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1-14 100倍返し

カチコミ前のお話とその後!

 時は遡り、つくしたちがハモンド邸から走り去る数十分前。

 彼らはハモンド邸の裏手でこそこそしていた。


 「しおり、周囲に目はあるか?」

 「マスター、確認できません」

 「よし、作戦を決行する」

 「了解(ポニョ)


 しおりの手にはラジコンのコントローラの様なものとモニターが握られていた。

 そのモニターには空からのつくしたち周辺の映像が映し出されている。

 よく晴れた青い空を見ると、そこにはドローンが浮いていた。

 そのドローンにはカメラが付けられており、映し出されてる映像はそこから発信されたものだった。


 「倉庫(ストレージ)に土を収納。いつでも行けます」

 

 一瞬で裏手にある地面を3メートル四方にわたって削り取り、建物の下の方の壁を露出させると、ノアレは一方を緩やかな坂道にしてその穴の一番下まで降りて壁に手を当てた。


 「とつにゅー! ごーごー!」

 「なにしてるっすか?」

 「テトラは良いこだから静かにしていてねー」

 「はいっす」


 少女に不思議なものを見る目で見られようとやってみたかったのだ。

 ゲームでよくある敵陣への潜入ミッションを。


 「そらっ」


 つくしは壁に半径1メートルの穴を開けた。

 

 「だれ!?」


 すると砂煙の先に聞き覚えのある声が響いた。

 壁を抜けた先は地下牢。

 そこにはひと月前に別れた狐顔たち獣娘がいた。

 突然現れた横穴に警戒心を露にしている。


 「やぁ」

 「……!? 何で貴方様が!?」

 「ちょーっと訳ありでね……」


 そこにつくしたちが姿を見せると彼女たちは目を丸くして驚いた。


 「あ、おねぇちゃんたちだ」

 「4番ちゃん!?」

 「病気治ったっすよ! 完全復活っす!」

 「治ったんですか……」


 元気なテトラの登場でさらに目を白黒させてあの状態から白水病が治ったことに、喜ぶよりも呆れていた。

 ついこの間、感動の別れをしたばかりなのにもう再会である。

 何となく気まずい。


 「まぁ、まずはここに来た理由を話そうか」


 とりあえずこのハモンド邸を襲撃するに至った事件の概要を話すと狐顔は険しい顔をした。


 「あいつ……命の恩人にまでこすい手を……」


 歯を剥き出したその狐顔は見るからに怒りに満ちていた。


 「僕たちはその仕返しをするためにきたんだ」

 「倍返しっす!」

 「そうだね。100倍返しだ」

 「だいぶ増えてる!?」


 50倍に増えた仕返しにテトラはひっくり返った。


 「落ちは決まっているんだけど、なにか面白いものはないかなーってこうして宝物庫を覗いているわけですよ」

 「なるほど……では、あれなんてどうでしょう? 最近運ばれてきた物なんですが」

 「あれ?」

 「見た方が早いですね」

 

 そうして牢を倉庫(ストレージ)にしまって軽く破壊し、牢の並ぶ地下を案内してもらう道中、一月たっても変わらない牢のメンバーはたぶんテトラも揃って出品したかったのだろうと考えており、今回のハモンドの犯行にさらに裏付けが加わった。

 そして案内された先にあったものを見てつくしはこんなものもあるのかと笑った。


 「これは特定危険生物ですよね」

 「そうですね」

 「他にもなんかいたりします?」

 「多分奥の方にはまだまだいると思います。非合法なものが」

 「上出来だ」


 ここまで予想通りだと怖いくらいだ。


 「じゃあ1番さんたちは感動の再開は後にしてそこの穴から逃げちゃって」

 「何をするのですか?」

 「この屋敷をぶっ壊す」

 「ぶっ壊すって……でも何故か貴方様ならやれる気がします」


 漠然とした信頼を受けながらつくしはその特定危険生物にある実験をする。


 「よしよし。図鑑の通りだな」


 いつかこの世界の本屋で読んだ安物の魔物図鑑の記述を収集者(コレクター)の本に映して確認する。

 弱い魔物の簡単な記述しかなかったが、役に立つものだ。

 これで前座の準備は完了。

 後はハモンド邸を破壊する準備を進めるだけとなった。


 「しおり、順調?」

 「万事OKなのです」


 しおりから準備ができた報告を受けとる。

 すると、狐顔が首をかしげて尋ねてきた。


 「貴方様は誰と話しているのですか?」

 「あ、妖精さん! 妖精さんっす!」

 「妖精さん?」


 テトラの説明にいまいち要領を得ていない狐顔がもっと首をかしげたので、つくしはフードからしおりを出して見せてやることにする。


 「あぁ、精霊使いの方だったのですか」

 「精霊使い?」


 納得顔の狐顔の言葉に今度はつくしの方が首をかしげる。


 「結構いますよ?」

 「そうなのか……」


 大して珍しくもないなら別に隠す必要がなかったことを知り、今まで一人芝居をする変な人と思われ損だと思ったが、これからこの国を出るのだもう過ぎたことは水に流すことにした。

 

 「それじゃ、1番さんたちは何処か離れていて。危ないから」

 「分かりました」


 そうしてつくしたちは1番たちを広大な畑の方へ避難させ、自分たちは正面玄関から突入して計画を発動させた。


 「ごめんくださいよっと」




    ―――――――――――――――――――――――




 「いや、これは目に毒だな」

 「これはちょっと間違いだったのです」

 「汚いっす」


 純粋な子どもにまで汚いと言われるそれは、大きなハモンド邸を超えるほど無数の太い触手にハモンドと恐らく部下のおっさん数人が蹂躙される光景だった。

 それは地下室のひとつで見つけたヌメイーターという魔物。

 その魔物は動くものに巻き付き、水をかけると肥大化するぬめぬめの触手植物だった。

 他の捕らわれていた害の無さそうな生き物をにがし、地下室に大量の水をためたケースを設置して頃合いを見計らい、会社のオフィスにあるような観葉植物の大きさだったヌメイーターとの仕切りを爆破したのだ。

 なぜこんなものが仕入れてあるのかは狐顔の人たちと一緒の時点でお察しだろう。

 どの世界でも触手責めはポピュラーなようだ。

 

 「……そろそろいいだろ」

 「そうですね早いとこやっちゃいましょう」


 かなり遠くで見ているとはいえ、さすがにおっさんがぬめぬめになって喘ぐ姿は正視に堪えないのでフィナーレを飾ることにした。


 「何が起こるっすか?」

 「花火」

 「はなび?」

 「うん。いくよー」


 つくしが片手で握った円柱型のスイッチ押すと、ハモンド邸の柱が低い爆発音と共に一斉に折れ、崩れていった。

 それはつくしが触手の準備をしている間にしおりがドローンを使って各所に仕掛けたC4によるもの。

 砂煙をあげて崩れていく建物と一緒におっさんたちも悲鳴をあげながら地面に転げ落ちて行く。

 

 「建物の中に生体反応は?」

 「なしです」


 肩に乗っているしおりが、今も空中を飛ぶドローンで建物の中をサーモグラフィで調べて建物内に誰もいないことを確認するとつくしは明らかに怪しい大きな赤いボタンを取り出した。


 「ぽちっとな」


 チュドォォォォン


 ボタンを押すと今度は大きな音と共に派手な爆風が上空に飛び上がり、建物の残骸が雨となってそこらに降り注いだ。

 その爆発を起こしたのもまたしおりのしかけた爆薬だった。

 大きく派手にハモンド邸が爆散するように計算しつくされた爆発は、一種の芸術品の域にまで達している。

 そう、このセリフを言えるくらいに。


 「「きたねぇ花火だぜ!」」


たーまやーかーぎやー!

何で花火はそういう掛け声するんでしたっけ。

忘れました。


後一話で王都編終了!


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