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底辺召喚術師のシュウカツ事情  作者: なおさん
第1章
32/34

クロノーツ領のとある休日

この物語は異世界のお話です、現実の物理法則とは違う法則で動いております。

その辺を留意してお読みください。

久しぶりの更新で申し訳ないです。





「明日はお休みにしま~す。」


俺のその言葉に、フィーは小首を傾げて疑問符を浮かべていた。


まあ、明日は休養日だから元々お休みの日では? とか思っていそうだな。


「だから、フィーも明日は従者の仕事はお休みだよ。」


続く言葉に、何故かフィーはこの世の終わりとでも言いたげな表情でショックを受けていた。


あれ? この反応は予想外なんですけど?


「リュ、リュシル様は、私の事がもう要らないのですか? 私をお捨てになるのですね・・・。」


そう言って、今にも泣き出しそうな顔で俺を見つめるフィーがいた。


ちょ!、何でお休みの話をしただけで、そうなるの?! 訳が分からないよ・・・。


「何でそうなるのさ。フィーが要らないなんて一言も言って無いだろ? フィーは俺にとってかけがえのない存在だよ。寧ろ一生傍に居て欲しい位なのに。」


全く、フィーも突然何を言い出すのやら。


ん? 今度は何で顔を真っ赤に染めて俯いてるんだ?


まあ、このままだと話が進まないので、このまま続ける事にするけど。


「明日は、節目のお祭が有るだろ? だから、いつも頑張っているフィーの慰労も兼ねて、従者とか主とか関係なしで、二人でお祭りに行きたかったんだけど・・・。」


俺と一緒は嫌かな? そんな思いを込めてフィーを見つめる。


「い、いえ。リュシル様とご一緒出来るなら、フィーは何処へでもついて行きます!」


少し慌てた様子で、フィーは肯定の意を示してくれたので、「それなら良かった。」と、ニッコリと笑顔を向けた。


笑顔を向けられ、頬を染めたフィーだが、何かを呟き出し物思いにふけっている様子が少し気になり、聞き耳を立てると、「・・普通の男女としてお出かけ? !! それってもしかして噂に聞いたデートと言う物では!? デ、デートと言う事は・・・。」 あ~、デートって、フィーさんや何処でそんな言葉覚えて来たんだい? まぁ、神楽だろうな・・・。 でも、デートか。うん。


「そうだね、明日は、俺とフィーでお祭りデートしようか。」


そう言うと、フィーは呟きを聞かれていた恥ずかしさと、デートをする事になった事実とで、あわあわしながら湯気が出そうな程顔を真っ赤に・・・ボフンッ。あ・・・、ついに限界を超えてしまったか・・・。一体何を想像していたんだか。


湯だってしまったフィーを介抱しつつ、明日は俺がしっかりとしないとな、と心に誓うのだった。


その後、意識を取り戻したフィーが俺に膝枕されている事に気付き、2度目のボフンッをやったり、俺の手を煩わせた事に落ち込んだフィーを慰めたりと、まあ、概ねいつも通りの就寝前のやり取りを行うのだった。しかし、今日のフィーは表情がコロコロ変わって忙しそうだったな・・・。




翌日俺は、フィーにちゃんと理解しているか確認しなかった事を後悔した。


まず、従者の仕事はお休みだと言ってあったのに、朝いつも通りに俺を起こしに来るし。いや、よっぽど待ち遠しかったのか、日が昇ると同時に起こしに来たのだ。祭りはまだ始まって無いぞ?


ま、まあ、これぐらいなら、恋人を起こしに来た彼女とでも思えば許せると言う物だ。ただ、何時も通りメイド服姿だったのだけどね。


その後、フィーは出掛ける寸前になってもメイド服のままだったのだ。


てっきり、出掛ける前に着替えて来る物とばかり思っていたのだが。因みに、昨日出掛ける時は普段着を着て来るように言ってある。


「フィー? もうそろそろ出かける時間だけど、普段着に着替えて来ないの?」


「え? これが、フィーの普段着ですよ?」


おぅ・・・。まさか、メイド服がフィーの普段着だったとは・・・。それじゃあ仕方が無いか。とはいかないよね。だが、大丈夫だ。こんな事も有ろうかと保険は掛けてあるのだ。




程よい時間となったので、フィーと二人で屋敷を出て、街へと向かった。先ずはフィーの服装を何とかするためにある場所へと向かう。


そこは、工房通りの一区画にある店舗。その入り口には、本日休養日の札が掛かっていた。


「ここは、商会の店舗ですよね?」


フィーの言葉に頷くと店の扉を開けて中に入って行く。ここは、俺の作った商会の店舗だ。ここで、神楽がこんな事も有ろうかとフィーの為の着替えを用意してくれているのだ。


「いらっしゃいませ!」


元気な声で神楽が迎えてくれた。そうして、一緒に入って来たフィーを見て、ああやっぱりねと言う様な顔をした後、俺に向かいほら言った通りでしょ? と言いたげな顔をした。


その表情にイラッとしたりもしたが、実際そのお陰で助かった訳だから、表情には出さずにフィーの事を任せるのだった。


「さあ、フィーリアさん今からお着替しますよ!」


「え? あの? 神楽さん何を? リュ、リュシル様たすけて~。」


フィーを後ろからがっちりと抱えた神楽が、奥の衣裳部屋へと入って行くのを見送りながら、ほどほどにしてあげて下さいと心の中で呟くのだった。


初めの数分ほどは、奥の部屋でフィーと神楽がすったもんだしている音が聞こえて来ていたのだが、その後ピタリと静かになった。ううむ、一体中で何をやっているのだろう・・・。そうして更に20分程たった後神楽が奥から出てきたのだが。


フィーは奥の部屋から出る覚悟か出来ない様で入り口の陰に留まっていた。


「さあ、フィーリアさんマスターに見て貰うのです!」


「で、でも、リュシル様がお気に召さなかったら・・・。」


「もぅ! そんな事無いって、すっごく似合ってるから!」


業を煮やした神楽がフィーを引っ張り出すとそこには、恥ずかし気にもじもじとしながら、頬を染めて伺う様な表情のフィーが居た。


フィーの服装は薄い水色のワンピースにふんわりとしたレースのフリルが要所にあしらわれた愛らしい服装だった。そうして、頭には少し大き目なリボン飾りを着けていた。


「そ、その・・・、似合いますでしょうか・・・。」


消え入りそうな声のフィーを見て。


「か、可愛い・・・。」


フィーの余りの愛らしさに、その言葉を紡ぎ出すので精一杯だった。


俺の言葉にフィーは「!? あ、ありがとうございます・・・。」と更にもじもじとして、顔を真っ赤にして俯いてしまった。ちょっと抱きしめても良いでしょうか? 良いよね?


ふらふらとフィーに吸い寄せられる俺に対し。


「は~い、そこまでで~す。イチャイチャするのは、部屋に戻ってからにしてくださ~い。」


と、神楽のツッコミが入るのだった。ふぅ、危なかった、何時もと違うフィーの愛らしさに我を忘れる処だったよ。「俺、部屋に戻ったらフィーをぎゅっと抱き締めるんだ。」その呟きに、「変なフラグを立てないで下さい!」と、神楽からの更なるツッコミが入った。


「じゃ、じゃあ行こうか?」


「は、はい・・・。」


愛らしいフィーの姿にドキドキしながらも、フィーを促し外へ出ると、目の前の通りは中央広場へ向かう人でかなりの混み具合になっていた。


このままでは、フィーと逸れてしまうかも。そんな思いからフィーへ手を差し出す。


「あ、あの。リュシル様?」


そんな俺を見てフィーは戸惑いの声を零す。


「ひ、人通りが増えて来たから逸れたら大変だろ? そ、それに、今日はデートなんだから、手ぐらい繋がないと・・・。」


うう、自分で言ってて恥ずかしい。


「は、はい・・・。不束者ですがよろしくお願いします。」


俺の言葉にフィーは神妙な面持ちで答えると、そっと俺の手を取るのだった。


でも、フィーさんやその言葉はちょっと違うとおもうんだな~。


フィーの言葉に思わず突っ込みそうになってしまったが、お陰で緊張がほぐれたよ。


中央広場に向かって大通りを手を繋いで二人で歩いて行く、すれちがう人達がそんな俺とフィーを見ると、何故か皆微笑ましい物を見る様な目を向けるのはなんでだろ?


大通りでは色々な露店が並んでいた。最近は魔道具を使った屋台なども増えており、辺りに良い匂いを漂わせていた。


お昼には少し早いが、屋台巡りをしながら食べ歩くのも良いかも知れないな。


そうして、俺とフィーは、食べ歩きをしつつ、露店を冷やかしながら、中央広場へと向かった。


中央広場では、今日のデートの目的の一つである野外劇が開かれる事になっている。しかも、今回は新作との事で、楽しみにしていたのだ。


広場の奥に舞台が見えて来ると。俺以上に楽しみにしていた様子のフィーは、興奮した様子で、早く席を確保しなければ! と、駆けだそうとするが・・・。行かせないよ? こんな所でフラグ回収をさせる訳には行かない、しっかりと手を握った俺によってフィーは席を取りに行けなかった事で焦っている様だが、心配しなくても予約席を確保してあるのだよ。


その事を伝えると、「流石はリュシル様です!」と、フィーに褒め称えられたのだが周りの目が痛いのでほどほどでお願いします。


俺とフィーは予約してあった席へと座る。この席はペア席と呼ばれているそうで、丁度2人が座れるサイズの椅子になっている様だ。他の席には若い男女や夫婦らしき男女が寄り添う様に座っているのが見て取れた。


面白い椅子を考える物だと、その椅子をよく見て見ると、うちの商会の刻印がされていた・・・。


フィーは何故か椅子の端に座ろうとする。いつもならくっつきすぎと言いたくなる位ピッタリと寄り添って来るのだけど、デートと言う事で緊張している様だ。


そんなフィーを微笑ましく思いながら、彼女を引き寄せてあげると少し驚いた顔をしたが、「デートだからね。」と、微笑んであげると「はい・・・。」と呟き頬を染めながらも寄り添う様に座ってくれた。でも、やった俺の方が恥ずかしかったりするのだ。



そうして、野外劇が開演されるのだった。



劇の内容は、悲恋物と聞いていたが、その内容は。


ある王国に2人の王子がいて、兄王子の許嫁である隣国の姫が顔見せの席で弟王子とお互いに一目惚れをしてしまうと言う始まり方だった。


そうして二人は、周りに隠れて逢引きを繰り返すのだが、実は周りにはすっかりばれて居て、兄王子も含めて周りはまあ良いんじゃない? と、暖かく見守られていたりして。 あれ? 悲恋物は? とか考えていたら。


姫の傍付きの侍女がそんな背景を知らずに姫と弟王子の事に気付き、姫への今までの恩を返す為に一計を案じ、兄王子を殺害しようと画策してしまう。その計画内容とは、兄王子に肉体関係を迫られ、姫の為にと体を許したが、結局耐え切れずに兄王子を殺害、自分はその旨を書いた遺書を残し自殺すると言う物だったのだが。


兄王子に自身を襲わせるために用意した強力な媚薬をお茶に混ぜ飲ませようとしたが、姫と弟王子の件は周りが認めている事が分かり、兄王子を殺害する必要が無くなり、その事に安堵した侍女が媚薬入りのお茶を誤って飲んでしまい、効果に耐えられず兄王子を押し倒して無理やりハッスルしてしまうと言う落ちだった。


まあ、それが切っ掛けでお互いを意識するようになり、徐々に惹かれ合う様にり、お互いに愛し合うまでになるのだが、そんな関係も姫が自国に戻る日が近づくにつれ終わりを迎える事となる、兄王子の求婚を侍女が断った為なのだ、その理由を聞いても侍女は答えてくれず、姫と共に隣国へと戻って行ってしまうのだった。


国に向かう馬車の中で、姫が自分の事なら気にしなくても良いのよ、とつげるが、侍女が私ではあの人の望みを叶えて上げられないので、と悲し気な表情で呟くシーンが印象に残った。


そう、前のシーンで兄王子と侍女が楽しく話をしている時に、子供の話が出ると王子に気付かれない様に、侍女が悲し気な表情になっていたのが気になっていたのだけど、多分これの伏線なのかなと思い、これが悲恋物になるのかと納得したりした。


それから、物語は急展開を迎えた。姫と侍女が隣国に戻ってから暫く経ったある日、その隣国から火急の知らせが届いたのだ、隣国が邪竜に襲われ、姫とその侍女が攫われてしまったと言う物だった。


その知らせを聞いた弟王子は、兄王子の静止を振り切り飛び出して行ってしまった。


兄王子も直ぐに飛び出して行きたかったが踏みとどまる、それは、竜を傷付け倒す事が出来るのは同じ竜か龍、又はその力を宿した武器を使わなければ無理だと知っていたからだった。


覚悟を決めた表情の兄王子は、お城の中の宝物庫の更に奥にある封印の間へと向かいその中にある一本の剣を手に取る。


その剣は、破邪の龍剣と呼ばれている物で竜より上位の龍の牙より作られた一振りとされている物だった。


だが、その剣を使うには剣の試練に耐えに認められなければならない、封印の間から聞こえる兄王子の苦痛の叫びは一晩中響き、朝、封印の間から出て来た兄王子の髪は真っ白になっていた。


それでも、兄王子の手には破邪の龍剣が握られており、剣に認められた事を物語っていた。


その兄王子を見た王は悲痛な表情を浮かべ、王妃は泣き崩れてしまうのだった。


その二人の横を通り過ぎる時に、兄王子はお達者で、とだけ告げ、邪竜を倒し姫と侍女を救いに向かって行った。


場面が切り替わり、姫と侍女を背後に庇い邪竜と対峙する弟王子。


その、弟王子は満身創痍と言う状態だった。そして、遊ぶのに飽きたとばかりに邪竜はその大きな顎を開き、弟王子を噛み殺そうと迫る。


悲痛の叫びを上げる姫と必死に押し留める侍女、最後まで諦めるものかと邪竜を睨み続ける弟王子。


次の瞬間、飛び出して来た何かに吹き飛ばされる邪竜の姿が有った。


そして、3人をを庇う様にして立つその人物の様子を見て弟王子は、兄さん? そんな・・・、と呟き、王と同じように悲痛な表情を見せるのだった。


その後、邪竜と兄王子との戦いは壮絶な物となったが、最後に地に伏したのは邪竜の方だった。


息絶える邪竜を背後に弟王子達に歩み寄る兄王子の姿を弟王子は悲痛な表情で迎えていた。


今の兄王子の姿は両手両足は、爬虫類の様に鱗で覆われ、更に鱗に覆われた尻尾まで生えていたのだ。


そう、破邪の龍剣は確かにそれ単体で竜に傷を付ける事は出来るが、只の人がその剣を持っただけで竜とまともに戦う事など出来ない、破邪の龍剣とは、それを使用する者を竜へと変貌させ竜に対抗出来る様にする諸刃の剣だったのだ。


そして、一度変貌してしまった者は元の人へは戻る事が出来ない。さらに最後には、人の意思を持たない竜へと変わってしまうと言うものだった。


悲痛な表情を見せる弟王子へと、兄王子は穏やかな笑顔を向けると、弟王子に、今すぐに自分の首を刎ね、殺してくれと告げる。


そんな事は出来ない、と告げる弟王子に、このまま竜となって人々を傷付ける存在に成りたく無いから、その前に殺して欲しい、そろそろ限界なんだ、と苦しそうに告げるのだった。


涙で顔をクシャクシャにしながら、剣を構える弟王子、その手は小刻みに震えていた。


それでも、意を決して剣を振りかぶると、その剣を振り下ろす寸前に、兄王子に覆いかぶさる影が有った。


それは侍女だった、直ぐに離れる様に、と告げる兄王子に首を振ると、貴方を竜になんてさせません、と告げると侍女の姿が変貌する。


そう、今の兄王子の姿と同じ、両手両足が鱗で覆われ、尻尾が生えていたのだ。


貴女は竜人族だったのか、兄王子はそう呟くと、彼女が自分の求婚を固辞した理由に思い至った。この世界では異種族間では子供が出来ないのだから。


でも、幾ら君が竜人族でも・・・。(竜に成るのは止められない)最後まで言い終わる前に兄王子の口は彼女の唇で塞がれてしまった。


そうして、彼女の口から何かを飲まされる兄王子、その様子を確認した後、そっと唇を離す彼女の唇からは一筋の血が垂れていた。


どうやら、彼女の血を兄王子に飲ませた様だった。


それと同時に唖然となる兄王子。そう、今まで、体中を襲っていた、痛みと苦しみが治まっていたのだった。


その様子を見て、ほっとした表情を見せる彼女の話では、竜化は竜人族の小さな子供などが稀に力の制御が出来ずに起こる現象で、その対処方法は、他の竜人族の血等の体液を飲ませる事により抑える事が出来、暫くの間それを繰り返すうちに、力が安定するのだそうだ。


その症状に似ていた為にもしやと思い血を飲ませてみたのだそうだ。因みに今の状態は半竜化と言われている状態なのだそうだ。力の制御が出来る様になれば、外見は人と変わらなく出来るのだそうだ。


そこまで話をしてから、彼女は申し分け無さそうな表情を見せ、只、人に戻す事までは出来ないので、今後人族との間に子供を作る事は出来ない事を告げた。それは、次期王となる筈の兄王子にとって、跡継ぎが残せない事を意味する、王としての道が閉ざされた事にもなるからだった。


だが、そんな兄王子は、特に気にした様子も無く、王位は弟が継げば良いから問題ないと告げ、その話からすると、竜人族との間には子供が作れるんだよね? との確認に、彼女はそうなります、と告げ、その言葉ににやりとした兄王子は、では貴女との間にも子供が作れるのか、と呟く、その言葉を聞いた彼女が、その事に気付き顔を真っ赤にした所で、姿勢を正した兄王子から、結婚してくれるね? の言葉に彼女は、はい、喜んで。と、花開く様な笑顔を見せ。そうして、お互いに唇を重ねた所で劇が幕引きとなった。




劇が終わった所で、フィーを見ると、目を赤くして、「結ばれて良かったです・・・。」と呟いていた。


因みに片手は俺の腕に絡めて手をギュッと握ったままだったりする。


俺自身は、腕に当たるフィーの柔らかい物が気になって、余り劇に集中出来なかったのだけどね。


そうして、劇の役者の紹介が終わり、最後に、今回の野外劇の出資者の紹介で観覧席で立ち上がり優雅に一礼をする人物を見て、そう言えば、そんな事を神楽が言っていた事を思い出し、色んな事に納得するのだった。


因みに神楽の周りには孤児院の子共達が居たりする。今回商会の慈善活動として招待させて貰ったのだ。子供達に囲まれて、神楽は非常に幸せそうな顔をしていた。



その後、野外劇場を出た俺とフィーは、同じ中央広場で行われている他の催し物を見たり屋台や露店を巡ったりしていた。


「リュシル兄ちゃん?」


「え? あ! ほんとだ! リュシル兄ちゃんだ?」


「リュシル兄ちゃんが、知らない女の人と手を繋いで歩いてる!」


「あれ? でも、リュシル兄ちゃん今日は大事な用事があるって言ってなかったっけ?」


「知らない女の人と手を繋ぐ事が大事な用事? あ! だからフィー姉ちゃんに内緒にしろって言ってたのか!」


「あわわ、これは、フィーリアさんに知らせた方が良いのかしら・・・。」


「リュシル兄ちゃんが、フィー姉ちゃんに黙って、知らない女の人と逢引きしてる!」


「フィーリア姉さんが可哀相・・・。」


「フィー姉ちゃんに言ってやろ~。」


孤児院の子共達である。


今ここにいる子供達は6人に引率のローリエ。どうやら何組かに別れて、祭り巡りをしている様だ。


しかし、酷い言われ様だな。


それから、言って置くが、今、目の前にいる知らない女の人がそのフィー姉ちゃんだぞ?


「「「「「「え?」」」」」」


おい、お前ら・・・、幾ら何時もと違う恰好してるからって、それは無いだろ。ほら、フィーが落ち込んじゃったじゃ無いか。


やっぱり、私にはこんな格好は似合わないとか呟いてるじゃ無いか。すっごく似合ってるからね? すっごく可愛いからね?


そんな、様子をローリエは苦笑いを浮かべて見ているのだが。お願いだから何とかしてください。俺は、訴えかける様な目でローリエを見た。


ローリエは、小さくため息を吐くと、仕方ないわね、と言った様子でポケットからある物を取り出すと、それを、フィーの頭に着ける。その瞬間。


「「「「「「あ! フィー(リア)姉ちゃん(さん)だ!」」」」」」


揃って声をあげる子供達だった。


ローリエがフィーの頭に着けたそれは、フィーが何時も頭に着けているヘッドドレス、所謂ホワイトプリムだった。


え? 子供達よ。フィーの認識ってそこでしてたの?


フィーも子供達に気付いて貰えて嬉しいのだろうけど、どう反応して良いのか分からず何とも言えない表情をしていたよ。


因みに、何でローリエがプリムなんて持ち歩いているのかとか、そのプリムを手に取ったフィーが、この前無くしたプリム!? とか驚いていたが気にしないでおこう。


「さぁ、皆、フィーとリュシルは大事な逢引き中なんだから、これ以上邪魔しちゃ駄目よ。」


ローリエの言葉に、はーい、逢引きがんばってね~。と手を振って去って行く子供達。ローリエめ、何故プリムを持っていたのかの追及から逃げたな。あと、子供達よ、逢引きは頑張る類の物では無いからね。それとさっきの野外劇で覚えたんだろうけど、逢引きと違うからね?



まあ、結果として、この後同じ様な事を2回ほど繰り返す事になった。


フィーは、もうこれでもかって程落ち込んじゃってるし、項垂れたままのフィーの手を引いて歩く羽目になってしまった。折角のお祭りなのにこれでは台無しだ。


フィーを落ち着かせる為に、噴水の縁に座らせるが・・、座った途端、フィーが泣き出してしまった。


おおぅ、一体どうすれば良いんだ。周りからの視線が痛い・・・。


俺は最後の手段とばかりに、フィーの頭をそっと抱き寄せる。


「!? あ、あの・・・、リュシル様?」


驚いたフィーが少し困惑気味に声を出す。


「フィー先に謝っておくけど、ごめんね。」


「え? それって、どう言う意味です?」


俺の突然の謝罪に対して更に困惑するフィー。


「あ~、その、子供達がフィーの姿を見てもフィーって気付けなかった時なんだけど、俺はちょっと嬉しく思っちゃったんだ。」


「え・・・、そんな・・・、どうして?」


俺の言葉にフィーはショックを受けている様だけど、最後まで聞いて欲しい。


「だって、誰もフィーと気付けなかったのに、俺は何の疑いも無くフィーと気付けてたからね。それだけ、フィーの事を良く見ていたって事だし、フィーの事を思っていたって証拠だからね、何と無く優越感に浸っちゃったんだよ。」


だから、ごめんね。と、俺は続けた。


「そ、それに、子供達に気付いて貰えなくて悲しんでいる様だけど、フィーは俺の従者なんだから、俺だけがフィーの事を分かってあげてれば良いんだから、フィーが悲しむのは、俺がフィーの事を分からなくなった時だけなんだからね。」


俺が恥ずかしそうにそう告げると、フィーは、リュシル様がデレた! とか呟いていたけれど、俺は大真面目なんだからね! あと、神楽よ、デレとか、フィーに何教えてるんだよ!


「ふふ、リュシル様ありがとうございます。」


俺の様子を見て笑顔になったフィーを見て、まあ、元気になってくれたんなら良いかなと思うのだった。


「はぁ、まあいいや。何時渡そうか迷ってたけど、丁度良いか。フィー、はい、これ。」


今回のもう一つの目的である綺麗に装飾された手に載る程の小さな小箱を手渡す。


「あの、リュシル様これは?」


小箱を受け取ったフィーは、小箱を手に持ち小首を傾げていた。


「うん、フィーへの成人のお祝いなんだけど。ほら、この間のあれだけだと流石にどうかなと思って。」


一月ほど前の事だが、フィーの成人のお祝いをしたんだけど、ローリエ情報でいきなり前日に判明するもんだから、ちゃんとした祝いの品を用意出来なかったんだよね。


ローリエ曰く、知っている物とばかり思っていたらしく、前日になっても何の動きも見せないから心配になって確認したらしいけど・・・。こっちの世界だと毎年の誕生日にお祝いする風習が無かったから、すっかり忘れていたのだ。出来ればもっと早く教えて貰いたかったです。はい。


因みにその時は代替策をどうしようかと、ローリエに相談した所、「添い寝券でもあげたら喜ぶんじゃない?」と言われ、半信半疑ながらも、10枚綴りの添い寝券をあげたら物凄く喜ばれ、その後連日使用されあっと言う間に使い切っていたりする。


まあ、流石に成人の祝いなので何か形に残る物をと考えて、今回別途用意させてもらったのだ。


「あ、ありがとうございます・・・。中を見ても宜しいですか?」


フィーは驚いた表情を見せた後、嬉しそうに小箱を見つめお礼を言って来た。


「うん、フィーの為に用意した物だから、フィーの自由にしていいよ。」


そう言ってあげると、「ありがとうございます。」と更にお礼を言ってから、小箱の蓋をそっと開いていた。


「わぁ!、凄く綺麗です・・・。」


フィーは感嘆の声を上げた後、吸い込まれるようにそれを見つめていた。


それは、小さな髪飾りだった、一粒の青い水晶から小さな花が風で幾つも流れる様にあしらわれた銀細工の髪飾り。


「綺麗・・・。リュシル様の瞳と同じ色・・・、それに、銀色の小さな花が髪で反射する光の様で、まるでリュシル様の様です。」


お、おおぅ、ちょっと、予想していなかった評価を頂いた様ですが、喜んで頂けて何よりです。


因みに、青水晶はかなり珍しい物らしく、しかも、髪飾りに付いている物は、容量は少ないけど魔晶石になっていたりする。


水晶の中心部が魔晶石部になっていて、魔力を貯めるとそこだけ色が濃くなって、見る角度によっては、瞳の様に見えるのだ。


そして、銀細工の部分は、全てミスリル銀で出来て居て・・・。もし普通に購入しようとすると、そのお値段はとんでも無い金額だったりする。


まあ、今回の青水晶の魔晶石は、俺が偶然見つけた物を、自身で加工した物を使っているので、実際の金額は、ミスリル銀細工のお値段だけになるのだが。


こちらも、懇意にしている親方が丁度良い練習になるからと、渡したデザイン画の通りに作ってもらえたりと、実際にかかった金額は微々たるものだったりする。


余談だが、魔晶石を此処まで細かく加工できるのは、現状俺しかいない。


魔晶石は魔力が貯まると色が変化するが目に見えている部分だけに魔力が貯まっている訳では無く、その見えない部分を加工した時に傷付けてしまうと、そこから魔力が漏れてしまい、魔晶石の役割が果たせなくななってしまう。


俺なら、魔力強化による魔力視でその部分が見える為に細かな加工も可能なのだ。かなり練習しました、はい。


練習に使った普通の魔晶石の方で成功した物は、色々手伝って貰ったアルにあげたら喜んでくれた。こっちは、粒が大きいのでブローチにして、マーサが成人した時にあげる事にするらしい。


「俺が着けてあげるよ。」


「え!? あ・・、その、お願いします・・・。」


俺の言葉にフィーは恥ずかしそうにしながらも、小箱を差し出した。


小箱を受け取るとその中にある髪飾りを手に持ち、フィーの髪へとそっと着ける。


フィーの黒髪に銀細工の髪飾りがとても似合っていた。


「あの・・・。似合いますでしょうか?」


「うん・・・。思っていた通り、とても似合うよ。」


俺は、そう言って、フィーに微笑みを向ける。


「その・・・、ありがとうございます。」


俺の言葉にフィーは頬を染めると、お礼を言いながら優しい微笑みを見せてくれた。日が傾き建物の隙間から差し込む日差しがフィーを照らす姿は、歳相応の愛らしさよりも、大人びた美しさがあった。


「綺麗だ・・・。」


「っ!? その・・・。ありがとうございます・・・。」


暫くの間見惚れていた俺の呟きに、今度は、顔を真っ赤に染めて俯きもじもじとするフィーの姿は、歳相応の愛らしさがあった。あ~もぉ、やっぱり抱きしめても良いでしょうか? 良いよね?


ギュッと抱きしめたい衝動に抗えず、手を伸ばしてふらふらと近づく俺だったが。


その時、ひゅるると言う風を切る音の後に、ドンと言う腹に響く音と共に俺達を照らす光に我に返った俺は、その光の方向をみると、すっかりと日が落ち暗くなった夜空に、色鮮やかな大輪の花が咲いていた。


「わぁ! 凄く綺麗・・・。」


感嘆の声をあげ、空を見上げるフィーの姿に、君の方が綺麗だよと言いそうになる言葉を飲み込んだ。あ~、あんまり(アル)の事は言えないなと苦笑いを浮かべて周りを見ると、周りも次々と打ちあがる花火に見入っている様だった。遠くで、聞き覚えのあるくしゃみが聞こえた気がしたが、多分気のせいだろう。


この、色鮮やかな花火は、今回から導入されたものだったりする。


今までも、女神への捧げ物として祝いの花火の様な物は有ったのだが、只光るだけの味気ない物だった。


それを神楽のデータベースから手に入れた知識を神代の文献から見つけたと称して工房へ持ち込んだ結果がこれなのである。


まあ、最初は神殿側はメルヴィン司祭を筆頭に神への捧げ物に派手な物は要らないと反対されたのだが、試作した花火を実際に見せた所、神殿側の過半数を占める女性陣が賛成派に回り、最後は、「女神様にも綺麗な物を見せて差し上げましょうよ。」の言葉でメルヴィン司祭も折れたのだった。


余談だが、この花火を広めたきっかけは、フィーがカグラで花火の記録映像を見た時に「本物はもっと綺麗なのかな? 孤児院の子達にも見せてあげたいな。」と、呟いた一言だったりする。その呟きを聞いた俺と神楽が暴走しない訳がないのである。


最後の花火が上がって、大輪の花が咲き終わると、周りは静寂に包まれていた。


どこからか、パチパチと手を叩く音が聞こえたかと思うと瞬く間にその輪が広まり街中が拍手に包まれていた。


元の世界で花火の後に、こんな風になった事が無かった俺は、少し面食らってしまったが。娯楽の少ないこの世界では花火一つ取っても人々に大きな感動をもたらすのだろう。


今までは、フィーや孤児院の子共達、俺の身内の為にと、元の世界の知識を使って来たがこの街の為に使う事を考えても良いのかもしれないな。



まだまだ、興奮冷めやらぬと言った様子の周りからフィーへと目を移すと、そこには涙を零すフィーがいた。


!? ちょ、え? 何? 何が有ったの? 


「ちょ、フィー? 何が有ったの? 何処か痛いの?」


俺は、おろおろとするばかりで、一体どうすれば良いのでしょうか? 誰かたすけて!


「いえ・・・、大丈夫ですリュシル様。」


フィーはそんな俺の様子を見て、クスリと笑った。


「花火を見て居たら、今日は、とても楽しかったな、と思って。小さな頃は日々を只生きる為に生きていて、こんな風に祭りを楽しんだり出来るなんて、想像もしていなかったから。ただ、花火が終わった時に、何時かこの様な楽しい日々も終わりが来るのかな、と思ったら寂しくなってしまって。」


「はぁ、そう言う事か。」


俺はフィーの言葉に、安堵と共にため息を吐く。ただ、フィーの言っている事も良く分かる。人は楽しい事が終わった後は妙に寂しい気分になったりする物だ。だから、俺はフィーにある言葉を贈る、元の世界で見た映画か何かで聞いた言葉で、俺の心に残った言葉の一つだ。


「フィー、今日は楽しかったと思うんじゃ無くて、今日も楽しかったと思う様にすると良いよ。そうすれば、明日は楽しいかな? では無くて、明日もきっと楽しい。って思えるようになるからさ。」


俺のその言葉を聞いたフィーは、その言葉を噛み締めるように呟き、そして、俺を見つめ笑顔を見せたとたんポロポロと涙を零し始めた。


ええええええぇぇぇ! 今度は本当に何でだーーー! 俺、何か変な事言ったかーーー?


またまた、あたふたし始める俺を見てフィーは。


「いえ、リュシル様これは違うんです。」


そう言って、涙を零しながらも笑顔を見せるフィーに、俺は、ほぇ? と、少し間の抜けた顔になってしまった。


「これは、嬉し涙なんです。先程の言葉を頂いて、どうして、この人はいつも私の欲しい物をくれるのだろうって、この人の傍に居れて本当に良かったって思ったら、何だか心が暖かくなって、気が付いたら涙が溢れていました。だから、これは嬉し涙なんです。」


そう言って、微笑むフィー、その目からは、まだ涙が零れていたが、嬉し涙なら良いのかなと、安堵するのだった。


「はぁ、全く、あせっちゃったよ。でも、フィーはほんと泣き虫だな、初めて会った時も泣いていたもんな。」


その言葉に、今度はフィーが、ほぇ? とした顔をした。はい、フィーさんのほぇ顔頂きましたよ。


「え? あの? もしかしてあの時の事、覚えていたのですか?」


フィーの驚いた表情に、うんと頷く。


そう、忘れるはずがない、フィーと会ったあの日の事を 



当時俺は幼かった為に、唯一外に出るのを許されていたのは、屋敷の中庭のみだった。


あの日も探検と称して中庭に散策に出ていたのだ。


その時に女の子の泣く声が聞こえて来た。


その声がどうしても気になった俺は、誘われるようにその声のする方へ歩んで行った。


そして、中庭の建物の陰で、蹲る様にして泣いている一人の女の子を見つけた。


その姿にどうしても声を掛けなければいけない、と思った俺は「どうしたの?」と声をかけていた。


声に気付いた女の子が顔を上げ、俺の方を見た瞬間、俺は女の子から目が離せなくなっていた。


整った顔立ちと綺麗な黒髪、そして宝石の様な黒い目に魅入ってしまったのだ。


恐らく、あれが一目惚れと言う奴だったのだろう。


あの時女の子の涙を拭いたハンカチは、今でも机の引き出しの奥の宝箱の中に思い出としてしまってある。


その後、従者の主としての教育を受けた俺が、従者となる女の子と会った時に、嬉しさと共に何故あの時女の子が泣いていたのかに思い至ってしまい、申訳ない気持ちと共に、この女の子にそう言った行為は無理強いしない様にしようと心に誓ったものだった。



「そう・・ですか、覚えていてくれたのですね。」


そう呟くフィーの顔は、今にもうふふと笑い出しそうな程ニヨニヨとしていた。


俺は、そんなフィーを優しく見守るのだった。






おまけ


その後、祭りが終わり部屋へと戻って来た俺は、取りあえずフィーをギュッと抱きしめた。身長が少し足りなくて、抱き着いた感が否めないが兎に角抱きしめた。有言実行である。


突然の俺の行動に顔を真っ赤にしてボフンしたフィーを見て、ちょっとやり過ぎたかと反省。


そして、気が付いたフィーに、抱き付くのは問題無いですが、一言言ってからにして下さいと叱られた。そっか・・・、抱き付かれること自体は問題無いんだ・・・。それにしても、やっぱり、フィーから見ると、抱き締められたと言うより、抱き付かれたと見えるのですね・・・。くっ、身長め。


因みに今回の罰として、添い寝権を要求されました。券では無くて権の方でした。なんとか一月間で許して貰いました。はい・・・。











読んで頂きありがとうございます。

久々の更新・・・。

やっと1話書けました・・・。

因みに神楽さんが外を出歩いていますが、まあ、色々あった結果です。

一部修正しました。 抱き枕 ⇒ 添い寝


あ~引っ越した先の隣の住人のステレオの音がうるさくて、集中出来ない処か、寝不足だ~。

なんで、壁を挟んで聞こえて来る重低音って、あんなにイライラするんだろ?

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