表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/33

第30話 生徒会長

 結局昨日は美羽流と帰って親馬先輩に会いに行けなかったので、今日の放課後、図書室に行くことにした。

 まあ、顔は文句なしだろう、多分。

 神酒先輩のチョイスってのはなんだかんだで顔は可愛い子ばかりだった。

 おそらく自分が操作するんだから、可愛い子にしたかったんだろう、ゲームキャラで女性を使う人が可愛くするのと同じような理由で。

 で、おそらく俺と神酒先輩の顔の好みは似ているんだろうと思う。

 だから、今回も顔の好き嫌いは考えなくてもいい。


 問題はただ一つ、胸の大きさだけだ。

 それさえクリアしていれば、文学少女だろうが、年上だろうが問題にならない。

 顔が全然好みじゃなくっても問題ない。

 Dじゃ小さいがまあ、ギリOKとしよう。

 これがまた、BとかAだったら、俺の絶望感は半端じゃない。

 胸以外に女の子の何を魅力とすることが出来るのか分からない。

 まあ、確かにBでもそれなりには柔らかいんだけどな……いやいやいや!

 駄目だ駄目だ! Bなんて固いに決まってるんだ!

 郷羽先輩は、あれだ、毎日重曹でも刷り込んでるに違いない!

 固い肉を柔らかくするお嬢様のスキンケアだ、いや知らんけど!

 絶対F! 絶対F!

 俺は心で強く祈りながら図書室を目指す。


 テストもまだ近くないこの時期の図書室は人も疎らだった。

 とはいえ、それぞれ読書用のスペースは集中できるように一人ひとり仕切られている。

 一応集団用のスペースはあるものの、そこが使われるのはテスト間近くらいのもので、この時期はそれぞれがそれぞれの個人スペースで読書に集中している。

 それぞれの前も大きな板と蛍光灯で仕切られているため、顔が見えない。

 俺、本人に会ったことないから、郷羽先輩から聞いた特徴だけで探すしかないんだよな。

 ここで単なる特徴だけで人を探すのもつらいなあ。

 あと、どうやって話しかけるか。

 図書室で話をするのもマナー違反だし、テスト期間中ならもっとうるさいだろうけど、今は物音ひとつうるさいくらいしんとしてるし。

 うーん……まあ、とにかく、親馬先輩本人を探すか。

 俺は物音を立てないように一周した。


 えーっと、一周見回った限り、女の人は五人いた。

 うち、肩で揃えたストレートの人は二人いたんだよなあ。

 その二人、もう一回見に行くか……いや、確かメガネだっけ。

 メガネの人は一人だったかな。

 うん、確か、小さな人がメガネだった気がする。

 俺はそっとそのそばまで行って後ろから気づかれないように覗く。

 うん、確かに眼鏡をかけてる、体も小さいし細い人ってのもあってる。

 多分、あれが親馬先輩か。

 俺は、確認したいことがあって横から見える位置に動く。

 ああ……俺の希望が潰えた。。

 座ってるから確実じゃないが、あれはA、あってもBだ。

 くそっ、俺の好み全滅じゃないかよ!

 何を好きになれって言うんだよ!


 言わなかったけど、俺、メガネもNGじゃないけどない方がいいんだよ!

 最後に好み違うとか詐欺かよ!

 会ったことないけど、神酒先輩のチョイスだけは信じてたのに。

 いや、可愛い人だよ? 先輩ながら。

 だけど、これはなあ……。

 まあ、しょうがない。

 あの人に決まってる以上、行くしかないか。

 俺は覚悟を決めて親馬先輩の隣に──。


「そこまでだよ」


 行こうとして、止められた。

 え? 誰?

 俺の腕を掴んでいるのは、背の高い男。

 少し長めの髪に穏やかな瞳の人で、微笑んでいるんだが、睨んでいるような威圧感もあった。


「え? あの……」

「まさか、こんなことになるとはね……」


 少しあきれるようにため息を吐く、その人。


「相可、くん……?」


 不思議そうにこちらを振り返っているのは、親馬先輩。

 正面から見ると、綺麗な人で、確かにおっぱいも小さいし細いし、身長も美羽流並しかないんだけど、妙に大人びていて、少なくとも子供には見えない。


「騒がせてすまないね、磨輝。今も公務中だ。彼を連れ戻しに来たんだ。申し訳ないがもう少し待ってて欲しい」

「うん……もう少しだもんね? 生徒会長、頑張ってね?」


 親馬先輩が微笑む。

 え? 生徒、会長……この人が?


「え? あの……」


 俺は何と言っていいのか分からず、戸惑っていた。


「うん、大丈夫。君の事情は全て知ってる。とにかく図書室を出ようか」


 俺は生徒会長の言葉に従い、図書室を出る。


「あの、親馬先輩とは……?」


 俺は廊下に出て、隣を歩く生徒会長に尋ねる。


「ああ、磨輝は僕の彼女さ」

「え……?」


 マジで?

 俺は自分の血の気が引く音が聞こえてくるように思えた。

 この学校において、異能『統率力』を持ち、最高権力の地位にある生徒会長。

 その人の彼女を口説こうとしていたんだ。

 多分、神酒先輩はそれを知っていたんだろう。

 ……えげつない。

 マジでえげつないな、神酒先輩。

 俺に会長の彼女寝取らせて、失敗したら自分の勝ち、成功しても生徒会長の心証を悪くさせるつもりだったのかよ。

 よくそれだけのことを思いつくよな?

 普通にやってりゃあんな馬鹿貧乳お嬢様なんて余裕で勝てるだろうに。


「あの、会長……」

「大丈夫だよ。君は悪くない。だからちょっとだけ付き合って欲しいんだ」


 言い訳しようとした俺を、生徒会長は穏やかに止める。


「どこへ、ですか?」

「これから、次期生徒会長を決めたいと思う」

「え? 俺、部外者ですけど?」


 ていうか、こんなに急に決めるもんなのか?

 これまでのあの二人の勝負って何だったんだよ?

 俺は、それ以上何も言わなかった。

 生徒会長も、何も言わなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ