第13話 謝罪の約束
「……あ」
昼休み、俺は教室移動中の納真に会った。
もちろん偶然じゃない、時間割を調べて移動教室だったので、待っていたのだ。
「納真、ちょっと話があるけど、いいか?」
「あ、えっと……」
戸惑う納真。
まあ、そりゃそうだろう。
「今更、沙耶に何の話なの?」
強い、非難口調。
納真の友達の、確か、佐川さんだっけ、その子が俺と納真の間に入る。
「きちんと、謝りたいと思ってさ。これまでの事を反省して回ってるところだよ」
俺は少し反省していそうな態度になる。
「……本当に?」
「ああ、嘘は吐けない体質だからな」
佐川さんは胡散臭そうに俺を見る。
「出来れば二人きりになりたい。いいかな?」
「沙耶、大丈夫?」
「う、うん……」
本当、納真は運動部で、しかもバスケ部とは思えないくらいおとなしい子だな。
顔は可愛いんだけど、俺、この子を口説いて告白したんだよなあ。
そう思うと、色々な思いが湧いてくる。
俺のタイプとは全く違う、おとなしくて、おっぱいも小さい女の子だ。
郷羽先輩の『統率力』さえなければ、見向きもしなかっただろう。
だけど俺は、この子に惚れて、情熱的に口説き、その気にさせて、そして、いきなり興味をなくした。
存在すら忘れるほど、次の子に夢中になって、別れることすら忘れて空中分解したのだ。
普通の子なら、向こうから寄って来るから、もう好きじゃない、って言えたんだが、この子はこちらから会いに行かない限り、会うことはなかった。
多分どこかで俺の姿を見て、自分以外の女の子を追いかけていたから、何も言わず諦めたんだろう。
他の誰よりも重い罪悪感がある。
何しろ俺は、全く好きじゃない。
だからこそ、俺は、本気で謝ることが出来る。
「ごめん、悪かった」
俺は、しょっぱなから頭を下げた。
「あ……えっと……その……」
戸惑う納真。
あの頃と、全く変わっていない。
そりゃそうか、まだあれから二か月も経ってないんだからな。
「……いいよ、別に」
うつむいたまま、納真はやっとそう返事をした。
こういうところまでは思った通り。
だけど、この子はいくら許せないと思っていても、どれだけ傷ついていても、誰かに怒りをぶつけるような子じゃないんだろう。
この子をこのまま南潟先輩のところに連れて行っても、先輩は許してはくれないだろう。
「今日さ、放課後空いてるかな?」
「え、あ、あの……部活が……」
「バスケの練習が終わってからなら、どう?」
俺が言うと、納真が戸惑った表情をする。
断りたいけど断れない、そういう子だ。
「もう少し、話がしたいんだ、納真と。いいかな?」
「う、うん……」
納真は、やっぱり流れで承諾した。
「ありがとう、じゃあ、部活棟前で待ってるから」
「うん……」
納真の承諾を聞くと、俺は彼女に手を振って、教室へと戻る。
ちょうどその時昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。




