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35話

 俺は今正座している。

 母親に叱られているからだ。

 ウェインさんを不慮の事故で襲ったように見えたことで叱られていた。

「それでこの人はあなたの友達なの?」

 母さんから質問を受ける。俺は前もって準備していた設定を頭に持って来て答えた。

「この前来たウェインさんの妹だよ」

「あらそうなの?なら早く言ってくれれば良かったのに。そうとは知らずにゴメンなさいねアースランドさん」

「いやこちらこそ紹介が遅れてすまない。私はウェイン・アース…」

「シルビア・アースランドさんだよ。妹の!」

 俺はなんとか誤魔化して母さんにウェインさんを紹介した。

 まんま同じ名前はいくらなんでもまずいだろう。

 母さんは納得した様なので正座は解かれたようだった。

 名前は安易だがこの際仕方がなかった。

 シルビアさんもといウェインさんは俺と一緒に部屋に戻っていった。

 母さんに女の子と間違いを起こさないようにとからかわれてしまったが、もともとウェインさんは男である間違いなど起きるわけがなかった。

 というかそう思いたい。

「なんで本名そのまま言うんですか?危なかったですよ」

「すまない、何の打ち合わせも無かったのでとりあえず名乗ることにした」

「それって変ですよ。あー、もー危なかったな。とにかくウェインさんは女性ってことになってるんですから今日1日は家に返さなくては行けないですし、そこをなんとかしないといけないですよ」

「それなら隠れていればいいだろう。山城の部屋で篭っていればいいだけの事だろうし」

「トイレとかどうするんですか?」

「我慢すればいいもしくは気配を消すように移動してトイレまで行けばいいだけの話だ問題ないはずだ」

「簡単にいいますけどバレたら終わりなんですよ。性別が変わったことが知れれば俺らの世界の事もいずればバレちゃいますし」

「心配性だな。大丈夫だ、そんな事態になったとしても山城が誤魔化せばいいだけの話だ」

「なんで非協力的何ですか?」

「私はここの世界では無力だからな。足掻いてもどうすることも出来ないだろう」

 ウェインさんは俺がウェインさん側の世界にいる時と同じなんだとこの時に気がついた。

 そうか馴染んでるようで俺達の世界のことを何も知らないようなものだ。

 あの世界ではウェインさんに助けてもらっている。だからここでは俺がウェインさんを助けるようにしなければならないことを痛感した。

「わかりましたよ。俺がウェインさんに手助けされているようにこっちの世界では俺がウェインさんを手助けしなければいけないんですよね。つまりそういうことですよね」

「そこまで重くとらえなくても大丈夫だ。気軽に構えていればいい考えすぎだぞ山城」

 ウェインさんはそういうと本棚から漫画を取り出して読み始めた。

 確かに考えすぎなのかもしれないがウェインさんがそう気軽にしていると胃が痛くなってくる。

 そろそろ夕食に呼ばれる頃なので俺はウェインさんを残して部屋を出た。

 さすがに親も部屋までは入ってこないだろうと思い、先手を取って食卓に移動した。

 ちょっとスリリングな午後になりそうだが隠し通せば大丈夫と覚悟を決めて階段を降りていった。

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