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底辺召喚術師のシュウカツ事情  作者: なおさん
第1章
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体の調子を確かめて見る

この物語は異世界のお話です、現実の物理法則とは違う法則で動いております。

その辺を留意してお読みください。





それからの、数日間は様子を見ると言う事で、街に出る事は許してもらえなかったが、屋敷の裏庭であれば誰か様子を見る人が居れば出て良いと許可が貰えた。


翌日の午後、体の調子を確かめる為に、フィーを伴って屋敷の裏庭へとやって来る、そこは100m四方に開けた場所で、鍛錬など運動が出来る運動場になっている。


そして、俺を見る人物だが・・・、母さんと姉達、そして弟と妹、父さん以外の全員だった・・・。残念ながら父さんは執務が残ってて来れなかった様だ、なんか非常に残念そうな顔をしていたよ。それだけ、皆心配していると言う事なのか?


母さん達は、裏庭の隅の日当たりのよい場所にテーブルを持ち出し、そこで俺の様子を見ながらお茶会を開くつもりの様だな、まあ、ただ俺を見ているだけと言うのも何だし、その方が良いだろうな。


テキパキとお茶会の準備を進める母さん付きのメイド達、流石の手際である。場所も、こちらが運動しても埃が入らない様に風上に配置したようだった。


準備も終わり、それぞれ席に着く母さん達。何故かアルだけは、キラキラとした目で俺の近くに陣取っていたが・・・。そうしてお茶が入った所で。


「今日のお茶菓子は何かしら? コークス料理長の作るお菓子はどれも美味しいのよね、楽しみだわ。」


そう言って俺の方をチラっと見る母さん。ん? 何だろ・・・。


「それが・・・、料理長は昨日の夜から10日間お休みを頂いておりまして・・・、本日お出し出来る物は、既製品しかお出しできなくて・・・。」


そう言いながら俺の方をチラッと見るメイド。確かに料理長が出すお菓子は元々俺が教えた物をアレンジしたものが殆どだが・・・。なんだろ?


「あら、それは残念ね、彼の作るお菓子はどれも美味しくて、今更既成の品では物足りないわねぇ。」


そう言って、チラチラと俺を見る母さん、姉ズまで俺を見てやがる。ああ、そう言う事か、俺が何か出してくれる事を期待してやがるな、全員で来たのってそう言う事か。


俺は、内心で頬を引き攣らせ、そしてため息を吐く。


「そ、それなら、この間新しいレシピを見つけたので作った物が有りますが、そちらをだしましょうか?」


返事は判り切っているのだが、一応確認してみる。だって、新作の言葉に皆ピクリと反応しているんだもん。本当は孤児院の子供達用に作った物だったのだけど、フィーが張り切り過ぎちゃって大量に余っているのだ。何個か提供しても問題ない。


「あら、何だか催促しちゃったみたいで悪いわね、でも新作なら味見してみる必要もあるでしょうし、私達がその役目を引き受けるわ。」


仕方なくそうするのよ? そんな様子の母さんに内心で苦笑いを浮かべるのだった。


「これは、ミルクレープと言って、クレープの生地を何層にも重ねてその間にクリームを塗った物です。」


まだ切り分け前のミルクレープをテーブルの上に乗せて説明をする。周りにはほのかに甘い香りが漂い、母さん達はその匂いでごくりと唾を飲み込んでいた。メイド達も唾を飲み込んでいたけどね。


「まだ、数はあるので、他の皆さんもどうですか? 良ければ味の感想なども聞かせて頂ければ。」


その言葉にメイド達は顔を輝かせるが、主を差し置いて勝手な事が出来ないのか、母さんにお伺いを立てる様な目を向ける。


「ふふ、この子がそう言っているのだから、皆もご相伴に預かりなさい。」


その母さんの言葉に、わっと歓声が上がるのだった。そんなに食べたかったのかな・・・。


そうして、メイド達の分として、もう一つミルクレープを何時の間にか用意されていたテーブルの上に置くのだった。


後の切り分けはメイドに任せて俺とフィーは運動場の中央へと移動した。


俺はフィーに少し離れる様に告げ、取り出した木刀を取り出し構えを取る。


先ずは、魔力強化を使わずに今の体での動きを確認する、神楽の話を聞いた後にステータスを確認してみたが確かに以前の2倍程度になっていたが・・・。


基本の型を流れる様に行ってゆく、なるほど神楽の言う通り以前より遥かに動きがスムーズで力強くなっているのが解る、2倍と言うのも頷けた。


普段から魔力強化でその動きにも慣れていたから、特に問題無く一通りの型を行う事が出来た。


そうして、最後の一振りが終わり、構えを解くと同時に拍手が聞こえて来た。


「綺麗な剣の型ね、まるで踊って居るかの様だったわ。」


拍手をしながら母さんが良い物を見れたと感想を零す。姉達も感心した様な表情をしていた。アルは、何だか目のキラキラ度が増している様な気がする・・・。そして妹はミルクレイプに夢中だった。


うん、まあ、そんな風に素直に評価されると流石に照れてしまうかな。初めてフィーに見せた時と同じ反応だったのがなんだが嬉しかった。


だが、これからが本番となる。魔力強化を使用した時の体の状態を確認しないといけない。


今の身体能力で魔力強化を使えば、計算上今までの4倍となる訳だが・・・。いきなり実戦で使う訳にも行かないからな、今のうちに使いこなせる様にしておかないと。


そう思い、木刀を構えると、魔力強化を発動する。そうして、先程と同じ型を繰り返していった。


先程と違う処が有るとすれば、それはその速度だろうか、常人の目では捉えるのが難しい程の動き、そして、木刀を振るうと先程とは違いゴウッと言う、ワイバーンが尻尾を振った時の様な音がしていた。


最初は動きを制御しきれないかとも思ったが、問題無く動く事が出来た、これは、この体のお陰なのも有るのだろうが、ワイバーン戦の時に長時間オーバーブースト状態になっていた事によって、その感覚を覚えていた事が大きいのだろう。


そうして、全ての型を終えると構えを解く。すると、先程と同じ様に母さんの拍手が聞こえた。


そちらを見るとそこには、すごいすごいとのんきな様子で拍手する母さんと、驚愕の表情で固まる姉達とメイド達。アルはなんか目のキラキラが限界突破して眩しくて直視できない・・・。そして妹はミルクレープに夢中だった。


ま、まだ、確認したい事は色々あるんだけど、今日はこれぐらいにしとくかな・・・。皆には刺激が強すぎた様だ、出すのが早すぎたんだ!


そうして、皆の所へ戻りフィーにタオルを受け取り、汗を拭おうとして汗を一切掻いていない事に気付く、あれだけの運動をして汗一つ掻いていなかったのだ、流石はこの体と言う事か・・・。


「あら~もう終わりなの?」


もっと見たいわ、とそんな様子の母さん。いえ、あの、大道芸とかで無いのですから、そんな事言われましても・・・。


「い、いえ、一応病み上がりですし、今日は軽く流す程度にしておこうかと。」


そんな俺の言葉に、軽くってレベルじゃ無かったから! とそんな顔で俺を見る姉達とメイド達であった。


「に、兄さん! 僕を弟子にしてください!」


突然のアルの声だった。弟子って・・・、俺師範の資格取って無い・・・、ってそうじゃない、突然の事で混乱してしまった。


「アル、弟子って、突然どうしたんだ?」


「あの、僕も兄さんみたいに強くなりたいんです。そうして兄さんみたいに大事な人を守れるようになりたいんです・・・。」


俺の問い掛けに答えると、アルはチラリと横に目線を向ける。その目線の先にはマーサがいた。


ああ、なるほど、たしかにあの時俺達が来なければ二人はどうなってたか分からなかった、アルは怪我をしたマーサを身を挺して守ろうとしていたが、その為の力が足りていないと感じているのだろう、俺自身はその目の前でフィーを守り通した訳だからな。まあ、俺も褒められた方法では無かったが。


そんな俺に師事すれば、マーサを守れる強さが身につく、そお思ったのだろう。だが・・・。


「あ~、アル、俺と同じ事をしても、アルでは俺と同じ強さは手に入らないぞ?」


その言葉に、アルは酷く落ち込んでしまった。こればっかりは仕方が無い、俺があそこまでの強さが出せたのは、俺の魔力の大きさによるものと前世の知識があったからだ。まあ、アルなら、フィーと同じ位には強くなれるだろうが・・・。


「アルなら、このまま真面目に鍛錬を続けて行けば、大事な人を守れるぐらいの力なら十分付くと思うぞ?」


「でも、それだと遅いんです。ワイバーンの時の様な事が又あるかも知れない、その時に強くなるまで待って下さいなんて言ってられないんです。」


必死な様子のアル。大事な者を失う事への恐怖、アルはそれを味わったばかりだからな、焦っているのかも知れない。だが、その気持ちは痛いほど判る、俺にとってはフィーがそうであるように。


だから、俺はアルが強くなる為の手助けをする事に決めた。俺自身自重する事を辞めるつもりだからね。


「わかったよ、弟子云々とかは無理だが、俺で教えられる事なら教えるから、そんなに悲しそうな顔をするな。」


そう言った途端、アルは輝かんばかりの笑顔を見せた。ちょ、アルさんほんとに眩しいんですけど。アルはきっと将来モテるんだろうなと、遠い目をするのだった。


所で母さん達、俺とアルの遣り取りをお茶の肴にするのは止めて貰えませんかね。メイドさんたちは何故か頬を赤く染めてるし。そして妹さんはミルクレープに夢中だ、一体幾つ食べる気なんだ。



そして夜の調理場にて。


「リュシル様、こちらの調理終わりました。」


「よし、じゃあ、次は肉の薄切りの準備をしてくれ、俺はポテトサラダの準備をするから。」


「はい! 分かりました。」


何故か夕食の準備をする俺とフィーであった。


しかし、副料理長のミリルさんを差し置いて俺が夕食の準備をしても良かったのだろうか。当の本人は助かったと言う様なほっとした表情をしてたけどね。


因みに本日の夕食は、フィーリア特製クリームシチューと、フォレストボアの薄切り肉にチーズと香草を挟んだミルフィーユカツ、後はポテトサラダだ、パンと付け合わせもあるぞ!


貴族が食べる様な華やかな料理じゃ無いが文句は言わせん、文句があるなら今日は飯抜きだ!


好評でした・・・。皆ミルフィーユカツのお替りを要求して来る始末でした。どうやら、母さん達、俺とフィーが孤児院の子供達の為に、料理をしているのを何処からか聞いていたらしく、そこで出される揚げ物料理を食べて見たかったんだそうだ。


孤児院で作った料理については、料理長にも教えていたので、料理として出される事も有ったのだが、揚げ物については、今までは大量の油を確保するのが難しかったため、ここで出す事は出来なかったのだ。孤児院ではずるをしてカグラで用意していた物を使っていました。


では何故今回揚げ物を出す事になったかと言うと、単純に母さんがまた無茶を言ったからだ、今までは母さんが無理を言っても料理長が嗜めていたのだが、料理長が休暇を取ったのをこれ幸いと副料理長のミリルさんに揚げ物をお願いしたらしい。


で、困っていた副料理長のミリルさんを見かねて、油を提供しようとしたのだが、何故か俺とフィーが調理する事になってしまった。


まあ、揚げ物料理なんて今までやった事が無いのだろうから仕方ないか。しかし、妹さんはあれだけミルクレープを食べたのに、更にミルフィーユカツをお替りするなんて、一体あの体の何処に入っているのやら。


結局明日からのおやつと、夕食の揚げ物一品は俺とフィーが担当する事になったのでした・・・。料理長早く帰って来て、そう祈る俺とミリルさんでした。因みにフィーは俺と一緒に居られるのなら特に文句は無いそうです。











読んで頂きありがとうございます。

仕事の関係で、暫く更新が遅くなりそうです・・・。

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