 私は身構えた。翔平との距離が少しずつ迫ってくる。


「翔平くんが黒幕だったんだね」


私がそう言っても翔平の表情は変わらない。強いて言うなら、私を嘲笑うかのような表情をしていたが、それはいつもの事だろう。


「死ね」


翔平はそう呟くと、一気に私の方へ向かって走ってきた。唐突のことに私は驚き、木板を盾に見立てて座り込んだ。


私死んじゃうんだ。




 ふと目を覚ますと、目の前に翔平の姿はもちろんなく、私が死んでいるわけでもなかった。後ろを振り返ると、倒れる者が1人と、立ち尽くす者が1人いた。

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