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32話

 ウェインさんが女性として生きていくことを決意してから5日が経った。

 俺はというと元の世界に戻って学校に行ったり、家でご飯を食べたりしている。

 モンスターの出ない平和な自分のいる世界に満足しながら、風呂にゆったりと浸かっている。

 ウェインさんは別の都市で待っている仲間と冒険をしているのだろう。

 今思えば貴重な経験をしたと思う。

 異世界を旅したのだから貴重な経験だ。

 オークにボコボコニされたり、その肉を食べたり、ラーズラースさんやエリザベートさんみたいな綺麗な人に会えたり、神殿で歴史の勉強をしたりした。

 日常生活では味わえない体験だった。

 そんな事を思いながら学校の宿題を終えて、ベッドで横になる。

 これからは平和なこの県でのんびり暮らせると思うと物足りなさを感じる反面、安心感で満たされていた。

 忘れられない旅になっていたことは確かだろう。

 ギュフイまで行くだけの旅だったが、色んな人に会えた気がする。

 特に城門の衛兵の人達の訓練などは…

「山城、いるか?」

 ウェインさんの声が聞こえる。

 遊びに来たのだろうと思い、ベッドから起き上がるとドアの前にいるウェインさんに言葉を返した。

「また来たんですね、ウェインさん。今日は何の用で来たんですか?」

「遊びに来た。今日はコンビニと図書館に行きたい」

「今の時間考えてくださいよ。図書館はもう閉館してますよ。コンビニは開いてますけど」

「ならコンビニに行こう。あそこは色んなものがあって飽きないからな」

 ウェインさんはどうやらこの世界のコンビニが気に入ったらしい。

 俺は着替えをウェインさんに渡して部屋を出る。

「着替え終わったらドア開けてくださいよ。女物の服なんてないですから、そのシャツとジーンズで我慢してくださいね」

「うむ、わかった。すぐに着替えるぞ」

 両親にウェインさんのことをどう説明しようか?

 適当にウェインさんの妹って設定でいいか。

 アメリカから来たってことにしておけば大丈夫だろう。

 ウェインさんは帰って代わりに妹が遊びに来たとかにしておけば両親も納得するだろう。

 と言っても親父は海外主張だから会えるのは正月くらいなもんだし、母親さえ説得すれば問題なしか。

 そんなことを考えながらドア越しに布の擦り切れるような音を聞く。

 ウェインさんも女性らしくなってくれればいいのだが…。

 駅前のデパートとかに興味を持たれると厄介だな。

 そのうち買い物をしだすかもしれないし、この世界の通貨の価値を知ってバイトしだすとかないよなぁ…。

 そういう不安もあった。

 何にせよ今度は俺が俺の世界でウェインさんを冒険させることにはなりそうだ。

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