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底辺召喚術師のシュウカツ事情  作者: なおさん
第1章
18/34

子供達は喜んでくれるかな・・・




森を出て草原地帯に出ると魔力強化を使い門へ向けて草原を走り抜ける、最近思った事だけどフィーも魔力強化をかなりの時間維持できる様になって来たと思う、強化力も上がっている様だから基本の魔力も上がっているのかも知れない、今度正確な値を聞いて見ようかな。


そのお陰か街道を歩いて行くと1時間程かかるのが、10分ほどで東門が見える位置まで到着した、後は普通に歩いて門へと向かった、あのスピードのまま突っ込むと守衛の人に余計な警戒をさせてしまうかもしれないからね。


いつもの様にザクツさんに手続きを行ってもらい街へと入って行き孤児院へと向かった、途中幾つかの食材を購入して孤児院へと到着する、敷地内にある広場では子供達が元気に遊んでおり、その脇では洗濯物を取り込んでいるローリエとマルメさんがいた。


「こんにちわ。」


そんな言葉と共に広場へと入って行くと丁度取り込みが終わったローリエがその声に気づき、俺達を見て明るい笑顔を向けて小走りにこちらへとやって来た。


「いらっしゃい。」


と気安い様子で俺とフィーへと挨拶を交わしていると、俺達の事に子供達が気付かない訳もなくわらわらと集まって来た。マルメさんは挨拶後、院長さまを呼んで来ますねと言って取り込んだ洗濯物を持って建物の中に入って行った。


「今日はどうしたの?」


ローリエの言葉にフィーの喜ぶ顔が見たいから寄りましたなどと口が裂けても言えない俺は。


「ええ、実は子供達にお土産が有りまして。」


その言葉に集まって来ていた子供達は、期待のこもった目で俺を見て来た。あ~うん余り期待されると困ってしまうんだけど・・・。


子供達の目の前でボールを一個取り出すと、一瞬びっくりした顔をしていたが、直ぐに興味津々といった表情となりボールを見つめていた。


子供達の注目を集める中、ボールの感触を確かめる様に両手でぐにぐにと挟む、その後手の平で地面へとぽんぽんと打ち付けると、その動きに合わせる様に子供達の頭も上下に動いていた。その様子に内心で苦笑いを浮かべた。


そしておもむろにボールを掴むと目の前にいる男の子に山なりにパスをした、男の子は突然の事に焦ってしまいボールを受け損ね、頭へと当たり横に転がってしまった。


その転がったボールは横に居た別の男の子が手に取りその柔らかさに驚いていた様だ、ボールを手に持ったままこちらを見つめて来たので頷いてあげると、俺がやった様に地面へとぽんぽんと打ち付けて楽しそうにしていた、そうして一緒にいた女の子とボールをパスし合って遊び始めた。


次にもう一個のボールを取り出すと、今度はサッカーのリフティングの様に足でボールを蹴り、その後別の男の子へと足で蹴ってパスをしてあげる、それを受け取った男の子に頷いてあげると、男の子は笑顔を見せ、数人の子供達と広場の方でボールを蹴り合って遊び始めた。


最初にボールを受け損なった男の子が羨ましそうに見ているところへ最後のボールを取り出し投げずに手渡して上げると、その男の子は太陽の様な笑顔を見せありがとうと言って、ボールを持って広場へと駈けて行った。


そして、ここに残ったのは女の子や運動が苦手な男の子が5人程、ふむ、ローリエも入れれば人数的にはちょうどよさそうかな?


次は何が出て来るのか、そんな期待の籠った目で見て来る子供達を引き連れて広場脇のテーブルまで移動し、リバーシ(こっちの世界では剣と盾と呼ぶことにした)を一組取り出しテーブルの上に置いた。


「今からこれの遊び方を説明しま~す、最初はフィーと二人でやって見るから良く見ててね。」


そう言って、リバーシ用のボードを挟んでフィーと向き合うと子供達に遊び方を説明しながらフィーと1ゲームをして行く、そうしてボードが駒で埋まり終了となったら、それぞれの駒の数で勝敗が決まる事を説明した。


まあ、後は遊びながら覚えて行けば大丈夫かな? 残りの2組を机の上に置きそれぞれに子供達が席へと着き、最後余った子供とローリエで組んで遊び始めた。丁度その時。


「遅くなってごめんなさいね書類の整理に手間取ってしまって、リュシル様もフィーリアも変わり無いかしら?」


「院長さま!」


書類の整理が終わって、広場へとやって来たリース院長を見てフィーは満面の笑みを浮かべて、リース院長のもとへと駆けて行った。そんなフィーをリース院長は受け止め頭を優しく撫でてあげていた。うん、フィーの嬉しそうな姿を見れただけで孤児院に来て良かったと言うものだ。


「リース院長もお変わりない様で何よりです。」


フィーとリース院長の所までゆっくりと近づき挨拶を交わす。


「リュシル様もお元気そうで、最も前に会ってからまだ10日しか経って居ないのですけどね。」


何年も会っていなかった様な喜び様のフィーにリース院長は苦笑を浮かべながらもフィーを撫でる手は止めないのだった。


「ところで、これは一体何が有ったのかしら?」


リース院長は、見たことも無いぽんぽん跳ねる丸い物体で遊ぶ子供達を見、そして、近くの机では何やら板の上に駒を並べてはひっくり返すという事を行っている子供達を見て疑問符を浮かべていた。


「え~と「はい! リュシル様が子供達の為にと遊び道具を用意して下さいました。」」


俺が答える前にフィーが応えてしまったよ、しかも直球ですよ・・・、せっかく色々と言い訳考えてたんですけど・・・。


「いえ、あの、神代の遺跡調査で調べた文献に載っていた遊び道具を再現してみたので、子供達に使って貰って使い心地を聞いて見ようと思ってですね・・・、その・・。はい・・・、子供達の喜ぶ顔が見たくて用意しました・・・。」


俺が用意した設定を言っている途中で、フィーが「あ・・・、本当の事言っちゃダメなんでした・・・。」とか呟いちゃったから、結局本当の事を言うはめになっちゃったよ。まあいいけどね。


その後その事に落ち込んじゃったフィーに気にしてないから大丈夫だからね、と頭を撫でて慰める事になったりもしたけど。そのお陰で、リース院長もこの事について何も言えなくなっちゃったみたいで。まあ結果オーライかな?


リバーシについてはリース院長も興味を持った様で、リース院長と俺で1ゲームやる事となった。


リース院長に遊び方を説明しながらゲームを進めていく、フィーとローリエは机の横に並んで立ちその様子を楽しそうに見ていた。


ん? それに気づいたのは偶然だった、ふと目を向けた先、フィーとローリエの後ろで動く小さな二つの影、その影はフィーとローリエの後ろにそれぞれ付きしゃがみ込んでスカートの下へ手を持ってくる、そして・・・、ばっ! と言う勢いで手を下から上へ持ち上げたでは無いか、そんな事をすれば当然スカートはめくれ上がる訳で・・・。


「きゃぁ」と言う悲鳴と共にスカートを押さえ後ろを振り向くローリエとニシシと言った顔で距離を取る男の子、それを睨みつけこらーと言って追いかけるローリエと逃げる男の子の姿が有った。所謂スカートめくりと言うやつか、こっちの世界でもあったんだな。


しかし、もう一人のフィーの方では違う様相になっていた、なんと、もう一人の男の子が手を持ち上げる瞬間フィーが半歩程前に出た事により、その手がスカートにかからず空振りとなったのだ、その男の子は完璧な動作と思っていたが目の前には最初と変わらないスカートがあるだけだった、男の子は何で?と疑問符を浮かべていると、後ろを振り向き男の子を見るフィー、怒られると思って固まる男の子。


「申し訳ありませんが、このスカートの中はリュシル様専用なので、おいそれとお見せする事は出来ないのです。」


そう言ってスカートの上から下腹部を押さえ優しく微笑むフィーがいた。


ちょー、フィーさんや、それをここで言っちゃうかなー、しかもそのしぐさ・・・。ほら~男の子が俺を微妙な顔で見てる~。しかも追いかけっこをしていたはずのローリエまで顔を赤く染めてなんかもじもじしてる~。


「リュシル様、いくら主と従者とはいえ、二人はまだ成人していないのですから、あまりその様な事をするのは感心しませんよ? 以前から言っているように・・・・・・。」


うわ~、リース院長まで小言を言い始めたよ・・・。げ、ここに居ないはずのマルメさんがペタンと床に腰を落としてこっちを見てる~、なんでこう言う時だけ皆タイミングが良いんだよ、だ~マルメさん潤んだ目で俺を見るのやめて~。


当の本人はキョトンとした顔で何かあったのかしら? と小首を傾げてるし。だ~小首を傾げるフィー可愛いなちくしょう。


結局誤解を解くのに一苦労する羽目になった。なんで知り合いの人にフィーと、その・・・、やっていない事を説明しないといけないんだよ・・・。まあ、でも結局皆俺が5歳児だと気付くと納得したのだけれどね? なんか釈然としなかった。その間も子供達は元気に走り回っていたよ。




「フィーそっちの準備はどうだ?」


「はい、あと少しで終われます。」


トトトトトと軽快な包丁の音が聞こえる


「ローリエの方は大丈夫?」


「ええ、こっちも大丈夫だわ。」


トントントンとこちらではしっかりとした包丁の音が聞こえた。


どうやら二人とも順調な様だな。



今、俺とフィー、そしてローリエは、リース院長の許可を貰って調理場で夕食の準備中だった。


今日の夕食は何を作るのかと言うと、それは、ハンバーグとクリームシチューを作るつもりだ。


フィーは一度屋敷の調理場で試作を手伝ってもらっていたので勿論参加なのだが、なぜローリエも参加しているのかと言うと、ローリエにも作り方を覚えて貰い今後孤児院でも作れる様にと思ったからだ。え? それならなぜマルメさんが居ないのかって? だって、マルメさんの俺を見る目がちょっと怖くて・・・。


フィーが作っているのはグラスラビットとフォレストボアの合い挽き肉を作って貰っている、しかし、ミンサーが無いために手作業で肉をミンチにしているのだ。


フィーは両手に包丁を持ち、台に置かれた肉を挽肉にしていく、かなりの重労働なのだがなんで俺がやらないのかと言うと、試作の時には俺がやったのだが、肉の粒が不ぞろいになってしまったため、試しにフィーにやって貰った所、これが綺麗に粒の揃った挽肉ができたのだ、なので挽肉作成はフィーにやって貰っている次第である。勿論魔力強化を使っての作業の為、フィーでも楽に出来ている訳なのだが。今度ミンサーを用意するかな・・・。


ローリエの方は、シチュー用の野菜を切って貰っている、この辺はローリエも慣れた物だった様で、特に問題は無かった。


俺はと言うと、ハンバーグに入れる繋ぎ用の玉ねぎを炒めて冷ますして置いたり、パン粉を作ったり、溶き卵を作ったりと細々とした作業をしていた。


「リュシルこっちは終わったわよ。」


ローリエの声にそちらを向くと、2cm程に切られたジャガイモやニンジンなどの野菜の山が出来上がっていた。流石普段から子供達の食事の準備を手伝っているだけの事はあるようだ。うむ、ローリエは良いお嫁さんになるだろう、ザクツさんも幸せ者だな、などと思っていたのだが。


「な、なによ? 私の顔に何かついてるの?」


どうやら顔に出ていた様だ、ローリエは訝し気な顔をていた。


「いや、ローリエは良いお嫁さんになるだろうなと、ザクツさんは幸せ者だなと思っただけだよ。」


「にゃ、にゃんで、ここで、ザクツ兄の事が出て来るにょよ、へ、へんにゃ事いわにゃいでよ。」


凄く分かりやすく焦った様子で頬に手を当て顔を赤くするローリエ、うわ~、焦りすぎだろ、なんて分かりやすいんだ。因みにこの時のフィーは、お嫁さんの言葉で一瞬顔を青くして、ザクツさんの名前が出てホッとした表情でうんうんと頷き、ローリエの様子を見て微笑まし気な表情をしていた。その間包丁の動きは一切止まっていなかったのだけどね・・・、よそ見して怪我をしないようにね?


そんなローリエは置いといて次の準備を進めるとしますか。


フィーの方はもう少しかかりそうなので、先にシチュー用の野菜を炒める事にした。大きな鍋を窯の上に乗せ油をしいて炒めるのだが・・・、背が届かない、鍋を乗せるまでは良かったんだけどね、ここからはローリエにやって貰いたいのだが、あの~ローリエそろそろ戻ってきて欲しいんだけど・・・。


「ローリエ次の調理に進むよ~。」


「っ! コホン、つ、次は何をすれば良いのかしら?」


その声にハッとなり我に返ったローリエが咳払いを一つして誤魔化す様に言った。なんかまだ言葉使いが変だな。


「うん、次はこの鍋に油をひいて切った野菜を炒めて欲しのだけど。」


「え? 炒めるの? 確かシチューとか言うスープを作るのよね?」


うん? どうやらローリエは煮込む前に炒めておくと野菜が煮崩れしにくいのを知らなかった様だけど・・・、確か料理長は何も言って無かったから、これは個人差なのかな?


「えっと、煮込む前に野菜を炒めると煮崩れしにくくなるんだけど。」


「へ~そうなんだ、初めて知ったわ。」


ローリエは感心した様に頷いていた。まあ、確かに毎日大量に調理する訳だから、そんな手間をかけてわざわざ野菜を炒めている余裕は無いのかも知れないな。


その後は、俺の指示に従い野菜を炒め、更に小麦粉を加えて炒め、と進めていく。途中フィーの方の作業も終わった為ローリエと交代しながら進めていく、量が多いのでかなり大変だった。あ、ちゃんとフィーの事は頭を撫でて労っておいたよ、何故かローリエは羨ましそうにしていたけど、いやいや流石に俺がローリエの頭を撫でるのはまずいだろ。あ、それともローリエがフィーの頭をなでたかったのか?


そうして、後は暫く煮込む事になったので、その間にハンバーグ用のタネを作る事にした、大きなボウルにフィーが挽肉にした物を入れ、炒めた玉ねぎ、溶き卵、小麦粉、パン粉、塩などを入れ揉む様にして混ぜ合わせる、こっちも量が多いので、3人で分担してそれぞれ作って行った。


ハンバーグのタネが出来上がった所で、野菜も柔らかく煮えて来たので最後にヤグルの乳を投入する、牛乳が用意出来なかったので、(と言うかこの領では存在していなかった。)ここでは一般的なヤグルの乳を使った。ヤグルと言うのは山羊ににた生き物でこの付近の山岳地帯に生息しており、それを家畜として飼いならして乳を採っている。


後はハンバーグを手の平大に形作り焼くだけなのだが、ここからは少し子供達に手伝って貰おうと思っている。


シチューの最後の仕上げをやっている間に、フィーに頼んで子供達を食堂の方に集めて貰っておいたのだ。では、ハンバーグのタネを持ってそちらに向かうとしよう。


食堂へ入って行くと子供達は3つのグループに別れてリバーシに熱中していたが、俺達が入って来たのに気づくと一斉にこちらを見て来た、その目はごはん? と言っている様だった。食堂にもシチューの良い匂いが流れて来ている様だからね。


「みんな~残念だけど、飯はもう少し後だぞ~」


その言葉に、子供達はあからさまにがっかりした表情を浮かべていた。それを見て内心で苦笑いを浮かべるのだった。


「みんな、肉は食いたいか?」


その問いに子供達はこくこくと頷いていた。


「なら、準備を手伝ってもらうぞ~? 自分たちで食べる肉は自分たちで準備をして貰おうと思う。」


そう言って、フィーとローリエに目配せをすると、彼女達は子供達にそれぞれ皿を配り、テーブルの上にハンバーグのタネの入ったボウルを置くと子供達は興味深そうにそれを見ていた。


俺達3人はそれぞれのテーブルに別れると、タネをハンバーグの形にするやり方を教えて子供達に好きな大きに肉を形作って貰った。その大きさはみんなそれぞれ個性が出ていて面白かった、なんだかんだ言って楽しそうにしていたよ。因みにローリエには、調理場で事前に教えてあったりする。


「皆ごくろう。では、これを焼いて来るから楽しみにしているように。」


そう言って、調理場へと向かう、背後から歓声が聞こえて来ていたのだが、皆のりが良いなと苦笑いを浮かべてしまった。


ハンバーグを焼き上げ準備を終えると調理場のカウンターから、用意の出来た皿からフィーとローリエにて子供達に配られて行くと受け取った子供達はあれ? と言った顔をしていた。それはそうだろうな、渡した皿にはクリームシチューがなみなみと盛られているだけでハンバーグが見えなかったからな。


そうして皿が全員に行き渡ると、リース院長の合図で皆一斉にスプーンを手に食べ始める、最初はテンションの低かった子供達だが、クリームシチューを一口食べた瞬間目を見開きその後無言でスプーンを動かし続けていた。皆気に入ってくれた様で何よりだ。


暫く無言で食べ続けていた子供達だったが、その内の一人がそれに気づいた様で、「肉だ!」その言葉と共に満面の笑みを浮かべていた。他の子供達もその声に肉の存在に気付いた様で皆一様に笑顔を見せていたよ。実はハンバーグが隠れるまでクリームシチューをなみなみと盛っておいたのである。


一皿目を平らげた子供達がまだ物欲しそうな顔をしていたのでお替りを欲しい子にはハンバーグは無いがシチューのお替りを皿に盛ってあげた、シチュー自体も子供達は気に入ってくれた様だった。まあ、お替りのシチューにも少し仕掛けって程では無いけど、残ったハンバーグのタネを団子状にして、小麦粉をまぶしてシチューに投入していたりして、当然それを見つけた子供達は喜んでいたりするのだけどね。


今日は遊び道具と夕食で子供達が喜んでくれた様なので良かったと、子供達の笑顔を見て思うのだった。







屋敷への帰り道、フィーと共に町中を歩いて行く、日も落ちかけていて少し薄暗くなっていたが、帰宅する人や夕飯の買い出し、酒場に繰り出す人などで通りは其れなりの人で賑わっていた。


「ところでフィー? 一体何を悩んでいるんだ?」


突然の俺の言葉にフィーは一瞬キョトンとした顔をした後に、直ぐに慌てたように、


「い、いえ、と、特に何も悩んでなどいません。どうして、その様な事を?」


と答えてきたが・・・。


「ん~だって、さっきからずっと思い詰めた様な表情をしていただろ?」


その言葉にフィーは黙り込んでしまい、そして、小さくため息を吐くと、


「やっぱり、リュシル様は凄いですね。」


と、呟いた。ん? なんか凄いと思われる様な事をやったかな? 俺は疑問符を浮かべ小首を傾げる。


「リュシル様は色んな事で孤児院の子供達を笑顔にしていると言うのに、孤児院出身の私が何も出来ていないなと思って、お金の件も私は受け取って貰えなかったのにリュシル様はあっさり受け取らせる事が出来て、私は全然だめな従者だと・・・。」


最後は声が小さくなって聞こえなくなってしまったけど、だめな従者だなんてとんでもない、俺にとってかけがえのない存在なんだけどな・・・、今のフィーには何を言っても慰めにならないのだろうな。


「フィーがいてくれてすっごく助かっているんだけどな。でも、フィーが孤児院の為に何かをしたいって言うのなら、そうだな、子供達に寝る時に着る寝間着の様な物を作ってあげるとかどうかな? フィーの手作りならきっとリース院長も受け取ってくれるんじゃないかな? 後は焼き菓子なんか作って持って行くのも良いかもね。」


俺の提案にフィーは何か感じ入った様に頷き、突然俺を後ろから抱き締めて来た。そして、「リュシル様、ありがとうございます・・・。」と、目を潤ませながら俺の耳元で囁いて来た。俺は驚きながらもそんなフィーの頭を後ろ手で撫でてあげるのだった。


あ~所でフィーさんや、この時間だと周りに人がそれなりに居るんですけど、なんかすっごく見られているんですけど。それでも今のフィーにそれを言える訳でもなく、落ち着くまでそのまま髪をなでてあげるのだった。また、父さんに怒られそうだな・・・。



・・・予想通り、父さんに怒られました、しかもなんか呆れていました。ううむ、今度から部屋に戻ってから声をかけるかな・・・、でもタイミングってものもあるし・・・。まあ、何とかなるか、と、あまり反省していない俺であった。









読んで頂きありがとうございます。

投稿がどんどん遅くなって申し訳ないです。

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