森ででハッスルしました。
明けて休養日俺とフィーは東門の外にいた。
今日はグラスラビットを狩りながら森へと向かい前回より奥の森へと向かう予定だ。
フィーも例の物を履いている様なので怪我の心配も無いと言う訳だ。モコはフィーの服のポケットに入りそこから頭だけをのぞかせていた。
門が見えなくなった所で草原へと入り魔力感知と魔力強化を使ってグラスラビットを狩って行く、勿論薬草などの採取も忘れない。
順調に進み森の入り口まで着いた時にはグラスラビットを4匹程狩る事が出来た。
これから森に入る訳だが、今回狙っているのは、フォレストボアとシキン鳥である、フォレストボアは前に一度狩っているので説明は省くとして、シキン鳥は体長1m程の大きさで鶏によく似た姿をしている違う処は普通に空を飛ぶ事ぐらいか、また、卵を毎日のように産むため卵目的で雌を飼育している所もあるぐらいだ、因みに屋敷の方でも何匹か飼育されていたりする、卵から育てると人に慣れて逃げないらしい。
ではなぜ、わざわざ野生の物を狙うのかと言うと、野生のシキン鳥はリフィルの実を主食としており、その実を食べて育ったシキン鳥の肉は非常に美味しいらしいのだ、何としても手に入れねば。
森へと入りしばらく進むと前回フォレストボアを狩った場所へと出た、ここでローリエと出会った訳だが・・・。
しかしあの場に俺達がいて本当に良かったと思う、もし居合わせなければローリエは死んでいたかもしれない、そうで無くても重症を負っていたかもしれないのだから。
フィーも同じ事を考えていたのか、神妙な顔をして俺の服の裾をぎゅっと掴んでいた、そんなフィーの頭を俺は優しく撫でてあげた。
そこから更に奥へと進むと川の畔の少し開けた場所へと出た、所謂河原と言った所か。
川の対岸には魔物の森が見えたそのうちに魔物の森へも行かなければいけないな・・・、そんな事を考えていると”きゅるる”と小さく可愛い音が聞こえた、音の鳴った方を見る、俺と目が合ったフィーが必死に頭を左右に振って自分じゃ無いと訴えていた、別にお腹の音ぐらい気にしなくてもいいのに・・・。
そう言えばそろそろ昼の時間かと思い丁度場所も良さそうだったため此処でお昼にする事にした、その間もフィーはさっきのは自分じゃ無いと訴えていたけどね。
河原の地面が平らになった場所に大きな布のシートを敷き、持って来たバスケットを取り出す。
本日の昼食はパンに切れ込みを入れてソーセージを挟んだ物、所謂ホットドッグと言うやつだね、まあ、ソーセージだけだと寂しいと言う事でレタスや炒り卵なんかも挟まれていて具沢山になっているけど。
ここで驚いた事だったんだけど、確かに今まで見た事無いなとは思っていたのだけどなんとこの国にはソーセージ、所謂腸詰と呼ばれている物が存在していなかった、他の国ではどうなのかは分からないけどね。
そこでカグラでの解析結果から、グラスラビットの腸が使用出来そうだったため、それで手作りソーセージを作ってみたのだけど、グラスラビットの肉だけで作った物は確かに美味しいのだけど何か物足りなかった、グラスラビットの肉は脂分が少ないのもその要因かもしれない。
そこで、屋敷の調理場でフォレストボアの肉を分けて貰って合い挽き肉にしてみた所かなり味が良くなった、フォレストボアの背脂を加えてみたのも良かったのかもしれない。
ここで一つ問題が有ったとすれば、料理長に肉を使う理由を問い詰められて思わずソーセージの事を洩らしてしまい一緒にソーセージを作る事になった事位か・・・、まあ、神代の文献を調べていて料理のレシピが見つかったので試したくなったと誤魔化したけどね。
収納庫に仕舞っていたため、出来立てのままのホットドッグと野菜のスープで昼食を取る。
俺の隣ではフィーも美味しそうにホットドッグを食べていた、その膝下ではモコが森で採取した木の実を食べていた。
なんか平和だな・・・、そんなまったりとした昼食だった。
食事が終わりフィーの淹れてくれた香茶で喉を潤す。
フィーはモコが食べた木の実で口の周りがベタベタになってるのを見て、それを拭き取る為にハンカチを川の水で濡らしに行った。
その時、川を渡る強めの風が吹き抜けて行った、「きゃっ」と小さな悲鳴と共にその風によりフィーのスカートが翻る、その様子を見た俺はそのままの姿勢で固まってしまう。
香茶を飲んでいる最中だったら恐らく噴き出してしまっていたかも知れない、「もう、悪戯な風さんですね。」そう言って翻ったスカートを押さえると、フィーは何事も無かったかの様にハンカチを水に濡らしこちらへと戻って来た、固まったままの俺を見てフィーは「どうかしましたか?」 と首を傾げていた。
「フィー、そ、その下着って?」
頭の整理が追い付かなかった俺は余りにも馬鹿な質問をしてしまった。そう、先程俺が見たのはフィーのお尻を包む白い布地、この世界には普及していないはずの、前に居た世界では当たり前の女性用の下着だった。神楽が渡したのってストッキングだけのはずだよね・・・?。
「はい、神楽さんが用意してくれた下着です。そ、その、似合いますでしょうか?」
そう言いながらフィーは頬を染め恥ずかし気におずおずとスカートをたくしあげたのだった。
ちょ! 予想していなかったその行動に、俺は至近距離でフィーの大事な所を隠している白い三角の布地を見てしまった。
それは、フィーの年齢位の子供が履くような下着では無く、大人の女性が履くようなデザインの決して派手ではないが綺麗な刺繍が施され上半分は透けている様な下着だった、後ろは普通っぽかったのに、何で前はこんな・・・。
ぽたっぽたっ。それに最初に気づいたのはフィーだった。
「!? リュシル様、鼻から血が出ています! 何処かでぶつけられたのですか?」
そう言いながらフィーは近寄って来る、え? 血? 鼻? 俺は手を鼻に当てるとぬるりとした感触がした、手をみるとそこには赤い血がべっとりとついていた、どうやら俺はフィーの下着姿にのぼせてしまい鼻血を出してしまった様だった。
この世界へと転生してから見た事がある下着姿は、ドロワズのみであった為、特に何とも思わなかったけど、今のフィーの下着姿はあまりにも刺激が強すぎた様なのだ。
「リュシル様すぐ横になってください!」
フィーは慌てたように俺をシートの上に寝かせ自分も俺の頭の位置に座り、その太腿の間に俺の頭を乗せた、そうして、先程濡らして来たハンカチで俺の血を拭き取ると、心配そうな顔で俺を覗き込んできた。
俺は、フィーのなすがままとなっていた。その時の俺は恥ずかしさの余り顔を真っ赤にしていただろう、そんな顔をフィーには見られたくなかったが、今の体勢ではどうする事も出来なかった。
目を閉じて何とか心を落ち着かせようとするが、目を閉じた事により太腿の感触とそこに先程の下着姿があると考えてしまい余計に落ち着かなかった。
なんで、フィーの下着姿を見ただけでこんな事になってんだろ、前の世界に居た時も何度か女性の下着姿は見たことがあったが、こんな事になる事は無かったのに・・・。
フィーの先程の下着姿が脳裏に焼き付いてしまい、その姿を思い出すと鼓動が激しくなるのが分かった。
どうしてこんなにもドキドキするのか、そこまで考えて俺は唐突に理解をした。
ああ、これは俺がフィーに好意を持っているからなのだと、好きな女性の下着姿、そんな物を見て平静でいられる男なんていないだろう。
今まで俺はフィーを自分の娘として好きなんだと思い込もうとしていたが、一人の女性として好きなのだと再認識してしまった。
しかし、だからこそこの気持ちは表に出せない。今の俺ではフィーを守り通すにはまだまだ力不足だから、俺が成人となり一人前の男となった時に改めてこの気持ちをフィーに伝えてみよう、その時にフィーが俺の事をどう思っているかは分からないけど、今は、フィーは俺の娘と思って接して行こう、そう心に誓うのだった。
「血も止まったからもう大丈夫みたい。」
色々と考え込んでいたお陰て、鼻血も止まりかなり落ち着けた様だ、俺は体を起こしてフィーに「心配かけてごめんね」と伝えた、そんな俺を見てフィーは安堵の表情を見せていた。因みにモコの口の周りは乾いてかぴかぴになっていて、綺麗にするのに一苦労した・・・。
ただ、ここでフィーに言っておかないといけない事が有った。
「え~と、フィー? その、さっきの下着姿だけど、おいそれと他人に見せたりしちゃ駄目だからね?」
あれはあまりにも刺激が強すぎる、あ、いや、そうじゃなくて、この世界では普及していない下着だから誰かに見られるとかなり問題になりそうだからね。
「はい! このスカートの中はリュシル様専用ですから、決して他人には見せたりしません!」
そう言ってフィーはスカートの上から下腹部を軽く手で押さえていた。俺専用って・・・、しかも押さえている場所・・・、あ~うん、まあ、他人に見せないのならそれでも良いや。俺が気にしない様にすれば良いだけだし・・・。
「あ~因みに、その下着フィーに凄く似合ってたよ。」
俺は、頬を赤くして照れくさそうに伝えた。鼻血出す位だからね・・・。
「は、はい、ありがとうございます。」
突然の誉め言葉にフィーも照れた様に頬を赤く染めていた。そこには何とも言えない空気が漂っていた。
「きゅぅ~」
モコの呆れた様な鳴き声にお互いに我に返りいそいそと、後片づけをするのだった。
その後狩りを再開する俺達だったが・・・、気になって仕方がありませんでした。
フィーが派手な動きをするたびに、翻るスカートからチラチラと見えるその様子に狩りに全く集中できませんでした、フィーさんさっき他人には見せないって・・・、あ、俺は他人じゃ無いからか・・・。
その様子を頭から追い出す様に俺は、暴走気味に狩りを続けて行った。
その結果・・・、フォレストボアX4匹、シキン鳥X10匹、その他薬草や木の実や果物など、数えるのが面倒な程の収穫でした、しかも2時間程の結果でした。
このままだと、森の獲物を狩り尽くす勢いだった為、今日はここまでにしておいた。え? もう遅いって?いえいえまだまだ十分早いですよ? 日もまだ傾いていないですし。
「フィーこの後孤児院にも寄るから、これぐらいにしようか?」
「っ! はい! わかりました!」
その言葉にフィーは嬉しそうに答えていた、うん、フィーは非常に分かりやすくて可愛いな!
おまけ
ここは、屋敷にある執務室の中、そこでは翌日が休養日となる為、仕事の最後の追い込み中のエルンスト子爵が書類と格闘をしていた。
その時、コンコンと扉をノックする音が聞こえ返事を待たずに扉が開かれる。
「俺だが、今大丈夫か?」
「コークスか? ああ大丈夫だが、どうした?」
領主に対して気安く話しかけるコークス料理長とそれを気にした様子もなく迎え入れるエルンストであった。
通常なら領主に対してこの様な態度を取れば不敬と取られるのだが、この二人は幼馴染と言う事も有り、エルンスト自身も堅苦しい事を嫌う性格の為、公の場で無い限りはこの様に気安い間柄なのであった。
「ああ、ちょっと変わった料理を教えてもらってな、俺なりに改良してみたんで味見して貰おうかと思ってな。」
そう言ってお盆の上に乗せられた皿を差し出す。
「丁度小腹が空いていた処だったから、喜んで味見させてもらうぞ。ほう、これは初めて見るな、なんて料理なんだ?」
その皿からはほんのり湯気が立ち上り微かに燻製肉の様な良い香りが漂ってきていた。
「ソーセージと言うらしい、腸詰の一種との話だ。まあ、冷めないうちに食べてみろ。」
そう言ってコークスはフォークを手渡す。
「ん? ナイフは無いのか?」
ナイフが無い事に訝し気な表情をする。一口で食べるには大きすぎた為だったが。
「ああ、それはな、端からかぶりつく方が美味いんだそうだ。」
その言葉に疑問に思いながらもフォークで突き刺すと端の方へかぶりつく、そうして、噛んだ瞬間程よい弾力とぷつりと嚙み切った時の感触と共に温かい肉汁が口の中に広がる、肉も一つの味では無く複数の肉の味がするがそれぞれが喧嘩する訳でもなくバランスよく合わさり一つの味となっていた、そして燻製した事による独特の風味が合わさり今まで味わった事のない旨みとなっていたのだった。
「っ!? これは美味いな、かぶりつく事によってその時の食感も一種の味付けになっているんだな。」
その言葉にコークスはニヤリとして満足そうに頷くのだった。
「コークス、確か教えて貰ったと言っていたな? いったい誰に教えて貰ったんだ?」
これだけの料理を知っている人物だぜひ会ってみたい、そんな風に思い出た言葉だったが。
「くっくっく、お前はすでに会っているんだがな。」
何が可笑しいのか笑い出すコークスに、笑って無いで早く教えろと睨みつける。
「リュシルさ、お前の息子のリュシルから教えて貰ったのさ、何でも神代の時代の文献に載っていた料理のレシピから再現してみたんだと。」
その言葉を聞いたエルンストは驚きの表情を見せる。
”そうか、遺跡の調査は進んで無いと言っていたが、その過程で入手した料理を再現させたのか、転んでもただでは起きない奴だな、こんな所が俺と違う所なんだろうな、俺は直ぐに諦めてしまったが、リュシルならもしかして。”
そう思いながら嬉しそうな表情を見せるエルンストであった。
読んで頂きありがとうございます。
フィーリアさんの行動は、神楽さんの教育の賜物です。