アンダーグラウンド・アドベンチャー<地中の冒険>
え~、また3週間経ちましたね……。
はい、ゴーストリコンとキングダムハーツ、楽しいです。
え? 発売されたの数日前? その前の2週間で書けただろ?
そ、それは、え~と、あの……、I'm Syachiku. ってことで……、ダメ?
ゆらゆらと、真っ暗い中を揺れている。
頭がとってもぼんやりする。僕は何をしてたんだっけ?
目を開けようとするけれど、どうしてか開けることができなかった。
そんな中でふと気づく。
体が勝手に揺れてるんじゃなくて、誰かが揺らしているのだと。
それに合わせて、声がする。
僕を呼んでいる。
そのことに気付いたとき、目の前が真っ白になった。
クルムはゆっくりと目を開ける。ぼやけた視界に、誰かの顔が目一杯映った。2回、3回と瞬きをすると、その顔はペルルのものだと分かった。
体を起こすと、ペルルがガバッと抱きついてきた。よく見ると、少し震えていることが分かった。
「お、坊や、目を覚ましたか」
声のした方を振り返ると、見知らぬ大男が立っていた。
「いや~、坊やも中々やるなあ。姫様、ずっと坊やのそばから離れなかったんだぞ? 随分好かれてるみたいだなあ」
ニヤニヤと、そんなことを言った。
クルムはペルルを見る。少し落ち着いたのか、恥ずかしそうに上目遣いで見やっていた。目の周りは少し赤く、今も目の端が濡れている。
「ずっと心配しててくれたの?」
クルムが聞くと、ペルルは小さく頷いた。
「そっか、ありがとう」
その言葉を聞いて、ようやくペルルに笑顔が戻った。
「坊やと同じ学校? の友達は向こうにいるぞ」
「そうなの?」
クルムが辺りを見渡すと、確かに見知った顔の子どもがいた。みんな不安そうな表情で一か所に固まっている。
「ここはどこなの?」
「ここはオアシスの横にある空洞……だと思う」
「くうどう?」
クルムが首を傾げる。
「ああ、さっきサンドワームが近くまで来ただろ? そいつが掘った穴に俺たちは落ちてしまったって訳だ」
そこまで言われて、クルムは先ほどまでの出来事を思い出した。思わず上を見たが、空は見えなかった。小さな滝のように、砂がさらさらと落ちているところが見えるだけだった。
「その、サンドワーム? は……」
「あ~、それは……」
男はあさっての方向を見ながら頭を掻いた。どう説明すればいいか困っているようである。
「とりあえず俺たちが襲われる心配はしなくてもいいぞ。……今のところは」
そこまで説明されたところで、男から「とりあえず友達のいるところで待っとけ」と言われたため、クルムはペルルと子ども達がいるところに移動した。
「あ、クルム……」
子ども達の一人が声を掛けた。クルムと同じ授業クラスに所属する子どもが数人、クルム達よりも体が大きい、上級生と思われる子どもが数人、それに付き添う男性の先生が一人、固まって座っていた。
「クルム君、大丈夫か? どこか痛むところは無いか?」
「あ、だいじょうぶ……です」
クルムの体を気遣う先生に、クルムはたどたどしく敬語で答えた。その間、ペルルはずっと下を向いたままクルムの右腕に掴まっている。
「わたしたち、どうなっちゃうんだろう……」
クルムと同じクラスの少女がぽつり、と呟く。
「私たちが巻き込まれるところは多くの人に見られていた。今も上で私たちを助けるための準備を進めているはずだ。もう少しの我慢だよ」
励ますように、諭すように先生は語りかける。どうやら、子どもたちを集めてからずっと、そうして励まし続けていたようだ。
「でも、さっきの魔物が……」
「あ~、先生、ちょっといいか?」
更に少女が言い募ろうとしたところに、先ほどの男がやって来た。
「ちょっと行ってくる。ここから動かないようにね」
「どうしました?」
「ああ、これからどうするかを話そうと思ってな。さすがに子どものいる前では言いづらいこともあるだろうし……」
「ああ……、すみません。お気遣いありがとうございます」
先生は頭を下げた。
「で、これからなんだが……、まず、ここを離れようと思う」
「え? 離れるんですか? 私たちがここにいることは分かっているんですから、ここで待っていた方が確実なのでは?」
「先生さんの言うことは最もなんだが……」
別の男が声を上げた。
「ここの砂って、あそこで落ちてくるのを見ればわかる通り、すごくさらさらしてるだろ? この空洞はサンドワームが通るときに無理やり作られたものなんだよ」
「つまり?」
「洞窟の天井を支える力はそんなに無いんだ。このままここにいると、上の砂が全部落ちてきて、俺たち全員生き埋めになる可能性がある」
「ええ!?」
「そういう理由だから、上から穴掘って助ける、というのはやらないんだ。さっきから結構な時間が経ってるけど、上から助けは来ないだろ?」
「そ、そう言われてみれば……」
そう、王城の兵士も冒険者も「穴を掘って救助する」という選択肢を取らなかったのは、空洞の上にある砂はもろく、崩れる危険があるということを知っていたからだった。その辺りも、砂の国特有の知恵なのである。
「それで、ここから動くと?」
「ああ。サンドワームの掘った穴を辿れば、地上に出られるかも知れない。確か今日近場のサンドワームを討伐するって依頼があったから、案外首都近くの地上に出られるかも知れん」
「しかし、サンドワームに遭遇してしまうのでは……」
「正直、その危険はある。奴らは音やら振動やらで物の居場所を感知するからな。だが動かなければ、もっと言えば地上に出なけければ、今度は生き埋めになるかも知れん。どっちにしてもリスクは避けられんよ」
「……子どもたちはこのプレッシャーに耐えられるでしょうか」
先生が最も懸念しているのはこのことである。子どもたちが恐怖に耐えられず大声を上げてしまえば、それは魔物を呼び寄せることと同義と言ってしまって良い。ある程度鍛えた冒険者ならともかく、魔物とほぼ無縁の子どもたちにそれを我慢せよ、というのは酷な話だった。
「そこは何とかごまかすしかあるまい。この辺の魔物は討伐され尽くしてるから危険は無い、とかな」
「……それしか、ありませんか」
「今は全員の命を守るために動かなければならん。これくらいは勘弁してくれ。……なあに、きっと大丈夫さ。俺たちがしっかり意志を持てば、子どもたちも信じて付いて来てくれるさ」
「……分かりました。私も、覚悟を決めます」
先生の瞳に、力強い光が灯った。地上で救出作戦が行われるのと時と同じくして、砂漠の下でも命がけの冒険が始まろうとしていた。
クルムは静まり返った子どもたちの集団で、ひとりきょろきょろと辺りを見渡していた。
(……?)
下を向いていたペルルが、少しだけ顔を上げてクルムを見る。
「うん、さっきのサンドワーム、どこいったのかなって。声も全然聞こえないし」
(……)
ペルルは首を小さく振った。
「そうだよね……、あれ?」
クルムは大人たちがいる向こうに何かを見た。あれは……。
次の3連休が終わるまでにもう1話、いや2話は……。
と、とにかく次回もお楽しみに~!




