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第十五話

とある日、アリアは資料室へ向かった。アルデバラン国の成り立ちに関する本を探すためだ。自分の前世がレダならば、その生い立ちを読めば何か思い出せるかもしれないと思ったからだ。

資料室の管理人はアリアが来ると快く入れてくれ、本を探すのを手伝ってくれた。アリアは何冊かの本をテーブルに置くと、黙々とそれらを読み進めていった。分からない言葉は英語辞書で確認しながら読んでいくと、いくつかのことが分かってきた。


レダはアルデバラン建国前の国の隣国の王の娘だったが、自国が攻め入られた時に助けてくれた王の下へ嫁ぎ、正妃として数人の子どもを生んでいる。夫婦仲は良かったようだが、国が力をつけてくると他国との小競り合いが増え、緊張状態に陥ってしまった。そんな中、レダは渉外や広報の役割で立ち回り、非常に成果を上げていたらしい。国の民衆の福祉にも心を尽くし、民衆の暮らしは飛躍的に良くなったためレダを民衆も敬愛するようになった。しかし諸外国との小競り合いの最中、国王が留守の間に急襲を受け、民衆を傷つけないように自分を犠牲にする形でレダは死亡する。その後、死を悼んだ民衆により自発的にレダを女神としたシグヌース教が発足し、アルデバラン国建国後は国教となり国を挙げてレダを祭ることになった。

アリアは深い溜息をついた。いくら史実を読んでもまるで自分のことと思えない。これが自分の前世だったなんて、信じられないのだ。

もしも自分の前世がレダでなかったとしたら・・・?シリウスの勘違いだとしたら・・・?

アリアは険しい顔で包帯を巻かれた自分の右手をじっと見つめると、本を仕舞いに立ち上がった。

本棚に本を返そうとしていると、誰かの気配を感じて振り返った。そこには前にパーティで会った金髪の男が居た。

「あなたは、クラテール家のリヴァさん」

「覚えていただき光栄です」

そういうとリヴァはアリアの手を取りキスをした。どうも気障で芝居がかったやり方が好きな男のようだ。

「どうしてここに?」

「あなたの姿をお見かけして、一言挨拶をしに参りました」

「それは、どうもありがとうございます」

「アリア様は何かお探しでしたか?」

いえ、とアリアは言いよどんだ。レダの生まれ変わりであることは他言してはならないと言われているから、レダについて調べていたことも言わないほうが良いだろう。リヴァの探るような瞳が居心地の悪さを感じさせられる。

「アリア様は今やひっそりと有名になっているようですね。孤児院での一件を聞きましたよ。孤児院で上手くやっているだけでも驚きものなのに、あのフォルナクス家のラナや他国の企業まで巻き込んで、院長の不正を暴いたそうじゃないですか」

「え、噂になっているんですか」

「もちろん、あの教会の孤児院自体、オリオン社のおかげで一躍有名になりましたからね。オリオン社の誘致もあなたの思惑だったのでしょう?」

敢えて誰かに言いふらしてることではないのに、なぜ知っているのだとアリアは驚いた。

有力なクラテール家の当主であるリヴァには何でもお見通しなのかもしれない。それにしても、ハンサムで人に警戒心を持たせない笑みをいつも湛えているリヴァが、アリアはどうも苦手だった。裏表がありそうな、腹に一物を抱えてそうなリヴァの態度が、どこか信用できないのかもしれない。

窓から爽やかな風が入ってきて、髪を撫でていく。その時、リヴァの目線が急にきつくなった。手がゆっくりと伸ばされ、驚くアリアの肩をガシッと掴んだ。

「あなたは、望まずにこの王宮に連れてこられたと聞いておりますが・・・」

ドキリとアリアは目を見開いた。やはり、なぜ知っているのだ・・・。

「あなたは無理矢理この王宮に来て結婚を迫られている・・・嫌ですよね?逃げ出したいですよね?」

「あ、あの、リヴァさん・・・?」

仮面が剥がれて冷酷な表情でアリアを見据えるリヴァが怖い。怯えるアリアを楽しげに見ながら、リヴァの指が首筋をなぞった。

「ならこれは一体、なぜついたんでしょう」

リヴァの指しているのものが、首筋のキスマークだと気づいて、アリアはカッと顔が赤くなった。それを面白くなさそうに見つめたリヴァが、急にがぶりとアリアの首筋に噛み付いた。悲鳴をあげるアリアの口をリヴァの手が塞いだ。

「ムダですよ、ここの管理人にはしばらくどこかへ行ってもらっていますから」

そう言うと、リヴァは体を押し付けてアリアを本棚に追いやった。首筋を酷く嬲られながら、リヴァのもう片方の手がスカートをたくし上げる。必死に抵抗しようとするが、強い力に撥ね退けられてしまう。足の間にリヴァの足を割りいれられ、太ももを撫でられる。アリアは涙目になりながら鳥肌を立たせていた。

こんな風に、男に襲われたことは無かった。シリウスはいつも、自分に無茶な仕打ちをしてこなかったから、返って男の力の強さ、圧倒的な支配力が恐ろしかった。カタカタと震えながら、何とか手を押しのけようとするが、ビクともしない。口を塞いでいた手が退けられたかと思うと、すぐさまリヴァの口で塞がれた。そして胸を揉みしだかれ、割り入れられた足で股を摩られた。来ていたシャツを乱暴に引き裂かれ、中に手が入ってくる。ブラジャーをずらして乳首を嬲られる。嫌だ!という言葉が塞がった口で呻き声としてあがった。思い切ってリヴァの舌をがぶりと噛んでやると思わずリヴァが怯んだ。その隙にリヴァを押しのけて、振り切って逃げ出した。それを見やりながら、リヴァが酷薄な表情でニヤニヤと笑っている。

「なんだろう、あの人とシリウスが寝ていると考えるだけで、腸が煮えくり返るな・・・」

リヴァは走り去るアリアを見つめながら、あの女が欲しいと思った。


アリアは走って部屋に戻る途中でリンクスに出くわした。リンクスはアリアの乱れた服装に驚き、何があった!と尋ねたが、アリアが泣き出してしまったので慌てて彼女を部屋に連れ帰った。そして携帯でシリウスに連絡を取ると、あっという間にシリウスが駆けつけた。

アリアは引き裂かれたシャツをかろうじて見に纏い、首に濃いキスマークを付けられていた。

「アリア、何があった・・・」

泣き続けるアリアにシリウスが眉根を寄せて尋ねる。

「誰が、手を出した」

「・・・クラテール家の、リヴァ・・・」

「奴か・・・」

シリウスが炎のように怒りを燃え上がらせている。優しくアリアを抱きしめて背中を摩り、額にキスを落とした。

「大丈夫だ、もう大丈夫・・・」

「シリウス・・・怖かった・・・!」

「奴は危険だ・・・もう近づかないほうがいい」

アリアは涙目でシリウスを見上げて、ぽろぽろと涙を流した。

「手が・・・震えが止まらないの・・・」

不安げなアリアに、シリウスは口付けた。アリアもキスをしていると、震えが収まるようだ。“貴様にレダを奪えるとでも思っているのか・・・?”

そう言って憎たらしく笑うあの王の顔を、シリウスは思い出していた。

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