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底辺召喚術師のシュウカツ事情  作者: なおさん
第1章
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神楽にこちらの言葉を教えてみる




今日もフィーと共に護衛艦カグラへとやって来ている。


食事の後に父さんから調査の状況を聞かれたがまだ何も分かっていないと伝えておいた。


フィーにも転生の事やカグラの事は秘密にしておくように言ってある、公開したら大変な事になりそうだからね。


中央制御室に入ると、待ってましたとばかりに神楽が現れる、あれ? まだ呼び出してないよね?


『お帰りなさいませマスター。』


『た、ただいま? まだ呼び出してもいなかったのに出てくるからびっくりしたよ。』


『だって、この艦の中誰もいないから寂しくって』


管理システムが寂しがるってどうなんだろ? 疑似人格ってこんなだったかな・・・、あ、天照もこんなだったな、俺がマスターと知って素が出ているのか?


『あ~分かったから、その辺は後で考えるから、それより、2382年3月20日前後の記録を見たいんだが。』


今日の本題を切り出すことにした。


『申し訳ありません、その日の記録は見る事が出来ません。』


神楽は申し訳なさそうな表情で答えた。


『ん? 権限か何かで制限されているのか?』


記録を見るだけなら、俺の権限でも見れたはずだけど、何かあるのかな?


『いえ、その日はメンテナンスの関係でシステムが待機モードになっていたので、3月15日からマスターに起動されるまでの記録が存在しません。』


あ~、成程そう言う事か、記録が無いとなるとあの日に何が有ったのか確認しようが無いか。


何か情報が無いかと思ったが、今回は諦めるしかないか、転生の理由とかヒントが見つかればと思ったけど。


『まあ、無いものは仕方が無い、神楽が気に病む必要は無いから、そうだ、今日はちょっと面白い土産があるんだ。』


神楽を慰めつつ、持って来た本を収納庫から取り出す。


『それは、紙の本でしょうか?』


前の世界では、完全ペーパーレス化されているため、神楽もデータとしてしか知らないはずだ。


『神楽も気づいてると思うが、後ろにいるフィーリアと俺との会話は初めて聞く言語を使っていただろ?』


『はい、データベースに有るどの言語とも違うものでした。』


世界中のあらゆるデータが蓄積されている神楽のデータベースに無い言語に困惑しているようだ。


『実は、この世界は俺たちの元居た世界とは違う法則で成り立っている様なんだ。俺や神楽はどう言う理由なのか不明だがこの世界に来てしまった様なんだ。』


『平行世界の事でしょうか? その存在はいまだに証明されていなかったはずですが。』


神楽は、データベースから過去の研究資料などを検索しその結果を告げた。


『正確な事は解らない、それもこれから調べて行くしか無いだろうね、そこでこの本なんだけど、これは、俺が小さい時に文字を覚えるのに使っていた本なんだ、後は、この国の地理や歴史書、物語本なんだけど。』


『なるほど、この世界の事を調べるのに、言語を理解していないと調べようが無いですからね。』


うむ、さすがに理解が早くて助かる。


『あ、後、フィーリアが俺と神楽との会話に参加出来なくて、機嫌が悪そうなんだよね・・・。』


後ろからの不穏な空気を感じて、内心冷や汗ものなんだよね。


『分かりました。では早速言語の習得を済ませてしまいましょう。本を中央に並べて置いてください。』


神楽の指示に従い中央のスペースに本を並べて置くと、本に赤い光の筋が当てられそれがゆっくりと本をなぞるように進んで行く。


その光景にフィーも見入っている様だ、そうして、その光が消えると同時に、神楽の前に「初めまして、フィーリア様。私は神楽と申します。」とこちらの世界の文字が表示された。


フィーはその光景に驚いて、俺の方を見て来たので、コクンと頷いておくと。


「は、初めまして、フィーリアと言います、神楽様・・・。」


と、恐る恐るだが返事を返した。恐らく、神楽には、フィーの言葉は理解出来ていないだろうが、まあ、最初の一歩としては、上々かな?


その後、神楽の会話の精度を上げる為、俺とフィーで分担して会話を教える事になった、教えると言っても、表示される文字を読み上げて行くだけの簡単なお仕事だったけど。その結果。


「改めて初めまして、フィーリア様、護衛艦カグラの管理システムをしております神楽と申します、以後よろしくお願いします。」


お~さすがだな、此処まで流暢に喋れる様になるとは。


「初めまして、フィーリアと言います、こちらのリュシル様の従者を務めています、こちらこそよろしくお願いします、神楽様。」


うむ、これでフィーも会話に参加出来るから、機嫌も悪くならないだろう。


「リュシル様? ですか?」


神楽が疑問の声を上げる。俺はそう言えば言って無かったなと思い。


「ああ、こちらの世界では、リュシルと言う名前なんだ、神楽も今度からそっちで呼んでくれないか。」


「はい、分かりましたマスター。」


マスターか・・・。名前変えさせた意味が無いね。


「マスターですか?」


おっと今度はフィーがそっちに食いついたか。


「前にも話したと思うけど、俺は神楽の親となる天照システムの開発者の一人なんだ、その天照が俺たちをマスターと呼んでいて、それで神楽もマスターって呼んでいる様なんだ。」


その説明にフィーは「成程、分かりました、マスター」と悪戯っぽく返してきた。


ふぅ、なんとかフィーも会話に参加できる様になって、機嫌が戻ったか、これで一安心かな。


そんな事を思っていると。


「え~、マスターは神楽だけのマスターなんですからね。」


いえいえ、神楽さんだけのマスターでは無いですよ?


「いいえ、リュシル様はフィーだけのリュシル様なんです。」


ちょ、フィーさんの物でも無いですよ? ってか、誰の物でも無いですからね?


なんか、フィーさんと神楽さんの間に火花が散ってる様にみえる~。って、神楽さんホログラムでフィーとの間に火花表示させないで~


ど、どうしてこうなったの?、誰か何とかしてくれ~。


二人は暫くの間睨み合ったあと、何かが通じ合ったのかどちらから共無く、ふふっと笑い合い、どうやら仲良くやって行けそうですね、神楽さん、フィーリアさん、と笑い合っていた。


なにこれ? どうなってんの? 訳が分からないよ、誰か説明して? 俺の頭の中は混乱の極致に陥っていた、すると。


「ドッキリでした!」


と、神楽がドッキリ大成功~と書かれたプラカードを掲げていた。


そうして、フィーとハイタッチをしていた。


俺は力が抜けたように、床にぺタリと座ると、「そうか、ドッキリか・・・、くくくははははは・・・。」と笑い続けた。


その様子に、フィーと神楽は困惑した表情を浮かべていた。


俺はひとしきり笑うと、ゆらりと立ち上がり、神楽の足元にあるコンソール画面を起動する、そしてもの凄いスピードでキーを叩き始める。


「マ、マスター? なにを・・・、――!? 第1プロテクトが突破された!? マスター何をしようとしているのですか、やめてください!、って言ってる間に第3プロテクトまで!?」


「ははは、別に管理システムさえ生きていれば、疑似人格なんていらないよな~。」


俺は、神楽にニッコリと笑顔を見せると、神楽は泣きながら、お願いですから辞めて下さいと懇願してきたが、俺の手は止まらない。


フィーは顔を真っ青にして、おろおろとしていた。


「そ~ら、最終プロテクトも突破したぞ~、これが神楽のプログラム核か~、そーら削除命令起動、後は実行ボタン押すだけだぞ~」


「いやー! やめてー! 私が悪かったから、二度とこんな事しませんから~」


「本当に? 二度としない?」


神楽は泣きながらブンブンと頷いた。


「でも、押しちゃう、ぽちっとな。」


「いやーーーーーーーーーーーーーー!!」


部屋に神楽の絶叫が響き渡った。


コンソールの画面にはエラーの表示が出ていた、削除命令は管理者3人のコードが無ければ実行できない、神楽も冷静になれば気づけたはずだ。


当の神楽は器用にも白目を剥いて気絶していた、気絶する疑似人格って・・・・。


そうして俺は、ぐりんとフィーの方へ顔を向ける。


「次はフィーの番だね。」


ニッコリと微笑む。フィーはびくっと体を震わせると、「な、何をされるのでしょう?」と顔を引き攣らせていた。


「フィーへの罰は、デコピンに決定~。」


そういって、指を弾く仕草をすると、フィーは少しほっとした様な顔をしていた。”あれぐらいなら何とか耐えれるかも・・・”


「ではいくぞ~」


指をデコピンの形にして、フィーにゆっくりと近づきそして、指に魔力強化発動、更に魔力を注ぎ込んでいく、その異常にフィーも気づいた様だ。


「あ、あの、リュシル様? その、指に魔力強化を使われている様ですが、しかも、もの凄い魔力を感じるのですが・・・。」


「ああ、フィーへの罰は、このデコピン一発で許してあげるよ、俺は優しいだろ?」


「い、いえ、あの、そんなのでデコピンをいただいたら、額が陥没します、いえ、下手をしたら頭が吹き飛びます。」


「はっはっは、だから、魔力強化でしっかりとガードするんだぞ~」


フィーは顔面蒼白となり逃げだそうとするが、俺は、もう一つの手で、逃げられない様に、フィーの肩をガシッと掴む、そうして、フィーの額にデコピンをした。


ズゴンッ!


何とも重々しい音が響いた、それを食らったフィーは、仰け反ったまま床に倒れ、額を押さえのたうち回っていた。


ちょっとやりすぎたかな・・・。




その後、神楽はホログラムの表示範囲ギリギリの俺から一番遠い位置で体育座りをして膝に顔を埋めていた。


フィーも部屋の隅で額を押さえ体育座りをしていた。


「あ~神楽さん?」


「ひぃ、ごめんなさい、ごめんなさい、もう二度としませんから、二度としませんから、消さないで~」


「フィーリアさん?」


「―――!?―――!?」


かなりやり過ぎてしまった様だ・・・・・




結局この日はこれ以上何も出来なかった。


仕方なく、神楽に別れの挨拶をして、フィーを連れて艦を出る。


フィーの手を引き外に向かって坑道内を歩いて来たが、その間、ごめんなさい、ごめんなさいと繰り返し俯いたままだった。少し幼児退行までしているようだ。


さすがに大人げなかったかな・・・と、頬を掻く。


坑道の出口まで来たが、元に戻る気配が無かった、流石にこのまま外に出る訳には行かず、どうしようかと思案する。


仕方なく机の前に有った椅子にフィーを座らせると、彼女の前に立ちその顔をじっと見つめる、その目はまだ潤んで涙ぐんでおり、これから何をされるのかと不安げな表情をしていた。


「フィー、もう気にしていないから元気を出してくれないかな? 俺も少し大人げ無かったと思うし、いつものフィーに戻って欲しいのだけど。」


「も、もう怒ってはいませんか・・・?」


フィーは恐る恐る小さな声で訪ねて来た。


「もう全然怒ってないから、ね?」


そう言ってから、優しく微笑む。


「ごめんなさい、まさか、リュシル様があんなに怒るとは思って居なくて・・・。」


「良いから、もう気にしてないよ。」


申し訳なさそうにしている、フィーに優しく答える。


「それより、俺こそごめん、我を忘れていたとしても、女性の顔に後が残るかも知れない様な事をしてしまった。」


フィーの額には赤い跡が残っていた、あれだけのデコピンを受けてこの程度で済むとは、フィーの魔力強化もかなりの物だなと冷静に分析をしてしまう自分が少し嫌になった。


「いえ・・・、悪いのは、フィー達の方ですから、リュシル様は悪く無いですから、謝らないで下さい。」


「跡が残らなければ良いんだけど・・・。」


その跡をそっと手で優しく撫でると、フィーは体をビクリとさせた。


「あ~ごめん痛かった?」


「いえ、あの、だいじょうぶ、です・・・。」


「ちょっとだけ動かないでね。」


そう言って、額の跡を覆う様に手を当てると、ゆっくりと魔力を流していく、フィーは「暖かい・・・、痛みが和らいで行きます」と呟いていた、暫くの間魔力を流しそっと手を放す。


フィーは少し残念そうな顔をしていたが、額の痛みが無くなっている事に気づいた様だ。


「痛みが・・・消えました。」


確認するように手を額へと当てていた。


「治った訳では無いけど、魔力で額の跡を覆って、痛みを遮断して見たんだ、これで明日の朝ぐらいまでなら痛みを感じないはずだよ、それまでに治ってくれれば良いんだけど、これぐらいしか出来なくてごめんね。」


「そんな・・・、私の為に、ありがとうございます。」


俺が申し訳なさそうに言うと、フィーもまた、申し訳なさそうにしていた。


「もし・・・、跡が残る様なら、俺がちゃんと責任取るからさ。」


うん、船の設備が使用できるようになったら、傷跡ぐらいなら綺麗に消せるから、俺が責任もって治療するつもりだ。


そう思っていると、フィーはなぜか顔を赤くして「責任をとる・・・。」と呟いていたけど・・・、何を思ってるんだろ?


フィーもいつもの調子を取り戻した様なので、屋敷へと戻って行った。神楽には、明日本を何冊か持って行ってあげようかと思う、なぜかこの世界の恋愛物に興味を持った様だったから。








読んで頂きありがとうございます。今回はどうやら神楽さんがはっちゃけてしまい、それにフィーさんが巻き込まれてしまった様ですな、お陰で話が進まなかった・・・、次は話が進むと良いな・・・。

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