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底辺召喚術師のシュウカツ事情  作者: なおさん
第1章
12/34

孤児院へと行ってみる(前)



森を抜け草原を少し進むと東門へと続く道へと出た、後は道に沿って歩いて行けば東門へと辿り着けるはずだ。


フィーとローリエが並んで歩きその後ろを俺が付いて歩いて行った、俺とフィーだけなら、魔力強化でひとっ走りの距離だが、今はローリエが居る為にその速度に合わせる為だ。


俺の前を歩くフィーとローリエは楽しそうに笑い合っていた、昔の事を離れ離れになった後の事をお互い話し合いながら歩いて行く、笑い合う二人のその姿は苦楽を共にしたが故の家族としての笑顔なのだろう。


フィーが俺に向ける笑顔とは違うそれを見て少し嫉妬を覚えてしまったが、長く離れていた事を考えると邪魔をするのは無粋と言う物だろう。


そうして小一時間ほど歩くと、やがて大きな石壁とそれに負けない大きな門が見えて来た、ローリエはやはり内心では不安だったのだろう、住み慣れた街が見えた事で安堵の表情を見せた。


門の脇にある建物へと3人で入ると、手続きの為に受付へと向かうこの時間人は殆どおらず、直ぐに受付を行う事が出来た。


「おや、ローリエじゃないですか、随分早く戻って来た様ですが目的の物は見つかったのですか?」


ローリエを見た受付の男が気安く声をかけてきた、どうやらローリエの顔見知りらしい。


「うん、目的の物はこの通り、でも、危うく死にそうな目に遭ったのだけど、後ろの二人が助けてくれて・・・。」


布に包んだ長芋を見せながら、森での事を思い出したのだろう体をブルリと震わせていた。


「ふむ、余り無茶をしないで下さいね? 後ろと言うと、ああ、朝受付をした二人ではないですか、この娘を助けて頂いたそうでありがとうございます。」


そう言って頭を下げて来た、何処か見覚えのある人だと思っていたら朝の受付をしてくれた人だった、午後は街へ入る受付側へ交代したらしい。


「でも、川の手前の森で死にそうな目に遭うだなんて、一体なにがあったのです?」


彼としては、何が有ったのか確認をして置きたかったのだろう、もし他の人にも危険が及ぶ様な事であれば森へ向かう人に注意を呼びかけたり、最悪は関係各所に連絡をして、対処しないといけないのだろう。


「ええ、ローリエさんがフォレストボアに遭遇してしまった現場に丁度居合わせてしまいまして。このままでは危険と判断して、手を出ささせて頂きました。」


「フォレストボアですかその話が本当なら、人を集めて狩りをしないといけないですね。」


彼が苦虫を噛み潰した様子で呟いた。フォレストボアは魔物では無いが攻撃的なため非常に厄介な存在らしい。過去にも何度か同じ様な事が有ったのだろう。


「その心配は必要ないかと、フォレストボアは既に倒しましたので。」


事も無げに告げる俺に、彼は、「え?」と言う表情をしていた。


「凄かったんですよ、体長3mは有るかと言うフォレストボアを一撃で倒してしまったんですから。」


ローリエがその時の様子を興奮気味に話す。


「え? 体長3m? そんな大きさのフォレストボア聞いた事も無い、しかもそれを一撃って・・・。」


何を冗談言ってるのかなこの娘達は、とそんな表情で俺達の方を彼は見て来たが・・・。


フォレストボアは耐久力が高くその攻撃性が厄介で、大人数人掛かりでやっと倒せる位には強力な存在なのだからそれも仕方が無いのだけど。


「ええと、一撃と言うのは少し語弊がありますが、倒したフォレストボアはたしかに3mはありました、何でしたら見てみますか?」


未だ半信半疑の彼を建物の前へと連れ出し、外で警備していた守衛さんが何事? とこちらを見ているのを無視して、フォレストボアを収納庫から取り出す。


「!?これは・・・。」


驚きの表情を見せる彼と守衛さん、たまたま近くにいた通行人などがそこには居た。


ローリエは、「ね? 本当でしょ。」と胸を張っていた。そんな彼女を見て俺とフィーは苦笑いを浮かべていた。


「なんて大きなフォレストボアでしょう、確かに3mはありますね・・・、これだけのフォレストボアは初めて見ました。」


彼は感嘆の声をあげ、しかもこれを一撃?、でも、何も無い所からフォレストボアを出した所をみると収納庫持ち、収納庫を持っている所を見ると召喚術師か・・・、強い召喚獣か精霊と契約出来ればあるいは、それならこんな小さな娘でも・・・。


と、一人で何かを納得するかの様に呟いていたが・・・、娘じゃないですよ? しかも、召喚術関係ないですよ? まあ、勝手に納得してくれるならいいけどね。


このままここに出したままでは通行の邪魔になるので、フォレストボアを収納庫に仕舞直すと、え~もう仕舞っちゃうの? と呟くローリエさんがいたけど、貴女それに殺されかけたのですけど・・・。


「いや、本当に3mはあるフォレストボアでした、疑って申し訳ありません。」


彼は謝罪してきたが、俺としては、人を集めて討伐に出られると無駄足になってしまうので、忍びないと思っただけなので、気にしてないですよと言っておいた。


その後3人の受付を行い街に入っていった。ローリエが別れ際に彼に手を振っている時の様子を見ていたフィーが・・・。


「ローリエはあの人の事が好きなの?」


「え!? ちょ、何を言ってるのかなこの娘は、わ、私がザクツ兄の事好きだなんて・・・。」


ほう、彼はザクツさんて言うのか、しかし、フィーの言葉に、頬を染めて「なんでばれたのかしら」と呟くローリエだったが、彼と話すときの様子で俺でさえも好意を持ってるなと判るぐらいだったのだから、フィーが見れば即ばれだったのだろう。


そんなローリエを生暖かく見守りながら街を歩いて行き、ローリエとフィーの案内の下、程なく孤児院へと到着した、この孤児院は表通りから一つ入った裏道りにあり、元々剣術の道場だった所をそのまま孤児院として使っているらしく、その為其れなりの広さの運動場があり、そこでは10人程の子供たちが遊んでいた。


「ただいま、マルメさん。」


ローリエはその遊んでいる子供たちの方へと近づいて行き、小さな子供達をあやしていた20代後半位の女性へと声をかけた。


「あら、お帰りなさいローリエちゃん。」


そう言ってローリエに気づいた女性マルメさんは柔和な笑顔を見せた。


その声に気づいた子供たちがローリエの元に集まり、お帰りなさいと親し気に話し合っていた。


その内の一人がローリエへ首尾はどうだったの? と問いかけると、ローリエはふふんと笑い布から長芋を取り出しどうよと言った顔で長芋を掲げていた、それを見た子供たちが歓声を上げるのだった。


そんな様子をほんわかした気持ちで見ていた俺たちにマルメさんが気づいて、ローリエにあの人達はどうしたの? と声をかけた。


「あ、そうだった、あの二人は院長さまに会いに来たんだけど、院長さまは中に居るのかな?」


「あらそうだったの・・・、それがねえ、ちょっと王都からの配給関係でトラブルがあったらしくて、急遽出かける事になってしまって今は居ないのよ、帰りも遅くなるっていってたわ。」


ローリエの言葉にマルメさんはそう答え申し訳無さそうにしていた。


聞こえて来たその声に、フィーはあからさまに落ち込んでいる様子だった。


まあ、凄く会いたがっていたもんなと、そんなフィーの頭を撫でて慰めていると、ローリエが申し訳無さそうな顔でこちらへと戻って来た。


「2人共ごめんね。院長様は今居ないみたいなの、帰りも遅くなるみたいで・・・、フィー凄く会いたがっていたのにね、残念だけど。」


フィーは更に落ち込んでしまった様で目には薄らと涙が浮かんで見えた。


フィーとしては従者としての立場から勝手な事が出来ない、今日はローリエを送り届けると言う名目があったからここに来れた、その名目が無くなればここに来る理由が無い、とでも思っているのだろうな・・・。


もっと我儘を言ってくれても良いんだけどな・・・、まあ、それならそれで、ここに来る理由を俺が作ってやれば良いだけだが。


「そうですか、では今日はこのまま帰ります。明日またフィーと一緒にお伺いしますので、院長様によろしくお伝えください。」


その言葉を聞いたフィーは、一瞬きょとんとした顔を俺にむけていたが次の瞬間、ぱぁっと花が咲く様な笑顔を見せてくれた。あ~なんだろな、この可愛い生き物は。


俺は、フィーを抱き締めたい衝動に駆られたが、今の俺だとフィーに抱き着く形になってしまうため、見た目にも微妙な状態になってしまうと言う事も有り何とか思いとどまるのだった。


しかし、それを行動に移す者がいた、ローリエがフィーをぎゅっと抱き締めたのだ。ローリエめ! 俺がやりたかった事をよくも! 身長さえ有れば俺だって・・・。


まあ、フィーの頭を撫でながら、「優しい主様で良かったね。」と言っていたから良しとしよう。


「明日同じ時間ぐらいに伺いますから、その旨お伝えください、後ローリエさんにも少しお話があるので出来れば同席をお願いしたいのですが。」


そう言ってローリエを見ると、問題無いと言った様子で頷いていた。


その後フィーを伴って、帰宅の途につくのであった。


「あの・・・、リュシル様・・・・、フィーの為にありがとうございます。」


「ん~何の事を言ってるのか知らないけど、お礼を言われる様な事をした記憶が無いから気にしなくて良いんじゃないか?」


帰りの道の途中で俺の少し後ろを歩いていたフィーがさっきの事でお礼を言ってきたが、少しとぼけて気にするなと答えたその瞬間、フィーに後ろから抱き寄せられてしまった。


一瞬何が起こったのか分からずフィーの柔らかな感触に顔を赤くして固まっていると。


「ごめんなさい・・・、今は、どうしてもリュシル様のぬくもりを感じていたくて、暫くこのままでお願いします・・・。」


フィーのその言葉に肩の力を抜くと後ろ手にそっと頭を撫でてあげた。


今日は偶然とはいえ家族同然だったローリエと出会い、ずっと合いたかったであろう院長と会える事になって、今まで押さえていた気持ちが溢れてしまったのだろうな・・・。


あ~ちなみに、フィーさんや道の真ん中で夕方の人通りの多い時間と言う事も有りかなりの人から色んな種類の視線を向けられて居たりしているのだが・・・、その事に全く気が付かないフィーさんであった。


その後周りの視線に気づいたフィーが顔を真っ赤にしてあわあわと慌てふためく姿を見れたりと、今日も色んなフィーリアが見れたので良しとしよう。



その後夕食の後に父さんから、


「あ~リュシルや? 従者と仲睦まじいのは良いのだが、往来の真ん中であのような事をするのは余り褒められた事では無いぞ?」


と、注意されてしまった。


どうやら、買い物に出ていたメイドの何人かがその現場を目撃していた様だ、それが父さんの耳に入ったのだろう。


あ~っと、すべて事実なので何も言い訳が思い浮かばない・・・。


「はい・・・。以後気を付けます・・・。」


そう答えるので精一杯だった。


後ろで聞いていたフィーはその時の事を思い出したのか頬を染めながら真っ青になると言う器用な事をやっていたが・・・。




孤児院へローリエを送った翌日俺たちはギルド支部の前に居た・・・。


建物の入り口から顔を半分だけ覗かせて中を伺う俺達、中へと入って行く人達はこの子達は何をやってるのかな? と言った表情で通り過ぎて行った。


そう、すっかり忘れていたのだ受付嬢マルティナさんの事を。


中を伺い受付カウンターの方を見る・・・、居た・・・、マルティナさんだ。


その、マルティナさんは一人の冒険者の男性の対応をしていた。様子を見ている限り特におかしな処は無さそうだった、多分昨日の事は偶々だったのだろう、まあ偶々で殺されそうな事になってもこまるのだが・・・。


意を決して建物の中に入ると、ゆっくりと受付へと向かって行く、俺達に気づいたマルティナさんがニッコリと微笑んだのだが・・・、昨日の事が有ってどうしても背筋に寒い物を感じてしまった。


「ようこそ当ギルドへ、本日はどの様なご用件でしょうか?」


まるで昨日の事が何も無かったかのようなマルティナさんの態度にもしかして昨日の事は夢だったのか? と小首を傾げつつも、俺もわざわざ触れたくは無かったのでまあいいやとカウンターに手をかけマルティナさんを見上げつつ、恐る恐る声をかけようとした瞬間目の前が真っ暗となり、むぎゅっとその双丘へと抱き締められたのだった。


モガー! ま、魔力強化を使っていたのに全く反応出来なかっただとう、今回は被害から免れたフィーが俺をマルティナさんから引き剥がそうとするが、万力で締め付けられたかの様にびくともしないのであった、あ、フィーも捕まった・・・、息が出来ずモガモガともがいていたが、あ・・・、意識が・・・。


そして、意識を失う寸前、女性の職員さんに助けられるのだった、「やだ~もっと抱きしめりゅ~」と奥へと引きずられていくマルティナさんと、「だから、私だって抱きしめたいって言ってんでしょうが!」と叫ぶ女性職員さんであった。


し、死ぬかと思った・・・。しかし、強化してても全く反応出来なかったマルティナさんも凄いが、そんなマルティナさんからあっさりと助け出す女性職員さんは、もっと凄いと言う事なのか・・・、ギルド職員恐るべしだな。


肩で息をしながらそんな事をかんがえていると。


「リュシル様ごめんなさい・・・、フィーにもっと力があれば・・・。」 


と落ち込むフィーを見て、慌てて頭を撫でてあげて「フィーは何も悪く無いからね?」と慰める俺、そうして、元気になるフィーなのであった。


そんな様子を見ていた周りの人たちは、何とも言えない微妙な顔をしていた。


暫くして戻って来た女性職員さんが謝罪をして、代わりに受付をしてくれる事となった。


ちなみに、この女性職員さんはネリーさんと言うらしい、もう貴方が俺の担当で良いんじゃ無いでしょうか?


「本日はどの様なご用件でしょうか?」


ネリーさんはニッコリと笑顔を向けて来た、彼女は赤みがかった茶色の髪を短く切りそろえていて顔立ちも整っており、彼女の笑顔は見ている者を明るく元気にしてくれる様な笑顔だった。


「常時採取素材の買取をお願いします。」


「はい、買取ですね、見せて頂けますか、え~と?」


俺の言葉に、ネリーさんは答えるものの、何も持っていない二人を見て疑問符を浮かべていた。


「少し数が多いので此処では置ききれないかもなのですが・・・、それと聞いているかも知れませんがフォレストボアも1体ありますので・・・。」


その言葉にネリーさんはああと頷くと。


「では、解体加工場に案内しますので直接そちらで見させて頂きますね。」


そう言ってネリーさんは席を立つとギルドの奥へと俺達を案内して行った。ネリーさんの様子から、東門からの報告が入っていたことが察せられた。


奥の通路を進みギルドの裏手に出るとそこは、100m四方の広場が有った、そこでは数人の人物が訓練をしていたが今回の俺達には特に用事がある訳でなく、その広場に併設されている大きな倉庫らしき建物へとネリーさんに案内されて行った。


倉庫の前に到着して、扉を開けると小さな部屋となっており、そこでネリーさんから割烹着の様な前掛けと帽子を渡された、中に入るにはこれを着けないといけないらしい、前掛けを着けて中に入っていくが・・・、フィーはともかく良く俺のサイズに有った前掛けがあったな・・・。後で聞いてみたがドワーフ族の職員もいるためとの事だった、なるほど道理で丈は合ってたが胴回りがぶかぶかだった訳だ。


中はかなり広く高さもありちょっとした学校の体育館ぐらいの大きさが有った、その中に幾つもの作業台が置いてあり、そこでは職員が何かの獲物の解体を行っている姿があった。


入って来た3人に気づいて一瞬こちらを見るがネリーさんの姿を見るとすぐ作業を再開していた、大型の獲物の買取などもそれなりにある為いつもの事と思ったのであろう、決してネリーさんにサボってると見られたく無かったのではないはずだ、だよね?


「それではこちらの台に出してもらえますか。」


そう言ってネリーさんは一つの台を示す、俺はそれに頷くと種類ごとに薬草を出してゆく、次々と出される薬草に最初笑顔だったネリーさんも、山の様に積まれた薬草達をみて、口元をひくつかせていた、一様これでも半分なんだけど、黙っておくか・・・。


その後グラスラビットを3匹出し、その段階で台が一杯になってしまった。


「ええと、後はフォレストボアが残っていますがどうします?」


と、一杯になった台に目を向ける。


「あ、ええと、そ、そうですね、ではこちらの台へとお願いします。」


そう言って、隣の台を指示した、少し動揺している様だが大丈夫かな、これからが本番なんですけど・・・。


指示された台へと最後にフォレストボアを出すと、ネリーさんは目を見開いて驚いていた、報告で聞いていたのと、実際にその目で見るのとではやはり違うのだろう、解体作業をしていた職員たちもフォレストボアのその大きさに驚いている様だった。


「まさか、これ程の大きさとは思いませんでした、しかし、これは・・・、私では査定が出来かねますね。」


さすがギルド職員なのか、直ぐに気を持ち直すとフォレストボアを見て、そう告げて来た、ええと、もしかして買い取ってもらえないとか? 


「これは、確かに今まで見た事のない大きさのフォレストボアだな。」


うお! びっくりした、突然俺の後ろから発せられた声に思わず驚いてしまった、そちらを見てみるとそこには30歳後半位の一人の男が立っていた、身長は180位だろうか、体つきも良く鍛えられた引き締まった体付きをしていた、ただその顔には爪痕の様な大きな傷があり、暗闇で見ると子供が泣き出しそうな位の迫力があった。


「あ、副支部長、丁度良い所に、このフォレストボアなんですが、これだけの大きさの物は今まで扱った事が無くて、私では査定額を決められなくて困っていた所なんです。」


え? この人副支部長だったの? 一瞬どこの組織の刺客かと思っちゃったよ、気配もなく後ろに立つんだもんな。


「このフォレストボアは坊主が倒したのか?」


フォレストボアを見ながら副支部長が聞いて来たが、おおぅ、坊主だと・・・、子供扱いはまあ実際子供だから仕方が無いとしても、ちゃんと男と認識してくれるとは、この副支部長は良い人だな、うん。副支部長は俺の中で良い人認定されたのだった、フィーは後ろで坊主じゃなくリュシル様ですとか呟いていたが・・・。


「ええ、何とか皆と協力して倒しました。」


「ほう、なんとかね・・・。」


副支部長はフォレストボアの首の斬り跡を見ながら含むように言ってきたが、良い人認定しちゃった俺にとっては些細な事だった。


「と、悪いな俺はアジールと言うここのギルドの副支部長をやっている。」


「リュシルです、こちらは、フィーリア。」


とお互いに挨拶を交わすと、その後アジールさんはフォレストボアを見ながらネリーさんと話し合っていた。


その後話が終わったのかアジールさんがこちらへとやって来た。


「あ~坊主、このフォレストボアだがな銀貨90枚で買い取らせてもらおう、どうだ?」


え? 今なんて言ったの? たしか銀貨90枚って言って無かったか? 俺は一瞬聞き間違えたのかと思ったが、どうやら本当の様だ、確かフォレストボアの相場は銀貨10枚程度だった筈だ、予想では銀貨30~40枚位になれば良いと思ってたのだが、予想以上の金額になった。


理由を聞いてみたが、フォレストボアは大きい物ほど肉の味が良くなるらしい、それに、傷らしい傷も首だけと状態がかなり良くその皮も色々と使い道が有るのだそうだ、後、一番の理由は3mのフォレストボアは今までに見つかっておらず、生態調査用の資料としての価値が高いとの事だった。


そう言う事ならと二つ返事で了承をするのだった。その後、他の素材の査定はネリーさんが行い、そちらも、銀貨30枚となった、こちらは数が数だったから納得の金額か。


「こちらが報酬の銀貨120まいです。」


そう言ってネリーさんは、銀貨の入った袋を手渡して来た、俺達が今居るのはギルド内にある会議室の一つだ、フォレストボアの情報の詳細を確認するためと、金額が金額なため窓口で渡すとそれを知った周りの者から要らぬちょっかいをかけられるのを避ける為らしい、流石はギルドの職員さんか細かい所に気が回るものだ。


「では、私は他の仕事もありますのでこれで失礼しますね、この会議室はもう暫く使えるように申請しておきますのでゆっくりしていってくださいね。」


ネリーさんは手をふって会議室を出て行ったが、まあ、孤児院へ向かうまでもう少し時間があるから、今のうちにフィーに報酬の分け前の話をしておこう。


「今貰った報酬の分け前の話だけど、まず二人で採取した薬草とグラスラビットの分で、銀貨15枚これがフィーの取り分ね。」


と、フィーの前に銀貨15枚を置く。


「えっと、このお金はどういった意味でしょうか?」


フィーはきょとんとした顔をしながら俺に聞き返して来た。


「え? だから、薬草とグラスラビットの報酬銀貨30枚の半分がフィーの取り分なんだけど・・・、何か変だった?」


あれ? 俺って何か変なことしたのかな? 報酬の半分を渡しただけなんだけど? 俺の方が疑問符が浮かんでいるんだけど。


「え、あの、フィーはリュシル様の従者なんですから、報酬は全てリュシル様の物ですよ?」


おおう、従者ってそう言うものなの? でもそれだと俺の気が済まないのでフィーには受け取ってもらわなければ。


「せっかく二人で一緒に採取して貰った報酬なのに、二人で分け合って喜び合いたかったんだけど・・・、フィーはそう言うの嫌なのかな・・・。」


「いえ、あの、そ、そんな事無いですよ? わあ、こ、これがフィーの取り分なのですね嬉しいなぁ。」


俺が悲し気な顔で言うと、フィーは慌てふためきながらお金を受け取ると棒読みで嬉しがっていた、俺はその様子に内心で苦笑しながら。


「そうだよね、フィーも喜んでくれたみたいで良かった。」


そう言ってニッコリと微笑むのだった、フィーは「あぅ、その微笑みは反則ですぅ」などと呟いていたけど。


これでフィーに受け取らせる事には成功したと、そして次回からも受け取らないといけなくなった訳だ、くっくっく。


「そのお金はフィーの物だから好きなように使って良いんだからね。あ、フォレストボアの報酬分は後で分けるからちょっと待ってね。」


「はい、大丈夫です。」


まあ、フォレストボアの報酬については考えがあったから待ってもらう事にした。


と、そろそろ良い時間かな?


「そろそろ、孤児院へ向かおうか。」


「っ! はい!、よろしくお願いします。」


フィーにお願いされちゃったな、では早速向かうとしましょう。


会議室を出て、受付でネリーさんにお礼を言ってギルドを出ると、孤児院へとむかのだった。






読んで頂きありがとうございます。

更新が遅くなりがちで申し訳ないです。


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