2-8 終わって始まる物語
本日2話目投稿。
ほんとにこれで2章は終わりです。
「それで、これからどうするか決まった?」
「……わかんない」
つくしたちはフィーアの家に戻っていた。
あの一連の騒動の後どうなるか行く末を見ていたのだが、もともと恐怖の対象として見られていたこともあり、魔女を軽視するのは間違いだったと考えが改めらた。
そして毎年この日にここメイロゥの町では魔女の霊を沈める『魔女の森鎮魂際』を開催することが決まった。
自分を祭られるようなものであり、恥ずかしがるフィーアの姿はつくしの記憶にしっかりと刻まれている。
「お母さんだったら何て言うかな」
フィーアは青い花が咲き乱れる中心に置かれた、一つの大きな石に向かって問いかける。
それは彼女の母親の墓。
彼女自身がその手で埋葬した場所だ。
「よくやったっていうんじゃない?」
「ううん。えらいねって言う」
「そう……」
読みが外れて哀愁を漂わせるつくしをよそに、フィーアは目の端から落ちる涙を袖で拭った。
「お母さん、私、これからどうしたらいいかな」
その問いかけに反応したのはテトラだった。
「フィーアちゃんは甘いっす! それは自分で決めることっすよ!」
「テトラちゃん……」
「フィーアちゃんは私たちと一緒に行きたくないっすか?」
「そんなことっ……!」
迷っていた。
この思い出のつまった場所を放棄して出ていって良いのか。
お母さんが寂しいのではないか。
悲しむのではないか。
「フィーアちゃんはいいっすよ。私はお母さんの顔も知らなくて、どこに寝ているのかも知らないっすから」
「……テトラちゃんは強いよね」
「私にはおねえちゃんたちがいてくれたから……お別れを言えるのは幸せなことっすよ」
「そう、だね」
テトラの言葉には重さがあった。
それはささやかな幸せを知っているから言える事だ。
こんな幸せな出会いはもうこの先ないだろう。
そして、自分の知る母親ならきっとこう言う。
『いってらっしゃい』
と。
だからフィーアは答えた。
「いってきます」
今まで自分を守ってくれていた暖かな家に別れを告げる。
母親の墓に植えた青い花が笑っている。
そんな気がした。
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「なんなのそれ……」
つくしがジープを出したのを見て、フィーアは改めて愕然とした。
「最初っから食事をどこからともなく出したり私の魔力吸ったりめちゃくちゃな奴だと思ってたけど……なにこれ……」
「なにこれって魔導車? ってやつだよたぶん」
「いや、そうじゃなくて! どっからこんなでかいのだしたの!? 無理でしょどっからだすにしても!」
「魔法でこういうのない? 異空間だす的な」
「あるわけないでしょ!?」
「そっかぁ」
魔法使いの本職ともいうべき魔女がそういうのだ。
異空間収納的な魔法がないと知ったつくしはさすがにごまかしきれないと思って打ち明けてみることにする。
「僕は異世界人って言って信じる?」
「異世界……人? ほんとなの?」
「本当でなんかこっちの世界に来た時にこのしおりの付いてくる特殊能力を貰ったんだ」
「何それずるじゃない!」
「そうはいっても君と同じようなものだと思うんだけどなぁ……」
「む……確かに」
フィーアはつくしが異世界人であることを信じたかはわからないが納得はしたようだ。
一方、テトラは首をかしげてわかっていない様子だったがなんだったにしろどうでもよさそうだ。
「まぁ、いいじゃないかちょっと不思議なことがあったって」
「そうね。気にしてもしょうがない」
世の中わからないことだらけだ。
一つ二つ増えたところでどうという事ない。
こんな不思議な出会いがあるのだ。
たまにはわけのわからない不思議も良い。
それに――。
「外に出たらいるかもしれない自分と同じ境遇の人たちに教えてあげるんだ。あなたは一人じゃない。わかってくれる人がいる。世の中はたくさんの不思議であふれていて、普通の人とも仲良くできるんだって」
フィーアはいつの間にか人と話すことにも慣れて噛まなくなった自分がいたことに気付いてこれも不思議なことの一つだなとテトラに後ろから抱きつきながら笑った。
笑ったその顔はもう普通の女の子だった。
「それじゃ、いくか! フィーア!」
「うん! テトラちゃん! と、ツクシ」
「はいっす!」
「あれ? 僕はおまけ的な? ねぇ」
オーロラの原理なんて普通の人間には解らない。
一体いつどこで知ったのか、たまたまできたのか。
案外、初代魔女も異世界人なのかもしれない。
しかし、それはもう知る由もなく、フィーアの去った家の庭には青い花を携えた粗末な墓がふいに吹いた優しい風の中でただ一つ、静かに佇んでいた。
次は機械の国。
最後のメンバー探しにいこう。
でもまだ書けてない!
明日の投稿はおそくなるかも?