第5話 『統率力』という支配者の異能
「ただし、この『統率力』は、とても強いので、これを使える生徒会長は、それを正しく使うことを試されなければなりません」
「でしょうね」
全校生徒を動かす力を、悪い奴が持ったら、暴動だって起こせてしまう。
欲深い奴が持ったら、女生徒を全員裸にすることすら出来るだろうし、自分の好みの子を全員自分に惚れさせることも出来てしまう。
「ですから、生徒会長には誰もがなれるわけじゃないのです」
「え? でも、この学校って、全校生徒の投票で生徒会が決まるんじゃないでしたっけ?」
俺も入学して数ヵ月だからこれまで選挙はなかったんだが、確か入学直後のガイダンスでそんなことを言ってた気がする。
「そうですね、三年を除く生徒全員に、生徒会に入る資格はあります。ですけど、生徒会長だけは、更に資格が必要なのです」
「何ですか?」
そういえば俺、何でこんな話聞いてるんだっけ?
あんまり興味ないんだけど。
この人も可愛いけどおっぱいないし。
「それは、『生徒会役員またはそれに準ずる活動にて、生徒会長を補佐した期間が半年以上の者』です」
「……それって、二年の生徒会役員くらいですよね?」
「例外はありますけど、少なくとも今年、生徒会役員以外で生徒会活動に参加してる二年生はいませんね」
「てことは、来期は郷羽先輩が生徒会長ですか?」
この先輩、いまいち頼りなさそうなんだけど、おっぱいも小さいし。
母性って言うの? そういうのが、女性生徒会長には必要だよね。
「そこですっ!」
いきなりの郷羽先輩の大声に、俺は心を見透かされたのかとびくっとする。
「生徒会選挙は慣例的に、副会長二人は選挙時の一年生を選びます。今の二年生ですね」
「はあ、ってことは、郷羽先輩の他にもう一人いるんですね」
「はい、二年の神酒大志くんです」
神酒大志先輩か。
その人もこんな感じなんだろうか?
「それでですね、私と大志くんはライバルなのですが、いくつかの点で私は負けているのです」
「いくつかの点?」
「はい、生徒会の活動とか、学校の成績とか、運動能力とか、人気とか、そういうもので負けているのです」
「……? それ以外に必要な要素ってありますか?」
「ですが、家柄では私が勝っているのです!」
なんか品はありそうだしな、この人。
品あり胸なしか。
いや、だけど……。
「いえ、それって生徒会長選ぶのにあまり関係ないですよね?」
良家のお嬢様がコネで生徒会長になれるのは私立のお嬢様学校くらいだろう。
「信用できる人材、ということになります」
「はあ」
なんか、バイトの採用みたいだな、親が公務員だから採用、みたいな。
と言ってもさ、この程度のおっぱいしか生み出さない程度しか栄養摂れない良家なんて、
高が知れてるだろう。
「後ですね、一番重要なのが、『統率力』をうまく使いこなせるか、なんです。これは今、私が優位なんですよ?」
「はあ……」
いや、この人、おとなしくもう一人の副会長に会長の座を引き渡した方がよくないか?
生徒会の活動も人気も負けてるんだろ?
ん? 『統率力』を使いこなせるか?
「先輩、さっき『統率力』は生徒会長しか使えないって言いましたよね?」
「言いましたよ?」
「だったらどうやって、使いこなせるかを比べるんですか? 使えない二人が競う事なんて出来ないですよね?」
「それが、そうでもないのですよ。……聞きたいですか?」
何故かこの段階でいきなりもったいぶる郷羽先輩。
「いえ、よく考えたらこの話、俺と関係ないですよね? 俺、そろそろ帰っていいですか?」
「駄目ですっ!」
俺が立ち上がると、郷羽先輩は大の字になって入り口を塞ぐ。
脇が甘いな。
くすぐるふりしてちょっとおっぱい触ってもいいけど、怒られる割にリターンが……う
ーん、ないわけじゃないんだよなあ、でもなあ……。
「もう少しで用件に入りますので、あと少し聞いていてくれませんか?」
俺が郷羽先輩のおっぱいを吟味しているうちに、そう懇願される。
「分かりました。もう少しですからね?」
「はい、じゃあ続きを話しますよ? えーっと、私と大志くんは限定的に『統率力』の力の一部を分けてもらったのです」
「え? そんなこと出来るんですか?」
「出来るんです! それで競い合っているのです!」
よく分からないけど、限定的にでも、選ばれた生徒会長以外の人が能力を持ってもいいんだろうか?
「ちなみに、どうやって競い合っているのですか?」
「会長からは、勝負の方法は提示されなかったんです。二人で決めなさいって」
なんか、適当だな、生徒会長。
「それでですね、大志くんから提案されたのですが、大志くんが女の子を一人操作して、私が男の子を一人操作します。そして、私の操作する男の子が、大志くんの操作する女の子を口説き、うまく行けば私の勝ち、うまく行かなければ私の負けになります」
「はあ、それって……」
物凄く、郷羽先輩が不利じゃないか?
だって、普通に告白しても失敗する確率の方が高いよな。
「そうです、これはとても公平な勝負なのです」
それに気づいてない時点で、この人多分馬鹿なんだろうな。
「そして、私は連戦連勝したのです!」
「へえ」
そんな勝負に勝ち続けるなんて、この人実は結構凄い……。
ん?
男の子が女の子を口説き、うまく行けば勝ち、でのルールで連戦連勝してる?
「先輩、それってもしかして、俺ですか……?」
「そうです!」
え? まさか、俺のあの惚れっぽくなったところとか、好みのタイプでもない女の子を情熱的に口説いたりとか、相手と付き合うことになったら興味なくなったこととか、全てのこの人が操作してたって事?
「……あんた、何てことしてくれたんだよ?」
「すみません! まさかあんなに全校生徒に嫌われるとは思ってなかったので!」
郷羽先輩は思いっきり頭を下げるが、そんなことで俺の怒りは収まらない。
こうなったら、直におっぱいを揉んでやろうか……いや、でも、このおっぱい、B程度しかないよなあ。
そんなの揉んで、この怒りを納めなきゃならないのは割に合わない。
「償いはどんなことでもします! 本当にごめんなさい!」
どんなことでもって言われても、おっぱい揉ませてもらうくらいしか……いや、やっぱりいいや。
「尾澤さんはさっきからどうして私の胸のリボンを何度も見てるんですか? 欲しいならあげますけど、これって普通の制服のリボンですよ?」
「いえ、それを見てるわけじゃないです」
その向こうの、おっぱいと呼ぶのもおこがましい、胸のささやかな膨らみを検分してただけです。
「それで、お詫びを返すのにいい方法があるんです」
「何ですか?」
「私が生徒会長になって『統率力』を使って、尾澤さんの人気を回復させればいいんです!」
凄い名案のようにドヤ顔で言ってるけど、それ、誰でも思いつくからな?




