豊穣祭:2日目
え~、間を空けてしまいホントに申し訳ございませんでした。
作者の見苦しい言い訳は下の方に書いてありますので、どうか読み飛ばしてやってくださいませ……。
豊穣祭、2日目。この日クラスの出店は休みなので、クルムは朝からギルドハウスにいた。というのも、いつもの面々でお祭り巡りをするのが目的だからである。保護者役は受付嬢のヴェリベル。ギルドの操業は休みにしているので特に問題は無い。
ちなみにクラスの出店は、3日目と5日目に開店する予定である。さすがに1日目のようなメイド服はもう着ないことになった(というより、させられた)ので、クルムは他の男子と同じ制服を着ることになっている。一部の人間は大変残念がっていた。
「ク~ルム~!」
外からシモンの声がする。
「それじゃクルム、気を付けて。変な人について行かないようにね?」
「うん!」
「ヴェリベル、頼んだぞ」
「はい、お任せください!」
アルス、マルタの見送りを受けて、クルムとヴェリベルは外に出た。アルスとマルタの後ろでは魔物たちもひらひらと尻尾や葉っぱを振っている。外部から来ている人間が多いこの状況で魔物をうろつかせたらどうなるか、火を見るよりも明らかだったため、しばらくは部屋の中で留守番することになったのだった。
魔物たちはクルムがいなくなったを確認した後、こてんと眠りにつき始めた。最近は夜も騒がしいのでどこか落ち着かないのである……。
さて、外でシモン、ライム、カリンと合流したクルムとヴェリベルは、都市の中心部に向かって歩き始めた。人の流れが中心に向かっているので、逆らわない方がいいとヴェリベルが判断したためでもある。目的地が決まっている訳でもないので、丁度良かった。
「なーなーヴェル姉ちゃん、都市の真ん中に何かあるのか?」
先頭を行くシモンがヴェリベルに聞く。
「そうねぇ、何か催し物でもやってるといいんだけどね~。それよりみんな、離れちゃだめよ?」
「ほらカリン、手をにぎってて!」
「う、うん……」
時々あっちへ押され、こっちへ流されそうになりながら何とか5人は中心部にたどり着いた。
「みんないる?」
ヴェリベルはいち、に、と数える。……全員いた。
「よし、じゃあ、近い方から見てみようか?」
「「「「さんせー!」」」」
4人分の返事が返って来た。
最初の出店、くじの店。ひもを引いて商品を当てるタイプのものである。
「あー、はずれー!」
シモンは外れだった。
「お、嬢ちゃん2人は4等だ! はい、お菓子」
「わ、やった!」
「ありがとう」
「クルム君はどうする?」
「う~ん……」
クルムはじ~っとひもを見る。
「これかな?」
ぐいっ。引っ張ったひもの先は……。
「大当たり~!」
からんからん、と景気のいいベルの音が辺りに響く。
「え? え?」
クルムがぽかん、としていると、
「ほい特賞、『森の国』謹製のオルゴール。手作りの一品ものだよ? 大事にしてな!」
「わ、ありがとう!」
クルムは小ぶりの箱を手渡された。箱は木製で、どの面にも非常に精緻な細工が施されている。箱の上面には教会で見られるようなステンドグラスが埋め込まれており、オルゴールの魅力を高めていた。
「おっと、ここで箱を開けても周りの喧騒で音は聞こえないと思うぞ? お家までちゃんと持って帰ってから開けな!」
「うん、ありがとう!」
「クルム君、よかったね」
5人は出店を離れた。なお、ヴェリベルはシモンと同じく外れを引いてしまったことを追記しておく。
次の出店は食べ物の出店。小麦粉を水に溶かした生地を鉄板にたらし、薄く伸ばしたら上にフルーツを置いたり、甘いソースをかける。
「うん、うまい!」
さっきのくじ引きで外れを引いてしまったことを気にすることもなく、できたてにかぶりつくシモン。
「シモン、口の周りに付いたよ……?」
「ほら、しょうがないんだから……」
カリンが口を指すとヴェリベルが布でふき取った。
「クルムのは何の味?」
「んー、チョコの味。そっちは?」
「こっちはイチゴだよ、食べる?」
ライムとクルムは、お互いのソースを食べ比べしていた。
ヴェリベルも自分の分を買って食べていると、
『さーさーみなさまお立合い!』
という声が聞こえてきた。
「……何だろう?」
5人は顔を見合わせ、声のした方を見る。
『中央都市に戻ってきた我らがサーカス団、今度は無事故でお届けいたします! ご興味のある方は広場にお集まりください!』
「あれ? あれって……」
クルム達には見覚えのある一団がいた。そう、かつて砂象が危うく暴走しかけたのをクルムが止めた、あのサーカス団がいたのである。
「行ってみようぜ!」
「うん、行こう!」
「あ、待って! ちゃんと全部食べ終わってからね!」
手に持ったものを食べ切った5人は急いで広場に向かった。
『さぁ、次はここいらではお目にかかれない、砂の国原産の砂象です!』
どぉん、という地響きと共にその巨体が姿を現す。そして、その存在感を示すかの如く大きな咆哮が響く。
「「「おぉ……」」」
会場のどよめきが低く響いた。
『この象は体が大きく、とっても力持ちなので、人間を何人か乗せることができます! そうですねぇ、折角ですからこの会場にいらしてくれた子ども達を……、やややっ!』
さっきから口上を述べていた男がクルム達に気付くと声を上げた。
『君たち、どうですかな? 象の上に乗ってみませんかな?』
そういって笑みを浮かべた。
「象だって」
「乗ってみる?」
「うん、あの時の象さんかな……?」
「行こうか?」
ひそひそと4人で相談。結論はすぐに出た。
「「「「乗る!」」」」
『ありがとうございます! それではこちらにどうぞ!』
クルム達4人は舞台に上がった。
『ああ、そこのお姉さんもどうぞ? 子ども4人くらいでしたら大人1人は乗りますので』
「え? あ、ああ、そうですか?」
引きつった笑みを浮かべて、ヴェリベルも舞台に上がった。
『それではお並びください。順番にお乗せいたします』
「どうやってだよー。届かないぞ?」
シモンがぶーぶー言うと、
『ふっふっふ、ご安心を。届かなくてもよいのです。なぜならこうするからです!』
と言うが早いか、シモンの体に砂象の長い鼻が巻きついた。そしてそのまま上へ軽々上げられ、背中に着地した。シモンは大興奮である。
その興奮のままライム、カリンと上げられ(カリンだけマジものの悲鳴を上げた)、次にクルムの番となった。同じように鼻が体に巻きつき、背中へ上げられる。その時、砂象の意志がクルムにしっかり届いた。
『あの時はありがとう』
「どういたしまして!」
クルムは砂象に応える。砂象は耳と鼻をぱたぱたと振った。クルムの声を聞いたシモン、ライム、カリンと、司会の男はお互い顔を見合わせて笑い合った。
そのままヴェリベルも合わせて5人で象に乗るという貴重な体験をした。その後もサーカスは続き、5人は多いに楽しんだ。ショーが終わると5人は楽屋に招かれ、再開を喜んだ。再開するまでの間に何があったか、色々な話をしたが、その中でシモンやライムが学校でやっている出店の話をすると、時間を見つけて必ず行く、とサーカス団全員が声を揃えて言った。
動物たちとも触れ合いながら遊んでいると、気が付けば夕方になっていた。学校での再会を約束して、5人はサーカス団と別れる。クルム達は家路につきながら、ぶんぶんと大きく手を振った。あれこれと何がすごかったのかを口々に話す4人と、それを聞いて笑みを浮かべるヴェリベル。5人の影は夕陽に照らされてゆらゆらと交わる。
都市の喧騒は途切れることなく続く。祭りはまだまだ盛り上がりを見せている。
【言い訳フェイズ】
プログラムの勉強が、始まっちゃったんですよ……。なんとか片付いて時間が取れそうだと思ったら、今度は咳が止まんなくなっちゃって、ついでに頭痛が……。わ、私は悪くないんです!!
《バツ!!》
ザッバーン!!
え~、はい、という訳で、さすがに年内このまま更新なし、は非常にまずいと思ったので、何とか1話書き上げましたとも! 予告なく時間を空けてしまい本当に申し訳ありませんでした。もう業務連絡の欄でも作ろうかしら……。
あ、もうこんな時期ですから、この言葉を言わないとダメですね。この小説に足を運んでくださった皆様、今年1年、大変お世話になりました。閲覧数がちょっとずつでも伸びてくれるのは私にとってこの上ない喜びです。
まぁ、何しろこんな進行状態の小説ですから、次ができるのはいつになることやら……(汗
そんな感じですので、ちょいちょい覗きに来て頂ければと思います。皆様から頂いたお時間が有意義なものになってくれてると、いいなぁ……。
今年も大変、お世話になりました。良いお年を!!




