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10話

 俺とウェインさんが呪いを解く場所がある都市のギュフイの方角にあるシャムシャム村に行った。

 シャムシャム村って響きがどこか不思議なネーミングセンスだった。

 美人を探すために村中を探したら村長の娘が美人だと言う情報をゲットした。

 なんだか出会い系の調査みたいな感じで、ちょっぴり嫌な気持ちになった。

「山城、さっそく村長に会いに行こう」

「っていうか美人が見つかったんだから歌ってくださいよ」

「何を言っている。その前に本当に美人か確かめなければならないだろう」

「あ、ウェインさん美人って思いながら否定して俺に歌わせる気でしょう?ひどいなー」

「そんな姑息なことは考えていない」

 俺とウェインさんがそんなことを言っている間に村長の家の前に着いた。

 村は北海道の牧場と言えばいいのだろうか。思ったよりも家が少なかった。

 というよりも北海道の牧場に近い雰囲気で家が10数件しかなかった。

 トウモロコシやスイカにキャベツ、トマトなど色々な野菜が畑に植えられている。

 村全体は畑が多く、人よりも牛や豚の方が多い気がするのは気のせいだろうか?

 こんな人の少ない村に美人がいるっていうんだから、やっぱりちょっと期待が薄れていく気がする。

 俺とウェインさんは村長の家にノックして入り、村の娘にあった。

「私はウェイン・アースランド。こちらは山城健二。シャムシャム村の村長殿ですか?」

「はい、そうですけど、私に何か用でしょうか?」

 村長は白髪の人の好さそうなオジサンだった。

「正確には娘さんに用があるのですが」

 ウェインさんが答えると村長は意外っといった反応を表情で見せた。

「はて、娘ですか?今は山の教会に祈りを捧げていますが、帰るのは夕方頃になりますよ」

「そうか、では教会に直接行くとしよう。それでいいな?山城」

「教会ってあの窓から見える綺麗な建物ですよね?わかりました、行きましょうウェインさん。村長さん、ありがとうございます」

「いえいえ、どういたしましてじゃ」

「山城、歌うか聞くかの勝負だぞ。行くぞ」

「なんでそんな急にテンション上がってんですか?」

「なんとなくだっ!」

「アッハイ」

 もし本当に美人だったら何歌おうか?

 俺はもう負け確定な気分になってきたので歌のレパートリーを腦内で検索する。

 歌詞が1番短い富○サファリパークにしよう。

 ちなみに内容はこんな歌だ。

 本当に♪本当に♪ライオンだー♪近すぎるよーどうしよう♪舐められて、どうーしようー♪富○ー♪サファリパーク♪

 …これだけだ。とても短い歌なのでウェインさんが歌と認めるか不安だ。

 これをフルコーラスで歌おうにもこれだけしか歌詞がない。

 俺はそんなことを思いながら、ウェインさんと一緒に教会に向かった。

 でも、もし美人ならちょっとラッキーかもしれない。

 なんか話が出来るだけでもちょっと得した気分になるのは気のせいだろうか?

 ウェインさんが歌う方よりもむしろそっちの方が気になっていた。

「ウェインさん」

「なんだ山城。勝負を放棄するのはできんぞ」

「いえ、そうでなく。美人だったとして何を話せばいいんでしょう?」

「ぐぬぬ」

 何も考えてないのかよ。

「賭けのこと言ったら怒られますよね」

「そうだろうな」

「ギュフイの都市のこと聞くってのはどうでしょう?」

「うむ、良い案だ。山城、それにしよう」

「ということで歌うのは無しとか言うのは…」

「出来ん」

「ですよねー」

 そんなことを言っている内に教会に着いた。

「教会に着いたぞ!」

「何当たり前のこと言ってるんですかウェインさん。ドア開けますよ」

 教会の中から音楽が聞こえてくる。

 誰かがピアノを弾いているのだろう。

 そして小さいながらも子供の歌声も聞こえていた。

 邪魔したら悪い気もしたが、ドアを開けた。

 ピアノを弾いていたのは僧侶の服装をした銀髪のセミストレートの美人だった。

 俺は富○サファリパークをウェインさんに披露する羽目になった。

 そしてピアノの演奏が止まり、子供たちがそれぞれ家へと帰っていくと村長の娘は俺とウェインさんに近づいてきた。

 俺は富○サファリパークを歌い終えた後だった。

「教会に何か用でしょうか?司祭様なら外出中で2,3日後に帰りますが。あと歌を歌う時は関係のない歌を混ぜないでください」

 彼女の言葉に俺は少ししょんぼりとした。

 そしてウェインさんは勝ったと言わんばかりに腕をガッチリと振り上げた。

「山城、あの歌は短い!もう1回歌ってくれ」

「ええー、さっきこの人に注意されたばかりじゃないですか。もう終わりでいいですよ」

「歌わないでください。それに私はエリザベートという立派な名前があります」

 こうして3人のグドグドな会話が教会に広がるころには外は夕日の色に染まっていた。

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