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2-3 犬も歩けば棒に当たる

睡眠時間削れるぅ!

話も大分削ってるぅ!

 テトラが強い。

 それがわかって以降のダンジョンは楽だった。

 道にいたほとんどの魔物をテトラに任せると、彼女は恐れることなく勇猛果敢に挑んでいった。

 1メートルほどの蟻の魔物を――。


 「てりゃー!」


 固い甲殻ごと殴り潰し。

 転がってきたダンゴムシのような魔物を――。


 「ふんっ! うぎぎぎ」


 受け止めて抱えたまま潰した。

 

 「いやぁ、楽しいっすね! ダンジョン!」

 「うんそうだね楽しんでくれて幸いだよ」


 魔物を恐れることなく、アクションゲームのように飛び回り、素手で虫を潰して体を緑色の虫の体液でべとへとにしながら跳ねるテトラにつくしは少し引き気味だ。

 とりあえず虫の死骸は全部倉庫(ストレージ)にしまっておく。

 そしてテトラが無双している間、つくしがやっていたことは――。


 「この果物は食べられるやつだ。あ、こっちの草は薬草のやつかな」


 見覚えのある草をちぎり、冒険者の依頼などで獲得した知識を収集者(コレクター)の本に写して見比べながら採取することだった。

 戦闘面に関しては足手まといなので仕方がない。

 ここまで余裕だと魔物を倒しに行くというよりは実りの豊かな秋の山に入って収穫して行くといった感覚だ。




   ―――――――――――――――――――――――




 しばらく探索した後、つくしたちは暗くならないうちに来た道を戻り冒険者組合で収穫物を精算した。

 採取品の他、倒した魔物のなかで餓の鱗粉と蟻の顎がお金になるようで買い取ってもらった。

 合わせて金貨1枚と銀貨3枚。

 一日の報酬としてはかなりのもの。

 スキルの力と強い戦闘員がいるから成せたことだが、命の危険がなく稼げるのは魅力的だ。

 これは冒険者が集まるわけだった。

 そして、一度甘い蜜を吸うとますます欲が出てくる。

 

 「あの、道から外れて奥のほうまで行っても問題ないですよね?」


 奥に行けば人の手が入っていないお宝が見つかるかもしれない。

 受付嬢に確認を取ると、彼女は笑顔で頷いた。


 「はい。森の中でしたらどこを探索していただいてもかまいませんが、安全の保障は致しかねます」

 「わかりました」


 別に聞かずとも入ってよかったのだが、一応許可は取った。

 これで何を持って帰っても文句を言われることはない。


 「明日は奥の方まで行ってみようか」

 「もっと暴れられるんすよね! 楽しみっす!」

 

 こういう地道なダンジョンも面白いと楽しんでいるつくし。

 すっかり戦闘狂となったテトラ。

 だが、このときはまだつくしたちは気づいていなかった。

 彼らがダンジョンと思っているのが、整備されている安全な道だということに――。




   ―――――――――――――――――――――――




 つくしたちが冒険者組合を去った後、受付嬢は大きく伸びをした。


 「新人への説明は疲れるわ」


 めんどくさいが、ちゃんと説明しないと後で文句を言われたらたまったもんじゃない。

 だから予想以上に稼げて欲張る命知らずにも懇切丁寧に話してあげていた。


 「ねぇ、あの子たち、ここが『魔女の森』って呼ばれてること知らないんじゃない?」

 「あ、そうかも」


 同僚の指摘にしまったと思う。

 この森には魔女がすんでいるとされ、決して魔力濃度の濃い場所には近づいてはいけないという言い伝えがある。

 

 「ま、普通は危ないところに近づかないから大丈夫でしょ」

 「確かに。それはただの命知らずの馬鹿ね」


 わざわざ強い魔物のいる魔力濃度の濃い場所まで駆け出し冒険者がいくとは思わない。

 それに、そうでなくても油断して森の魔物に食われる冒険者の数は後を絶たないのだから、いちいちかまっていられない。

 受付嬢とその同僚は顔を見合わせて笑い、いつもの業務に戻った。

 すぐに彼らのことなど忘れて。




   ―――――――――――――――――――――――




 「いやぁ、やっぱ奥はいい草はえてますわ」


 次の日、つくしはダンジョンの奥で草を抜いていた。

 もちろん雑草などではなく薬草の類だ。

 持ち前の収集癖でひたすら草をちぎる。

 ゲームでよく換金率の高いアイテムを収集していたのでこういう作業は金を拾っているようで好きだった。

 プチゴールドラッシュだ。


 「てりゃー! とぉー!」


 一方テトラは戦闘種族の血が騒ぐのか、相変わらずの無双っぷりで奥地に入って増えた虫の魔物を殴り殺していた。

 さすがに素手はどうかと思い、なにか武器を作るか買うか提案したのだが、素手の方が動きやすいらしくそのままだ。

 昨日買った槍はなんだったのか。


 「ご主人! 木をけったらなんかいっぱい出てきたっす!」

 「ん?」


 珍しく焦った声のテトラが気になりつくしが採取を中断して顔をあげると、そこには真っ二つに折れた大木とその大木から落ちたのであろう5メートルはありそうな蜂の巣(・・・)が落ちていた。

 つくしは忘れていた。

 個の力がいくら強くても――。

 

 「これって……」


 数の暴力の前には無力ということを。

 

 「またかよぉぉぉぉぉ!!」


 巣を壊されて怒った一匹30センチ以上はある蜂の大軍が空気を震わせながらつくしたちに襲いかり、つくしは慌ててテトラを抱えて逃げ出した。

てんどん。

蜂は羽音が苦手。

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