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「モンスター・テイマー」と呼ばれた少年  作者: olupheus
第3章 秋のお祭り騒ぎ!
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何の脈絡もない小話:年越し編

明けまして、おめでとうございま~す!

今年1発目の更新は、何と今までの話をぶった切って小話をやるという蛮行に走っております!

季節の話題を大事にし過ぎて小ネタに走る作者をどうかお許しください!

 これはクルムが学校に通い始める1年前、7歳の頃の年末の話である。

 1年の終わりを迎えるこの日、中央都市(セントラル)全体がどこか落ち着かない雰囲気を漂わせている。中央都市(セントラル)に限らず他の国、都市でもそうなのだが、1年最後の日は朝から休業して、自分の家、店の片づけを行うのが慣習となっていた。クルムの住むギルドハウスも例外ではなく、朝から片づけ、そして掃除に追われていた。クルム自身は、毎日の日課となっている玄関の掃除をしている。

 例外は酒場や食事処といった店で、1年最後の営業を翌日、年明けの翌朝まで行い、そこから片づけを行うのである。


 いつも通り鼻歌を歌いながら、さっさっさ、と箒を動かす。ギルドハウスの隣にある宿屋をちら、と見ると、クルムの友達であるライム、そしてその両親が掃除をしているのが見えた。上からは宿屋の宿泊客のものと思しき声が聞こえてくる。

『ちょっとグレイブ、何これ!? 腐った臭いが……ゲホッ!』

『あー……、これ、いつか買ってそのままほっといた携帯食料だなぁ……。忘れてそのままにしてたんだな』

『もう、勿体ない! 携帯食料だってタダじゃないんだから!』

『悪いミラ、だが魔物の素材の目玉をそのままテーブルに置きっぱなのはどうかと思うぞ?』

『うっ!? こ、これはちゃんと片付けようと……』

『確か去年の今頃も同じセリフを聞いた』

 このギルドハウスを利用している冒険者のグループ、グレイブとミラのものだった。その声をしばらく聞いていたクルムは、自分の服を引っ張られる感覚ではっと意識を取り戻した。足元にいたのはシルバーウルフの子ども、フェリ。クルムの服をぐいぐい引っ張って意識を戻したのである。


 途中だった掃除を再開する。今度はギルドハウスの正面から声が聞こえてきた。

『おやじ~、これどうすんだ~!』

『あ、バカモノ、そんないっぺんに持ったら……』

 ガラガラ~ン! と金属が転がる音が聞こえてきた。

『こらぁ! だから言ったろ~が! 余計に散らかしてどうすんだ!』

『あ、おやじ、痛いって! 腕が、腕が切れた!』

『これしきケガに入るか! おい、包帯持ってこい! そんでコイツをケガごと椅子に縛り付けとけ!』

 ギルドハウスの正面は武具の店、シモンが暮らす家でもある。どうやら、手伝おうとして失敗してしまったらしい。


 と、そんな武具店の隣からひとりの少女が出てきて、クルムのところに駆け寄ってきた。その少女はカリン、武具店の隣、道具屋に暮らしている。

「おはよう、クルム。お掃除?」

「うん。そっちもお片付け?」

「うん、けどもう終わったの。昨日から少しずつやってたから……。ね、そこに座ってても大丈夫?」

「いいよ~。そこのお掃除は終わったから」

「やった、ありがと。あ、フェリ、おはよ」

 カリンがギルドハウスの玄関の段差に座ろうとすると、フェリが尻尾を振って駆け寄っていく。そのまま遊び始めた。

 周りの喧騒をバックに、クルムは掃除を片付けた。



 片付けも終わって夕方を通り越し、夜。クルム、シモンを始めとした子ども達、その家族、グレイブやミラ達冒険者は、近所にある少し大きめのレストランに来ていた。レストランといっても、大衆向けの値段を押さえたところで、食堂との中間にあたるような感じである。

「クルム君、こっちもおいしいよ!」

 料理を片手にやって来るミラ。スプーンですくうと、

「はい、口開けて。あ~ん」

「あ~ん」

 言われるまま口を開けるクルム。料理をもぐもぐと食べ、

「うん、おいしい!」

 笑顔で返せば、

「ああ、かわいいわぁ……。マルタ、この子ちょうだいよ!」

「ダメに決まってんでしょ!」

 育ての親との取り合いが始まってしまった。

「おーい、ミラ。お前何やってんだ……。ホラ、こっち来い」

「あぁ~、クルムく~ん……」

 ミラは引きずられていった。

「全く油断もスキもないんだから……」

 そう言うマルタはクルムをがっちり抱いている。


「ん、そろそろか」

 時計を見たアルスが言う。時間はもうすぐ今年が終わり、来年を迎える。

 《今から信号の魔術を放つが、警告用ではないので、慌てて武器を持って信号の発射元に来ないように》

 外からそんな声が聞こえてきた。いくつかの場所で笑い声が起こる。今から何をするのかというと、新年を迎えたお祝いに、『コード・〇〇』の信号弾を複数組み合わせて上空に打ち上げる。それを見た冒険者が何か緊急事態でもあったのかと勘違いして、完全装備ですっ飛んできて赤っ恥をかく、ということが時たまあるので、念のために注意喚起をするようにしているのだ。

「ホラクルム、そろそろだぞ」

 膝でうとうとしているクルムを揺すると、クルムはぴくっと反応した。そのまま右を見て左を見て、ようやく状況を把握したのか、外に飛び出していった。

「せわしないなぁ、全く……」

「可愛いもんじゃないの」

 アルスとマルタはお互い顔を見合わせ、笑う。と、外が急に明るくなった。時刻は0時。年が明けたのだ。

「すごいすごーい!」

 外からは子ども達のはしゃぐ声が聞こえてくる。毎年恒例の事とはいえ、見るたびに趣向を変えてくるので、何度見ても飽きが来ないのである。


 中央都市(セントラル)の真ん中で、澄んだ星空に花が咲く。今年も良い年でありますように、という人々の願いを照らすように。その合間ではしゃぐ子ども達を見守るように。

 光の熱気が降り注ぐ中、浮かされた人々は隣人に、家族に、恋人に、詠う。新しい年を迎えた歓びを分かち合うために。

 明けまして、おめでとう。

さて、今年もあと364日です。皆さま、来年の準備はできておりますか?(ぇ

今年がどんな年になるかはまだ分かりませんが、まぁ去年までと変わらず、平和に過ごせればいいなぁ、と思います。ええ、小市民感丸出しですとも。


ご覧になってくださった皆様、今年もどうぞ、よろしくお願いいたします!

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