遊び道具(+その他)を受け取ってみる
「ふおおおおぉぉぉぉ」
両の手の平に乗せたそれを見て、感極まったのかフィーは奇妙な声をあげて興奮していた。
明日が休養日となる前日、護衛艦カグラへとやって来た俺とフィーは神楽へと頼んでいた品物の数々を受け取りに来ていた。
その一つが今フィーが手の平に載せている外の調査用の端末なのだが、外に出すに当たって偽装の為の外観をフィーと神楽に任せてみた所・・・、うん、ハムスターだね。実際飼った事は無いがペットショップなんかでよく見かける茶色と白の模様のハムスターがフィーの手の平の上に乗っていた、しかも顔をあげて鼻をひくひくさせたり、周りをきょろきょろ見たりと妙にリアルな動きをしていた。
「どうですかマスター可愛いでしょ。」
そう言って、ドヤァと言うような顔で俺を見て来る神楽に少しイラっとしたが、まあ、フィーが喜んでいる様なので良しとしておこう。確かにハムスター可愛いからね。
どうやらフィーはこう言ったモコフワっとした物に目が無い様だ、その証拠に先程よりは落ち着いた様だが、ハムスターをしっかりと抱き締めてご満悦の様子だった。くっ、フィーとハムスターのコラボは卑怯だと思います。
「と、取りあえず、フィーはそいつの事がお気に入りの様だから、基本はフィーが連れて歩いてくれて良いから。」
「っ! はい! ありがとうございます!」
うわ~、フィーの笑顔が今まで見た事無い程に輝いてる~余程うれしかったのだろうな。
「あ、所でマスターその子の名前ってどうします? その子とかそいつとかだと呼びにくいですし。」
「う~ん、確かに何か呼び名が有った方が良いかな、フィーはどう思う? 何か良さそうな名前あるかな?」
神楽の言葉に頷くが、いきなり言われても直ぐに思いつかなかったのでフィーに投げてみた。
「え!? そ、そうですね、リュシルジュニア・・・とか?」
ちょ、フィーさんや何で俺の子供みたいな名付けになってるのかな? それは流石にどうかと思ったので俺も別の候補を挙げてみた。
「ハム太とかどうかな?」
「ハム太ですか、それも中々良さそうですかリュシ太郎とかどうですか?」
だ~か~ら、フィーさんや何で俺の名前が一部使われてるのかな~? 何かフィーの中でそう言う決まり事でもあるのだろうか? しかも太郎なんてこっちの世界に無い名前をどこでフィーは知ったのだろう、って神楽からだろうな・・・。
「あの~二人共盛り上がっている所申し訳ないのですが、その子一様女の子なのでその辺を考慮に入れて頂いた方が・・・。」
フィーと俺でああでもないこうでもないと盛り上がっていたところへ、神楽から申し訳無さそうに告げられた真実、女の子でしたか・・・。俺とフィーは完全に男の子と思っていた訳ですな。
女の子か~さてどうした物かと、二人して首を傾げ黙ってしまう、流石に女の子となると下手な名前は付けれないからな、え? 男の子なら変な名前でも良かったのかって? いえいえそう言う訳では無いですよ?
改めてフィーに抱きしめられているハムスターを見てみる、目はくりっとした黒目で、茶色と白の毛色をしていてモコフワの毛並みをしていて実に触り心地が良さそうだ。
「モコ、なんてどうかな?」
ちょっと安直かも知れないけど、モコフワの毛並みを見てその名前が思い浮かんだ。
「モコ、ですか、可愛くって良い名前だと思います。」
どうやらフィーもその名前を気に入ってくれた様だった。
「決まった様ですね、モコですか私も良い名だと思いますよ。それでは、モコで登録しますね。私の足元にモコを置いて下さい。」
その言葉に従いフィーはモコを神楽の足元に置く、しかし、フィーはなんでそんなに名残惜しそうな顔をしているんだろ?
足元に置かれたモコが淡く光り始める、神楽が登録を開始した様だ・・・、いや、それ、ホログラムで光らせてるよね?
スウィープをベースにしているのなら、カグラに接地していればその部分から通信が可能なはずだからだ。
神楽は演出ですよ演出と言っていたが・・・。
暫くの間そうしていると、モコがキュキュッと鳴き、顔を動かしたどうやら登録が終わった様だ。
「はい、これで登録が終了しました、今後は名前で呼んであげて下さいね、あと、マスターとフィーリアさんの命令に従う様に設定しましたので、うまく活用してくださいね。」
「うん、これからよろしくなモコ。」
そう言ってモコの頭を撫でると、右手を挙げてキュッと鳴いた、宜しくとでも言っているのだろうか、その様子に俺とフィーは相好を崩すのだった。
「ではモコの機能について説明します。」
そう言うと神楽はモコの各機能について説明をしてくれた。
基本となるのはやはり調査の為の情報を記録する機能が主な様だが、記録した情報をプロジェクタ機能を使い壁などに映し出す事も出来るらしい、さらに、ジャイロセンサーや加速度センサーなどにより、記録した映像と合わせて簡易のナビ機能も搭載していて道に迷っても安心と言っていた、後は簡易ながら口から接種した物を分解解析する機能もあるとのこと。
後は必要な機能があれば順次実装予定らしいが、一つ気になった事があったので聞いてみた。
「モコが食べて分解解析した後の物ってどうなるんだ?」
「それでしたら、分解解析した後はモコの駆動用のエネルギーとして使われますよ、何も接種しなくても3日程なら動けますが、定期的に何かを接種すればずっと活動し続ける事が出来ます。」
その話を聞いて俺は少しほっとしてた、神楽の事だからリアルさに拘って食べた物はお尻から排泄させる機能を付けるんじゃないかと思っていたのだが流石にそこまでは付けなかった様だ。
「あ、マスター心配しなくても、ご希望通り食べた物をお尻から排泄する機能はちゃんと搭載してありますよ、しかも排泄された物は、素材用のペレットとしても使えると言う優れものですよ。」
ああ、やっぱり付けてたよこいつは、しかもその言い方だと俺が付けて欲しがってたみたいだろうが、フィーに変な誤解されたらどうするんだよ、そう思ってフィーの方を見ると・・・、どうしましょう、リュシル様は排泄好き?、従者として私のをお見せした方が良いのでしょうか、でも、乙女としてそれは恥ずかしいし・・・、と呟いていた。やっぱり誤解されている~。
その後フィーの誤解を解いたり、神楽へ説教したりと余計な時間を取られてしまった。これ以上この話を続けても不毛なので話題を変える事にした。
「それで、子供達の遊び道具はどうなったんだ?」
俺が神楽に聞いて見ると。
「それでしたら、もう出来上がっていますよ、倉庫の方に保管してありますので取りに行って下さいね。」
ん? 何でわざわざ倉庫に保管したんだろ? そう思って神楽を見ると彼女は俺の方を向いて片目を瞑っていた、所謂ウィンクと言うやつだな、その様子をみて俺は例の件の為の仕込みかと納得するのであった。
「あ~それなら俺が取りに行ってくるよ、わざわざ二人で取に行くのも何だし、フィーはどうしよう?」
「それでしたら、フィーリアさんには、モコの動作チェックも兼ねて少し艦内を回って来てもらうのはどうでしょうか?」
俺の振りに神楽も上手く乗って来てくれた、後はフィーが気づくかだけど・・・、どうやら神楽がフィーへもウィンクを行いその様子にフィーも察した様で神妙な様子で「はい。」と頷いていた。ストッキングを受け取るだけなのになんでそこまで緊張しているのだろう?
「それじゃあまた後で。」
「はい、それでは後ほど。」
そう言ってフィーと別れた俺は子供達の遊び道具を取りに行くため倉庫へと向かった。フィーはモカと艦内探検(?)へと向かっって行った。
艦内を歩き倉庫へとやって来た俺は倉庫内を見回すと入り口のすぐ近くの棚に置いてある子供達の遊び道具を見つけた、その一つ一つを手に取り異常が無いかのチェックを行い問題無い事を確認終えて、それを収納庫にしまって中央制御室へ戻って来ると、神楽だけが出迎えてくれた、どうやらフィーはまだ例の件が終わって無い様だった、少し遅い様な気もするが女性の準備は時間が掛かる物だしなと勝手に納得するのだった。
神楽にフィーの様子を聞いて見たがまだもう少しかかるとの事だった。
「そんなに心配ならフィーリアさんの様子を見せましょうか?」
そう言いながら神楽はフィーのいる部屋の映像を映しだす一瞬フィーの上半身の後ろ姿が見えた。
「だああ、神楽ストップ、ストップ、だめだって、今フィーはストッキングの履き方とか説明されてるんだろ? 流石にそんな様子を覗き見したらまずいって。」
何とか神楽に部屋を映すのをやめさせる事に成功したのだが。この時俺は、ここで止めずに確認しておけばあんな赤っ恥を掻かなくて済んだかもしれないと、後で後悔する事になるとは夢にも思わなかった。
それから暫くすると、フィーとモコが戻って来た、その手には大きな紙袋が抱えられておりフィーは少し頬を染めてもじもじとしていた、あ~うんなんだろなんか良い物を見れた気がするよ、しかしストッキングだけであんなに大きな袋になるものなのかな? 幾つ神楽はつくったんだろと少し気になったが気づかない振りをしておいた、まあ、女性には色々有るのでしょう。
戻って来たフィーに「おつかれさま」と言って、子供達の遊び道具を見せると、フィーは先ずはボールを手に取りその感触を確認した後、ポンポンと手の平で床に突いたりと楽しそうにしていた、今度フィーの分も用意しようかな・・・。
次にリバーシ(こっちの世界では剣と盾と呼ぶ事にした)をフィーとプレイしてみる。フィーは実物でプレイするのは初めてみたいだが、エミュレートしたリバーシで神楽と遊んだりしていた為かなかなかに手強くなっていた、それでも何とか勝てたけど・・・、接待リバーシじゃないよね?
それぞれに確認も終わり、これなら子供達も喜びますと太鼓判を頂くのだった。
神楽さんの独り言。
リュシルとフィーリアが帰り神楽一人になった艦内。
「ふう、これでマスターからの任務はコンプリートですね。フィーリアさんにもいろいろ伝授出来ましたからきっとマスターも喜んで下さる事でしょう。」
そう言ってニッコリ微笑む神楽であった。
その後リュシルにたっぷり説教を喰らったりするのだが・・・。
読んで頂きありがとうございます。
フィーリアはモコフワっとしたものが大好きな様です。




