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3-4 皇帝

粗削りの鰹節。

週末辺りにちゃんと推敲しよう。


機械の人間になりたいと思ったことあります。

 「お前生きてたのか!」

 「まぁ、ね」


 ラルドが車を降りたつくしに近づいて、何時ものように背中を叩いてくるのを鬱陶しそうにはねのけながらつくしは懐かしんだ。

 なにも言わずに飛び出してきたのだ。

 思えばそれから一月ほどは経っていた。

 いくら風来坊の冒険者とは言え急に居なくなったら心配するだろう。


 「てっきり魔物に食われて死んだものだと……」

 「勝手に殺すな」


 ふざけた調子で言うのを見てラルドが心配など微塵もしていなかったようだと知ったつくしは、変に思い詰めて損したとため息をついた。

 そして「お互い死ぬようなたまじゃないか」と、つくしたちは顔を見合わせて笑った。


 「そいでそっちの小さいのは?」


 先程から視界の隅にチラチラと映っていた、ラルドの足元にいる小さな魔導人間を見る。

 

 「あぁ、なんかお偉いさんの子どもとかで世話を任された」

 

 すると、迷惑そうな顔でラルドはぼやく。


 「その魔導車、珍しい型ですね! 乗ってみたいです!」

 「え?」


 突然、その魔導人間の子どもが目を輝かせてお願いしてきた。

 そしてそれをつくしと一緒に呆けて見ていたラルドがはっと何かに気が付いた様子で口をはさむ。


 「……そうだ! レンタルでもしたんだろ? 乗せてってくれよ! 俺とお前の仲だろ?」

 「……」


 必死に頼み込むラルドの姿からは、つくしを巻き込んでやろうという気が透けて見えていた。

 

 「お暇でしたら街を案内しましょうか?」


 魔導人間の子のその言葉で連れていくことを決めた。




   ―――――――――――――――――――――――




 「で、何で一介の冒険者ごときがこんな場所にいてこんな大層な役を任せられているんだ?」


 結局つくしは仕方なしにラルドも車に乗せ、街の中をゆっくりと進んでいた。


 「マシン帝国が滅びてグルマン帝国になったのは知っているか?」

 「あぁ」

 「その知らせが王都に届いたのが一月ほど前。そっから俺はグルマン帝国に向かう使節団の護衛の護衛として付いてきてここにいる。んでこのどっかの坊っちゃんが庶民の話を聞きたいとかで、騎士様に押し付けられてこうして子守りという訳だ」

 「護衛の護衛って……」

 「まぁ、捨て駒さな。安全とは限らない場所に行くんだ。格式ある騎士様は失いたくないんだろ」


 それがわかってて来たということはつまり――。


 「金払いが良かったんだな」

 「そう言うことだ」

 

 その性格は相変わらずであった。


 「俺も聞きたいことがいくつかあるんだが……まずその二人の嬢ちゃんは何だ? 若奥様か? んん?」

 「いやいや、違うよ。いろいろ訳あって一緒に旅してる仲間だよ」

 「へー……。ほーん……」


 どうやらツクシの言葉を信じていないらしいラルドは、人見知りをするのか後ろの席に詰めたまま戻ってこないフィーアとテトラをねっとりと見る。

 彼女たちはその視線を受けてもっと縮こまった。


 「視線が気持ち悪いんだよおっさん」

 「あだっ!」


 その視線が何となく気に入らなかったつくしはラルドの頭の上からたらいを落とした。


 「お二人は仲がよろしいんですね」

 

 魔導人間の子がつくしとラルドを見て笑う。


 「そう言えば名前は? 僕はつくし」


 ラルドの方に気をとられ、その子の方に全く意識を削いていなかったことに気がつく。

 案内してもらうのだから名前くらいは知っておいた方が良い。


 「私はジグ。今日一日よろしくお願いします」

 「よろしく」

 「所でこの魔導車は何処で手に入れられたのですか? 見たことありません」

 「あー……これは知り合いに借りたものでよくわからないんだよ」


 流石に自分で作ったと言うのはまずいと思ったつくしは適当な理由をつけてごまかす。

 するとジグは一瞬鋭い目をした気がしたが、すぐに無邪気な雰囲気に戻った。


 (機械の国にいるんだから好きなのかな。魔導車)


 乗りたがったところなどから、その少年は無類の魔導車好きとつくしは思う。


 「それじゃ、案内している間に旅の話でもしてください」

 「まぁ、それくらいなら……」


 案内の代価としては安いものだろう。

 適当に切り貼りしたテトラやフィーアとの出会いを話ながら、案内された街は滅んで再建されたとは思えないほど安定しており、栄えていた。

 魔導人間が街を闊歩する様は不気味だったが、馴れたら風景の一部としてみられるようになってきていた。


 「まさかラルドがいるとはなぁ」


 しばらく街を案内されながら話をしているとすぐに空が赤くなり、ラルドとジグと別れてつくしたちは宿を探していた。


 「誰っすか? あのヘラヘラしたの」

 「何となく気持ち悪かったです」

 「昔の悪友でね……」


 散々な評価のラルドに同情はせず「まぁ、そうなるな」と思いながらもう一人の黙ったままのただの箱と化したCA-37に話しかける。


 「宿の場所ってわかる?」

 「……」


 しかし、返事はない。


 「……あれ? 魔力切れか?」

 「魔力切れです」

 「切れてないじゃないか」

 「魔力切れです」

 「……」


 どうやら拗ねている様子のCA-37に今度はつくしが言葉に詰まった。


 「街の案内でしたら私がやりましたのに」

 「あぁ……その、なんかゴメン」


 つくしはちょっと悪いことをしたなと思い謝ると、CA-37は少し不機嫌に宿を案内してくれた。




   ―――――――――――――――――――――――




 夕闇のなか、王国からきた冒険者と別れた一人の魔導人間がぶつぶつと呟きながら道を歩く。


 「なんか面白そうなのが来てるな。何者なのだあの人間は……」


 彼が歩くのは町の中心にある巨大な黒い塔の中。


 「……私の知らない魔導車をもつ者……ツクシは……」


 魔力が渦巻く国の中枢だった。

拗ねた箱かわいい……。

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