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底辺召喚術師のシュウカツ事情  作者: なおさん
第1章
11/34

フィーと一緒に狩りをしてみる



ここ、クロノーツ領は南側を大きくて険しい山脈に覆われ、その山脈を背に扇型に広がる街並みをしている、山脈側の丘の上に領主の館が有り、そこから、東と北西へと向かう大きな通りが伸びそのまま街の外へと続いていた、街の外周には大きな石壁が有り、東と北西それぞれに大きな門が存在していて、街に出入りする者はそこでチェックされて、手続きを行う事により出入りが許可されるのだ。


東門へと到着した俺とフィーは門の脇にある建物へと向かう、ここで外に出る許可を貰う訳だ。


建物の中は、入る側と出る側に分かれており、出る側には、数組の冒険者風の者が居るだけで入る側には人影は見えなかった、北西にある王都方面へ向かう門とは違い東門の先には、草原地帯の向こうには大きな川を挟んで魔物の森が広がっている為に狩りをする者や魔の森に用がある者ぐらいしか東門を使う者は居ないからだ。


先にいた冒険者風の者達も出て行ったため、フィーと共に受付へと向かいギルドカードを渡す、カードを受け取った職員はそのカードを受け取ると横にある機械へとカードを通した。


「おや? このカードを使って初めて外に出るのですね、少し説明がありますがよろしいですか?」


俺はその言葉に頷く。


「でわ、この街から外に出る時には関係無いのですが、逆に入る時には税として、銀貨1枚必要になります、しかしこのカードをつかえばそれが免除されます、ただし、この街のギルドを拠点として登録してある場合に限りです、他の場所のギルドに変更してしまうと、銀貨1枚が必要になるので注意してくださいね。」


「はい、手続き終了です、ここを出ると暫くは草原地帯ですがその先の大きな川を越えた先は魔物の森となるので、十分注意してくださいね。では、いってらっしゃい。」


俺はその言葉に、頷き「いってきます。」と答えた、その様子をみて、職員は優しく微笑んでいた。


フィーの手続きも終わり一緒に門の外に出ると、そこは一面の草原地帯だった、俺の頭位の高さの草が生えていてちょっと歩きにくそうだった。


道沿いに暫く歩き門が見えなくなった辺りで、物は試しと魔力感知を使って見る、まあ、道の傍だから何も無いだろうと思ったが、他の草花よりも少し大きめの魔力反応を見つけた。


その場所へ草をかき分け進むと、他の草とは明らかに種類の違う草があった、それを見たフィーが「これは鎮静剤などに使う薬草の一つですね、よく見つけられましたね。」と、感心していた。


「ん~試しに魔力感知を使ってみたんだけど、この草が他の草よりも魔力が多い反応をしてたんだ、他にも幾つか、大きめの魔力反応があったから、もしかすると、薬草に使える草は、含む魔力が大きいのかも知れないね。」


そう言ってフィーに説明しながら、他の場所も見てまわると、予想どうり、同じ薬草が見つかった。どうやら、間違いない様だ、これは、薬草の採取がかなり楽になりそうだ。


フィーの方もまだ範囲は狭いが魔力感知を使い薬草を集めていく、どうやら、フィーの魔力感知は範囲は狭いが魔力の量だけでなくその形状まで分かるようだった、やはりフィーは感知能力に優れている様だ。


その時俺の魔力感知に一際大きな反応があった、しかも動いている事から生き物の様だ、そちらへとゆっくり進んで行くと、フィーの魔力感知でも確認が出来たようで、それが、グラスラビットかも知れないとの事

だった。


グラスラビットは、体調1m程で、ここでは一般的に食べられていて食肉用として狩られている魔物ではない普通の動物である、臆病な性格なので、草に隠れて移動するため、素人にはなかなか見つけられないのだ。


俺は、グラスラビットを試しに狩ってみる事にした、気づかれない様に風下からゆっくりと近づき風の動きに合わせ、音がばれない様に動いてゆく、そして、視界に入ったグラスラビットを見て思わず、うさぎ? と心の中で呟いていた。


確かに顔と耳を見る限りはウサギなんだけど、その後ろ脚が妙に大きく後ろ脚だけで自立していたシッポもなんかネズミっぽかった。あのもこふわなシッポはどこいった!


気を取り直して、ショートソードを構える、このショートソードは父さんが護身用にとくれた物だが、積極的に使わせてもらおう。


そして、魔力強化を発動して一気に飛び出す、その動きにグラスラビットが気づいた時には既に遅く、俺はグラスラビットの背後から、その首へと剣を振り下ろし次の瞬間には、グラスラビットの首が胴から離れ宙を舞っていた。


グラスラビットの胴体は首から大量の血を吹き出しゆっくりと地面へと倒れ暫く痙攣をした後動かなくなった。


それを後ろで見ていたフィーは驚いていた様子だった。


「リュシル様はグラスラビットの狩りの経験があるのですか?」


「あ~グラスラビットでは無いけど、転生前にちょっとね・・・。」


転生前に軍の訓練で、ナイフ一本持たされて、密林の中に一人放り出された事を思い出していた。あの時はこんな訓練何になるんだと思っていたが、ここで役に立つとはね。


それにしても、フィーは今のこの状況を見ても怖がったりしないんだな。


「そんな事より、フィーはこう言うのって平気なの?」


今更だけど聞いてみた。


「はい、従者としての、訓練で何度か狩りに参加していましたから。」


おおう、従者ってそんな事までやるのか。まあ、それなら、フィーにも魔力強化の訓練がてら狩りに参加してもらうか、そうして、薬草などを採取しつつ、見つけたグラスラビットを狩って行ったのだった。


「リュシル様そろそろお昼になりますがどうします?」


丁度6匹目のグラスラビットを狩った後にフィーが言った。


もうそんな時間か、しかし・・・、グラスラビットの首を斬り飛ばした直後にお昼の話をするとは、フィーリア侮れない娘。


「じゃあ、これの血抜きが終わったら、お昼にしようか?」


「はい」


そう言って血抜きが終わったグラスラビットを収納庫に仕舞って、何処かお昼を食べるのに良さそうな場所を探す、丁度地面から大きな岩が突き出た場所を発見、魔力強化で飛び乗ると腰を落ち着けられる丁度良い場所を発見した。


そこに収納庫から、大きなバスケットを取り出す、これは、今日のお昼用にと、フィーが用意していたものだが、最初フィーはこれを手で持って行こうとしてたんだよな、俺が持つって言っても譲らなくってさ、収納庫の事と、そこに仕舞うと出来立ての美味しい状態を維持できるからと何とか説得したのだった。


俺は、収納庫から下に敷く大きめのシートを取り出し地面に広げるとその上に座る、フィーはバスケットから作り立てのバゲットサンドを取り出し並べると、温かいスープをコップに注いでそれも並べて行った。


そうして、二人でお昼を食べるのであった、バゲットサンドの具はレタスの様な物とトマトの様な物をスライスした物と焼いた肉を薄切りにして甘辛いたれで和えた物をサンドしたものと、卵焼きをサンドした物、ソーセージをサンドしたものなど、色々と楽しめた。


それらを一気に平らげた後、「あー美味しかったー。」と言った時のフィーの嬉しそうな顔は、見ているこちらも笑みがこぼれてしまう程だった。


食後の香茶を飲みながら、草原を渡る風を体に感じて、しばしゆったりとした時間を過ごす。


そうして、この後どうしようかと考えを巡らせる、ふと、遠くに魔物の森が見えたが、川の手前にも、小さいながらも(魔物の森と比べたので小さく見えた)森が広がっているのが見えた。


「ねーフィー、魔物の森の川の手前にある小さな森だけど、あそこには魔物は出ないんだよね?」


「はい、手前の森には、魔物は出ないと聞いております、それに、定期的に警備兵の訓練も兼ねて巡回しているそうですから危険は少ないかと、ただ、野生の動物でも、気性の荒いものは居ますので、注意は必要です。」


ふむ、それなら、午後は手前の森へ行ってみるか、薬草なんかも沢山採取出来そうだしな、魔力感知と言う裏技もある事だしな、くっくっくと少し悪い顔をしてみる。


その後片づけをして、森に向かうと10分程で森の目の前に到着した、多分普通に向かったら急いでも30分以上かかるんじゃ無いかな? 俺とフィーには魔力強化があるから1/3程で到着出来た訳だ。


早速魔力感知を使ってみると、おお、一杯反応があるぞ、そこは薬草の宝庫と言える程だった、色んな種類の薬草が生えていた、それをフィーと採取していく、他にも薬草以外の魔力の高い木の実など色々と採取していく、今後の事も考えてある程度残しながら採取していったがそれでもかなりの数が採取出来た。


そうして、暫く森の中を進むと魔力感知に一際大きな反応があった、それは、グラスラビットの数倍の大きさの反応があった、フィーにその事を伝え慎重に森の中を進んで行く。


「リュシル様、これは・・・、フォレストボアでは無いかと・・・。」


どうやら、フィーの魔力感知の範囲に入った様で、その姿形からフォレストボアだろうと少し頬を引き攣らせながら教えてくれた。


あ~フォレストボアか・・・、確か聞いた話だと、大きいものは体長2m程に達し、酷く気性が荒いらしく自分の縄張り入って来る者は問答無用で襲ってくるらしい、森の暴走車とも呼ばれている。


しかし、魔物では無いんだよな・・・、もしこのフォレストボアにてこずる様なら、魔物討伐は難しいだろうな・・・、そう考えるも、フィーもいるので余り無茶はしたく無いとも思い、一度様子だけでも見てみようと言う事でフィーにも納得してもらった。


慎重に歩を進めて、フォレストボアが見える位置まで移動して、茂みの陰に隠れるようにしてして様子を伺う、俺が最初に思ったことは、でかい! だった大きくても2mって聞いてたけど、あれ、3mはあるんじゃね? フィーも顔を強張らせていた。


そのフォレストボアは木の根元を一生懸命に掘り起こしている所だった、何をしているのかな? と様子を伺っていると不意にフォレストボアは動きを止めて、辺りを伺う様に鼻をひくつかせていた、一瞬見つかったか? と思ったが風下に居るのは間違いないため、息を殺して様子をを伺っていると。


ガサガサっと音がして一人の女の子が丁度フォレストボアを挟んで反対側の茂みから出て来た処だった、その女の子はフォレストボアを見た瞬間に固まってしまい、そして、ブモォ! と言うフォレストボアの叫びを聞いてその場にへたり込んでしまった。


ちっ、と俺は舌打ちをして魔力強化を発動させ、茂みから飛び出すと、三角飛びの要領で側面に有る木を足場として蹴り、女の子に向かって突進していくフォレストボアの側頭部を思い切り殴り飛ばした、その行為によりフォレストボアは進路がずれ、女の子の脇を通り過ぎ近くの木へ頭から突っ込んで行った。


そして、女の子を庇う様にして立ちフォレストボアの様子を伺う、そこでは、ぶつかった木が根元から折れメキメキと音を立てて倒れて行く姿が有った、そして、頭を振りながらゆやらりと立ち上がるフォレストボアの姿が有った。


女の子はまだ何が起こったのか理解が追い付いていない様だった、立ち上がったフォレストボアは、憎々し気な目で俺を見ていた。


「フィー、彼女を頼む。」


その声にフィーは頷くと女の子を軽々と抱えて脇の方へと退避する、それを横目に見つつフォレストボアを見ると、ブモォ!と叫びをあげて俺に向かって突進してきた、その様子をみた女の子は俺が吹き飛ばされるなり、踏みつぶされるなりを想像したのだろうギュッと目を瞑って顔を背けていた。


だがそんな俺は、魔力強化によって上がった身体能力により、フォレストボアを見ながら、内心で あれ?なんか遅くない? と呟き最小限度の動きで突進を躱しすれ違いざまにその首に剣を叩き込んだ。


流石は3mの巨体俺の剣の一撃では首を両断とまでは行かなかったが脇を通り過ぎたフォレストボアは、そのまま木に激突した衝撃で頭が千切れ飛びその生を終えたのだった。


俺は剣の血糊を振り飛ばし鞘に納めると、フィーと女の子のいる方へと歩いて行く、そこには驚いた表情のフィーと俯いたままの女の子がいた。


「大丈夫? 怪我はしてない?」


その声に女の子は恐る恐る目を開き顔を上げる、そして、俺の後ろに見える光景にフィーと同じく驚きの表情を浮かべていた。


「フィーも大丈夫? 怪我とかしていない?」


その声に我に返ったフィーは、すっと立ち上がり「はい、問題ありません」と一礼を返して来た、俺はそれに苦笑いを浮かべるのだった。


「フィー?」


そう呟き、女の子はフィーの方を見ると、暫くの間フィーの顔をじっと見つめ。


「もしかして、貴女はフィーリアなの?」


と恐る恐るといった様子で呟いた。


「どうして私の名前を?」


フィーが小首を傾げるが。


「やっぱり、フィーリアなのね! フィー会いたかった!」


そう言って、女の子はフィーに抱き着いた。


おおう、なんだか展開に付いていけない俺と困惑の表情を浮かべるフィーがそこにいた。


「フィー覚えて無い? 私よローリエよ。」


抱き着いていた手を放しフィーの両肩に手を乗せその顔をじっとみつめて、女の子ローリエは言った。


「え・・・、ローリエ?」


フィーも昔を思い出すかの様にそう呟いていた。


「そう、ローリエよ、あれから5年も経つから大分変ったでしょ? 私も最初はフィーだと分からなかったもの、でも良く見ると昔の面影があったから。」


そう言ってローリエはフィーに向かって、笑顔を向けるのだった。


「そんな・・・、ローリエ、私も逢いたかった。」


そう言うと、今度はフィーがローリエに抱き着き泣き出してしまった。・・・、俺だけ展開に付いていけてない?


そんなフィーをローリエは優しく抱きしめて頭を撫でてあげるのだった。おれ・・・、忘れられてるっぽい・・・。


暫くそうしていた二人だったが。


「えーと、そのー、フィー? あの子はそのままにしてていいのかな?」


ローリエの言葉に、フィーは俺の方を向き慌てだした、そうそこには、体育座りのまま、横にコロンと寝転がりぶつぶつと何かを呟く俺がいたからだ。


「リュ、リュシル様!? ご、ごめんなさい、その、小さいころに一緒に育ったローリエと久しぶりに会って嬉しくなってつい・・・。」


「ふーん、いいんだー、フィーにとって僕なんてその辺の石ころとおんなじなんだろー。」


「あわわわ、そんなとんでもない、フィーにとってリュシル様はかけがえの無い存在ですから、私の全てですから、太陽ですから、天使様、いえ女神様なのですから」


う、うぃ、そこまで言われると流石に恥ずかしいです・・・。でも何で最後女神なんだろ・・・?。


「じゃあ、今度晩御飯にフィーの手料理を食べさせてくれる?」


「そんな事でしたら、もう、毎日だって作りますから、ですから、機嫌を直してくださいリュシル様~」


「なら、許してあげるよ。」


そう言ってニッコリと微笑むのだった。


「ふふ、フィーも元気そうで何よりだわ。」


そんな俺たちを見て、ローリエはクスクスと笑っていた、あちゃーまたやってしまったか・・・、俺もフィーの事言えないな・・・、フィーも真っ赤になって俯いていた。


「そんな事より、フィーこの人の事ちゃんと紹介してくれるのよね? たぶん、私は命を助けられたのよね?」


最後疑問符になっていたけど、まあ、後ろの状況を見るとね。


「そうでした、こちら私の主のリュシル様です、そして、こちらが小さいころに孤児院で一緒に育ったローリエです。」


フィーがそれぞれ紹介していく。


ローリエは、髪は赤いロングの髪を頭の後ろで束ねていた、所謂ポニーテールと言うやつかな。目も髪と同じで赤色をしており、顔は少しそばかすが残っていたが目鼻立ちは整っており、おねーさんと言う雰囲気をしていた、身長もフィーより頭一つ高かった、歳はフィーより一つ上との事だった。


「リュシルです、よろしくお願いします。」


と言って手を差し出すと。


「ローリエです、こちらこそ、助けていただきありがとうございます。」


少し驚いた顔をして、その手を握り返し、お礼を言ってきた。


「所で、ローリエさんはどうしてこんな所に?」


疑問に思っていたことを聞いてみる事にした、フィーもうんうんと頷いていた。


「あ、そうでした、実は、孤児院の子が風邪をひいてしまって、風邪自体は治ったんですけど、何か滋養に良い物をと思って、長芋を掘りに来たのですけど・・・。」


なるほど、その途中で運悪くフォレストボアに出会ってしまったと、フィーは何かを訴える様に俺の方を見て来たけど、ああ、分かってるよ。


「それなら、僕たちもお手伝いしますよ。」


「で、でもそんな悪いですし・・・。」


俺の言葉にフィーはぱぁっと明るい笑顔を見せ、ローリエは申し訳なさそうな顔をしていた。


「気にしなくて良いですよ、僕たちも森に色々な薬草を採取に来ていたので、そのついでですよ、それに、フィーのご友人の為なら、これぐらいどうと言う事無いですから。」


そう言って、ニッコリと微笑んだ。


「!? これは・・・、フィーが心酔するのも頷けるわね。」


その言葉に、フィーは取っちゃだめだからねと呟きローリエに訴える様な目を向けていた。え? 長芋取っちゃだめなの?


「それで、実はここが、去年たまたま見つけた長芋の群生地だったのだけど・・・。」


周りを見渡すと、木の根元があちらこちら掘り返された跡が有り、恐らくこのフォレストボアが掘り返して食べてしまったのだろう、それで3mまで育ったと・・・。


どれだけ滋養高いんだ、その長芋・・・。


だが、たしか最後に掘っていた場所あそこならもしかして、そう思いその場所へと向かいその穴を覗き込むと少し食べられてしまったが、長芋の一部が見えていた、そっと、周りの土を掘り起こしていくと50cm程の長芋が取れた。


おれは、その含む魔力の多さに驚いた。ローリエにそれを見せると、一瞬喜んだ顔をしたが、直ぐに暗い顔に戻ってしまった、フィーがどうしたのか聞くと。


「確かに、風邪を引いた子だけなら、それだけの量でも十分なんですが、その子だけにと言う訳には行かなくて、その、他にもお腹を空かせた子がたくさんいて・・・。」


とローリエは悲しそうな顔をしていた。それなら、グラスラビットの肉でもどうかと思ったが、その子だけが長芋を食べると、他の子が拗ねてしまう訳か。


ふむ・・・、俺の魔力感知では、地面の中までは流石に分からないからな・・・、でも、待てよもしかしたフィーの魔力感知ならいけるかもしれない、実物があるのなら、その魔力に集中すればあるいは・・・。


「フィーちょっと良いかい?」


フィーを呼んでその事を話してみると、フィーもローリエの為ならやってみると言ってくれた。


先ずは、フィーに掘り出した長芋を持ってもらい、その質感や手触りなどを確認しえもらう、そうして次に、少しかじってもらい、その匂いや味舌触りや噛みごたえなどを確認してもらう、なぜこんなことをさせるのかと言うと魔力探知にもイメージが大切であり、実物を正確に思い描くには実際に味わって見る事も必要なのだ。


しかし・・・、なぜだろう、確認しているだけなのに、何故かフィーがそれをやる姿は、妙に艶めかしかった、ローリエなどは、ゴクリと喉をならし、「フィーリア侮れない娘」などと呟いていたが・・・、俺も5歳児の体でなければ危うく反応してしまう所だったであろう。


確認が終わったのだろうフィーがこちらを向くとそこには、頬を染めて、何処か明後日の方向を見ている二人がいた、当人は何があったのかしら? と首を傾げていたが。フィーリア侮れない娘。


フィーは長芋を握り締め目を閉じて集中していく、そして、魔力感知を発動させた、そうして、暫く待っていると。


「見つけました・・・。」


とフィーが呟くのを聞いた。


その場所へと3人で向かう、もちろん、フォレストボアは俺の収納庫に仕舞ってある、ついでに折れた木も同じく仕舞っておいた。


その場所は先程の所から50m程移動した場所、フィーの感知範囲ギリギリの所だった、その木には先程見たのと同じ蔓が巻き付いており、それが木の根元から伸びていた。


その根元を3人で掘って行く、途中で折らない様に慎重に周りの土を取り除きながら掘り進めていく、そして掘り出された長芋をみて、ローリエは感嘆の声を上げた。


「凄い、なんて立派なのかしら」


その長芋は長さが1.5m程で、さっき手に入れた、長芋より一回りは太かった。


「これだけの大きさなら、十分皆に行き渡るわ。」


ローリエは土で汚れるのも気にせづに嬉しそうにその長芋を抱きしめていた。


そんなローリエを見てフィーも嬉しそうにしていた。


その後は少し時間は早いが、街へと戻る事にした、あんな事があった後にローリエを一人で帰すのもどうかと思ったからだ、本人は大丈夫と言っていたが今は近くに俺たちが居るから良いが一人になった時に恐怖が蘇るかも知れないからね。


それに、フィーもローリエと話している内に暫くぶりに院長に会いたいと言っていたから、ローリエをお届けついでに孤児院へと向かう事になったのだった。





読んで頂きありがとうございます。補足ですが、フィーリアさんの戦闘スタイルは両手ナイフによるものになります。本文中に表記が無かったので・・・。

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