神楽とフィーリアの会話
今回は神楽のターンです。
※※ 神楽視点で進みます ※※
「へ~孤児院の子供達はそんなに喜んでいたのですか~。」
「はい! リュシル様のおかけです!」
私の言葉にフィーリアさんは満面の笑顔で答えた。その笑顔を見て私はそんな笑顔をさせて貰えるマスターとの関係を羨ましく思ってしまった、・・・? 羨ましがる? 管理システムの疑似人格である私が?
私の名前は神楽、この護衛艦カグラの管理システムの疑似人格です。
この場所で長い時間停止されたままだった私をマスターとフィーリアさんの二人によって再起動して頂き今ここにこうして存在出来ている訳なのです。
護衛艦カグラの存在している場所が特殊な事も有り、毎日会う事は出来ないのですがこうして定期的に会いに来て話すことが出来てそこまで寂しくは無いかな・・・、二人ともここに住めば寂しく無いのに・・・? 何で私は寂しがってるのだろ? そう言った感情は制限されているはずなのに、後でマスターに調べて貰おう。
今私は、フィーリアさんとの会話を通して、外の世界の情報を収集しているのだけど、今日はマスターから直々の任務を依頼されているためそれを実行しなければいけない。
「はーそのフォレストボアと言う3mはある生き物をマスターが一撃で倒されたのですか、流石はマスターですね~」
「はい! リュシル様のお陰でローリエを助ける事が出来ました。」
ふふ、こうやって話を聞いているとフィーリアさんの話は常にマスター在りきなんですよね、何だか微笑ましいですね。どうしてこれだけお互いに想い合っているのにこれ以上に進展しないのでしょ? ふしぎです、全く人の心と言うのは難しい物ですね。
と、いけない任務任務。
「ところで、フィーリアさんは森へ入った時もその服装だったのですよね?」
「はい、そうですけど・・・?」
フィーリアさんは何かおかしな所でもあるのだろうかと服の状態を確認していた。
「ああ、いえ、その服装だと素足が見えていたので、森に入ったのなら、木の枝や葉っぱとかで足を怪我しなかったのかなと思って。」
「確かに木の葉っぱなどは足に当たったりはしましたが、殆どの葉っぱや木の枝などはリュシル様が全部切り落として下さったので、すごく歩きやすかったです。」
わ~マスターってばそこまで気を使ってたのですね、流石としか言えないですね、私はその様子を思い浮かべ内心で苦笑いを浮かべてしまった。
「ズボンなんかは履かないのです?」
「従者ですからこの格好は譲れません!」
私の質問にフィーリアさんはきっぱりと答えたけど、マスターから聞いていた通り変な所で頑固なのですね、と内心でため息を吐いた。
「でも、もしも枝とかで怪我をして跡が残ったりしたら将来マスターに見られた時にがっかりされないかな?」
「っ!?」
私の言葉にフィーリアさんは正に今気づいたとばかりに狼狽えた様子を見せていた、そこまで考えていなかったのね、なんて分かりやすいんでしょ。まぁ、マスターなら、俺の為に付いた傷ならがっかりする訳無いだろ、とかいいそうだけどね。
フィーリアさんは、「ど、どうしましょう、従者としてこの格好だけは譲れないですしでもリュシル様ががっかりされては・・・。」と呟きおろおろしていた、任務の事もあるしそろそろ助け舟を出しますかね。
「そんなフィーリアさんに朗報です! この様な物を履いてみてはどうでしょう~」
私はジャーンと効果音を発してホログラムにストッキングを表示させると、おろおろしていたフィーリアさんはピタリと動きを止め食い入るようにこちらを見てきた。う~ん凄い食いつきだ。
「そ、それは何でしょう? 長靴下?」
この世界にも長靴下と言う物が有る様なのですがそれはあくまで冷え性の人や、怪我の後を隠したい人が着用するための医療用の物で生地も分厚くデザインも何も無い代物であるらしい、一部デザイン重視の手編みの物もあるらしいが手間暇もかかる為かなりの高級品となり、王族や一部の裕福な貴族や豪商などしか履いている者が居ないはずだ、この世界の本をスキャンした時の情報に記載されていた。
「いいえ、これは長靴下ではありません、私達の世界でストッキングと呼ばれている物です。」
「ストッキング・・ですか?」
「はい、この世界の長靴下の様に分厚い生地の物では無くて、向こう側が透けて見えるぐらいの薄さの生地を使っています。」
そう答えながらホログラムの映像を切り替えて説明するとフィーリアさんもどの様なものか理解した様だった。
「でもそんなに薄いとすぐに破れてしまわないです?」
ふふ、マスターと同じ反応ですね~。
「大丈夫ですよとても頑丈な糸で編まれていますから刃物で斬り付けられても傷一つ付きません、それに、特殊な薬品が染み込ませてあって、湿度と温度が一定に保たれるので、夏は蒸れずに涼しく冬は暖かと言う優れものですよ。」
「そ、それは素晴らしいですね、特に夏場蒸ず冬に温かいって言うのが。」
マスターと同じ事を説明したが、あら、そちらの方が気になりますか、まあ確かに女性にとって夏場に足が蒸れるのとか、冬に足が冷えるのとかってかなり厳しいですもんね。
「どうです? これなら今の服装のままでも履く事が出来ますよ?」
「お、お願いできま・・・。」
フィーリアさんは最後まで言い終わらず途中で何かに気づいた様にハッとした様子で固まっていた。? どうしたのかな?
「どうかしましたか?」
「あ、あの・・・そのストッキングですけど、向こうが透けて見える位薄いのですよね? それだと履いた時に、その・・・、大事な所が透けて見えるのでは・・・。」
顔を赤くしながら、答えるその言葉に私は疑問符を浮かべた。
「えっと、これは、下着の上に履くものですから、確かに下着は透けて見えますけど?」
「え?」
「?」
何か話がかみ合っていない様な・・・、フィーリアさんはストッキングを下着を着けずに履くものと思っている? まあ、作られた当初は下着と一体になってたらしいですが、今は下着の上に履くのを前提に作られている物が殆どなのですよね、勿論今回の物もそれを前提にしているのですが。
「これは、下着の上に着ける形になりますよ?」
私は再度そう説明するとフィーリアさんも納得はした様なのですが、履いた時の状態を想像して少し眉をしかめていた。どうしたのかしら?
「えっと、下着の上からそれを履くと下着が押さえられてゴワゴワして履き心地が悪くないですか?」
フィーリアさんがおずおずとした様子で話すその言葉に、ゴワゴワする? と私は疑問符を浮かべていた。
「えっと、こんな事聞くのは何ですけどフィーリアさんって、今どんな下着を着けているのですか? 差し支えなければ見せて欲しいのですけど・・・。」
「え!?、こ、ここでですか?」
フィーリアさんは扉の方へ目を向ける。ああ、マスターが戻って来るのを心配しているのですね。
「マスターならまだ暫くは戻って来ないのでだいじょうぶですよ。」
そういって私は頷くと、フィーリアさんも覚悟を決めたのかスカートに手をかける。
「こ、この様な下着を着けてます。」
フィーリアさんは、顔を赤く染め、少し涙目になりながらもぎゅっと目を瞑り、おずおずとスカートをたくし上げ下着を見せてくれたが・・・、ゴクリ・・・、何でしょうこの背徳感は、下着を見せるだけなのにこの艶かしさ、フィーリアさん恐ろしい娘、何だか変な趣味に目覚めてしまいそうですわね。はっ! いけない任務任務。
「あ、ありがとうございます、も、もうおろしても大丈夫ですよ、その下着はドロワズと言う物ですね、確かにその上からストッキングを履くとゴワゴワしそうですね・・・。」
やっと理由が分かりました、ほっとした様子でたくし上げていたスカートをおろすフィーリアさんを見ながら、マスターは四六時中一緒に居てこんな仕草を見せられていて、良くこれに耐えて自分を押さえていられますね・・・、と感心していた。
しかし、ふむ、これは困りました、このままだとマスターからの任務を遂行出来なくなってしまいます、何とかせねば。ストッキングの上からドロワズを履くと言うのも本末転倒の様な気がしますし、ストッキングの下に何かを着ける? 下着? って、ああ、なんだ別にドロワズを無理に履く必要は無いのですよね、普通に私達のいた世界の下着を用意してそれを履いて貰えば良いではないですか。これは名案とばかりに私はポンと手を叩く。
「それでしたら、ストッキングに合わせて、私達のいた世界の下着を着けてみますか?」
そう言って、ホログラムに幾つかの下着と着けた時の状態を表示して行く。
「こ、これが、リュシル様がいた世界の下着ですか・・・、こ、これでは体の線がそのまま出てお尻が半分見えてしまっているでは無いですか・・・。」
ありゃ? 予想外な反応ですね、フィーリアさんはお尻を見られるのが嫌なのでしょうか、スキャンした限りだと小ぶりで可愛いお尻だと思うのですが、それにまだ成長途中ですから、これから肉付も良くなって来るでしょうし、あらやださっきのフィーリアさんを見たせいか変な目線になってたかしら。
「それではこう言ったのもありますよ。」
今度はお尻を包むようなデザインのものを幾つか表示させる。
「あぅぅ、これならさっきのよりはでも・・・。」
フィーリアさんはあぅぅでも・・と繰り返し決心が付かない様子だった、ああ、もう、何かしらこの可愛い生き物は。
これは・・・、もうひと押し必要かしらね。
「マスターもドロワズよりも前に居た世界の下着の方が見慣れていますから、きっと喜ぶと思いますよ?」
「その下着でお願いします!」
うわ! 即答ですか散々迷っていたのにマスターの事を出した途端これですか、本当にフィーリアさんはマスターを中心に回っているのですね~、何だか妬けてしまいます。
「では、次の休養日までに準備しておきますから楽しみにしていて下さいね~」
「は、はい・・・。」
マスターの為ならと即答したけど、やっぱり恥ずかしいのかしらね、頬を赤く染めている様子は何だか微笑ましいです。
ふ~これで任務も達成できたしマスターも喜んでくれる事でしょう。・・・しかしこの時神楽の演算能力をもってしても予想できなかったのです、この行為がこの世界の下着事情を一変させてしまう事に・・・。なんちゃって。
読んで頂きありがとうございます。
マスターから任務を貰った神楽さんですが、少し張り切り過ぎてしまったのかマスターの思惑から少し外れた事をしてしまった様ですね、この行動が後にどんな影響が出るかも知らずに・・・。