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「モンスター・テイマー」と呼ばれた少年  作者: olupheus
第3章 パール・プリンセス<砂漠の真珠姫>
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ダイナミック・オペレーション<同時展開作戦>

3章、以外と長くかかってます!

想定外です!

やべえ!

でもやらない訳にはいかないので! どうぞ!

<砂の国:首都出口付近>

 依頼を受領した冒険者、そして特命を帯びた王城の兵士たちが続々と出撃する。今回の救出作戦は奇跡的ともいえる短さで立てられた。その概要は以下の通り。


①:今回の作戦に参加する人員を「囮部隊」と「捜索部隊」の2つに分ける。


②:「囮部隊」は何手かに分かれ、できるだけ大音量を響かせながら首都から遠ざかる。この音に釣られて姿を現したサンドワームを順次討伐する。この内容から、人員は冒険者を中心として構成する。


③:「捜索部隊」は「囮部隊」が出発した後、こちらも何手かに分かれ地下に進入できそうな穴を探す。こちらは王城の兵士たちが担当するが、サンドワームが突然出現した場合を想定し、護衛として一部の冒険者を割り当てる。


④:穴を発見した後は『コード・ブルー』を上げ、その場所に仮拠点を設営、準備が整い次第突入する。地下ではマッピングを行いながら捜索を行う。なお、地下の捜索時間は2時間とし、2時間経過したらすぐに帰還する。


 ちなみに作戦が決まり、人員を割り当てるだけになった際、一部の冒険者が強硬に「捜索部隊」入りを主張した。そのため、元々兵士のみで構成される予定だった「捜索部隊」の編制を見直すことになってしまった。こんな些事(さじ)はあったものの、概ね順調に段取りが決まっていった。



 さて、「囮部隊」はそれぞれのグループで馬車に乗り、一斉に首都を中心として八方に散っていった。そしてサンドワームを討伐する際の必需品、馬車に括り付けるだけでガラガラと大きな音を立てる鳴子をこれでもかと用意して、それはそれは賑やかに走り回ったのである。

 果たして、サンドワームは姿を現した。それも普段は絶対に見ないような数が。

「野郎ども! 金づるが姿を見せたぞ! 気合を入れて行けよ!!」

「ボス! 逃げながら言ってもカッコつかないっすよ!」

「るせえ! んな細かいこと言ってる暇あんなら、さっさと準備しやがれ!」

 彼らは正義と、あるいは欲望に突き動かされ走る。かけがえのない命を救うために。あるいは地中の王者から金をむしり取るために。

「はっはー! 今日の夜は飲み放題だー!!」


「囮部隊」が出発してから少し。「捜索部隊」も動き始めた。なお、クルム達が飲み込まれた箇所も事前に調査されたが、サンドワームが空けた穴も含めすべてが埋まってしまっていた。そのため、「捜索部隊」は最初から首都の外に出て、進入可能な穴を探すことになった。

 とはいえ、これは困難を極めた。何しろ広い砂漠である。穴を見つけられるか、そもそも穴が無い恐れさえあった。更に、クルム達が飲み込まれたのは正午前。それから準備を整え出発したため、多少の時間が経っている。要するに、暗くなるまであまり時間が無いのだった。

 こんな状況下だが、折り悪く「予報」に使用される気球は出払ってしまっており、首都近くに戻ってくるのは早くても明日以降になるとのことだった。つまり、「捜索部隊」は自分たちの目と足で地道に探すことを強いられたのである。


「……静かなもんだ」

「……そうね」

「今にも下から湧いてくるんじゃないかって思えてくる」

 作戦は今のところ順調に進行しているため、サンドワームがいきなり現れる可能性は低いと見られるが、それでも普段は絶対歩かないようなところを、それも素早く動いているのである。妙な緊張感が体中を包んでいた。

「そっちはどうだ?」

「だめだな、それらしい穴は見つからん」

「くそ、穴なんか見つけるより、堀った方が早いんじゃないか……?」

 首都を中心に捜索範囲を広げるが、それらしい穴は発見できない。彼らの闘いは始まったばかりであった。



  <砂の国:オアシス近くの地下>

「これ、魔物か……?」

 サンドワームの中で影が動いたというので調べてみたところ、中から植物をまとった人型の魔物が現れた。頭の部分には色鮮やかで大きな花、腕と思われる部分は葉っぱで、体の下側は葉っぱがドレスのようにふんわりと膨らんでいる。

「見たこと無い魔物だな……。これ、何か分かるか?」

 全員が唸ってしまった。何しろ植物をまとう魔物自体見るのが初めてであるし、魔物に詳しい人間もいなかった。


「せんせー、何だったの?」

 特に何も起こらなかったせいか、子ども達が戻ってきた。

「あ、こら! まだ戻っていいなんて言ってないですよ!」

「だって、向こうで待ってるの、なんかこわいんだもん……」

 一人が代表して、そんなことを言った。全員、程度の差はあっても大体同じ意見のようである。

「全く……、しかし、これどうします?」

「動く気配は無いしなあ……、死んでるのか?」

「さっきの幼体みたいに埋めるか?」

 大人たちがやいのやいのと話し合っている間に、

「わ、これ、かわいい……」

「すごーい、お花さいてる……」

 子ども達は魔物に興味を惹かれ、周りを取り囲んだ。

「ええい、もう! 油断もスキも無いんだから!」

 再び先生が子ども達を魔物から引き離しにかかる。と、

「ん~?」

 植物の腕と思しき葉っぱを持ち上げた子どもがいた。クルムだった。

「あ、クルム君! 手を離しなさい!」

 先生が慌ててクルムの元に近寄る。

「この子、まだ生きてる……」

「え?」

 クルムの呟きに反応した先生が、一瞬動きを止めてしまう。

「サンドワームに食べられて、すごく痛かったって……」

「クルム君、何を……」

 困惑する先生の前で、クルムは集中し始める。


『いやしの聖光』

 ――暗い地下ではまぶしいくらいの光が、魔物を包み込む。


「これ……、まさか、癒しの魔術!? クルム君、止めなさい!」

 光をぼおっと見ていた先生は、はっと正気に戻ってクルムを止めようとしたが、既に光は止まっていた。直後、さっきまで動いていなかった魔物がむくりと起き上がったのである。

「……」

 色々なことが一度に起こり、開いた口が塞がらなくなった周囲を尻目に、魔物は頭部にある大きな目をぱちくりと瞬かせ、キョロキョロと辺りを見渡した。そして、さっきから腕の葉っぱを握ったままのクルムを見た。

「大丈夫?」

 クルムが声を掛ける。すると魔物が困った目でクルムが握っていない方の腕を上げる。よく見ると、腕の半ばが少し欠けてしまっていた。

「ここも?」

 クルムが問うと、コクリと魔物が頷く。まるで人間同士のやり取りであるその光景を前に、砂の国の人々は何も言えなくなってしまった。もはや理解の範疇(はんちゅう)を超えている。反対に子ども達はどこかわくわくした感じで見ていた。そして。


『いやしの聖光』

 ――あの光が、また魔物を包み込んだ。


 光が収まると、欠けた部分はすっかり元通りになった。それを見た魔物は、笑顔で小躍りし始めた。それだけではなく、

「クルムくん、すごーい!」

「今の、どうやったんだ?」

 子ども達もわっと集まってきた。クルムは目を白黒させたが、同時に照れくさそうでもあった。

「なあ、先生さん」

「はい……」

「あの子……、何者だい?」

 自分が知りたいくらいだ、と心の中で思ったが、取りあえず知っていることを整理し始める。そして、ここで変に隠し立てして、不信感を蔓延させるのは得策ではないと判断した。先生の受難はまだまだ続くようである。

はい、という訳で、今回の魔物のモデルは○ケモンの○レディアです(意味のない一応伏字)。

まあ、あんな扱い方ですからこの先どうなるかは大体想像つくかと思います。ま~たアルスの胃痛のタネが増える訳で……。


取りあえず、次回もお楽しみに!

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