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「モンスター・テイマー」と呼ばれた少年  作者: olupheus
第3章 パール・プリンセス<砂漠の真珠姫>
39/66

レスト・ハウス<一休み、一休み>

はい、お久しぶりです!

FF15終わったんで投稿します!

 砂の国へ向かう馬車の列は、大地の国の西側、砂の国との国境近くにある都市にたどり着こうとしていた。というのも、砂の国まではそれなりに距離があるため、ここで準備を整えてから向かうことになっているのだった。砂の国、あるいは大地の国の玄関となるその都市は、「西の都市(ウェスト・ポイント)」と呼ばれている。


「もうすぐ西の都市(ウェスト・ポイント)に着くけど、着いたらまず宿泊所に荷物を置くこと。その後はしばらく自由行動になるからね。あと、絶対に都市の外には出ないこと!」

 馬車の中、マリーが生徒たちに注意を与えている。

「あ、そうだ。『騎士コースか冒険者コース在籍で、<野外行軍Ⅰ類>を受講している者は今夜実習を行うので、装備を持って集合すること』だそうよ。ウチのクラスっていたかしら?」

「あ~、それ多分来年からですね。俺たちが受けてるの<野外行軍基礎>なので、まだ座学です」

 代表してフィンが答えた。ちなみに<野外行軍>というのは、都市外での過ごし方全般を取り扱う授業で、騎士か冒険者のコースにいる者は必修、魔術士のコースでは任意となっている。<野外行軍Ⅰ類>は実際に都市外で一夜を明かす実習があり、それを今夜行うと言っているのである。


「どうしたのクルム?」

 カリンが窓の外に顔を向けたクルムに聞く。

「いまなんか、外から悲鳴みたいなのが……」

「あぁ、そりゃあれだな。せっかくベッドで眠れると思ったのに、わざわざ都市外でキャンプしなきゃならなくなった哀れな連中の悲鳴だ」

 コナーが興味無さげに呟いた。実際、その後もいくつかの馬車から哀れな連中の悲鳴が聞こえてきたのだった。


「先生、西の都市(ウェスト・ポイント)って何があるんだ?」

 シモンがわくわくという擬音を出しそうな顔で尋ねた。

「そうねえ、砂の国からやってくる珍しい物の市場とかかしら」

「え~、もっとなんかないの~? 冒険者向けの店とか!」

「あるだろうけど、僕たちは冒険者の資格が無いから、基本的に立ち入り禁止だよ」

 ヴァルターが横で説明した。冒険者向けの店というのは、武器防具や薬類などを扱う店のことを指すが、危険なものも含まれるため、冒険者であるという証明が無いと、基本的に売買は禁止となっているのだった。

「ちぇ~、ぶ~ぶ~」

 シモンが不満そうに唇を尖らせる。

「何なら外でキャンプするか? 冒険者連中と話ができるかも知れないぞ」

「コラ、変なこと勧めないの!」

 フィンの勧めをミルトニアが一蹴した。

「シモンも『いいの?』みたいな顔しない!」

 ライムもシモンに釘を指した。



 そして間もなく、馬車の列は「西の都市(ウェスト・ポイント)」に入った。馬車から降りた生徒たちは体を伸ばしたり、自分の荷物を探したりしている。

「じゃあ、まずは宿泊所まで行くから、はぐれないようにね~!」

「クルム、行くわよ」

「うん」

 リピアが声を掛け、クルムが頷いた直後、宿泊所に向かって動き始めた。今回は人数がそれなりにいて、宿屋を貸し切っても全員が入れないため、キャラバンのような大人数を一度に収容できる所で一泊することになっていた。


「クルム、あんまりよそ見ばっかりしてたら、迷子になっちゃうわよ?」

 リピアがきょろきょろしているクルムをたしなめる。それを聞いたクルムはまっすぐ前を向いて歩き出すが、すぐに興味があっちへ、こっちへフラフラ移ろうのだった。その一方、さっきまではしゃいでいたシモンは特に面白いものが見当たらなかったせいか、取りあえず前を向いて歩いていた。何となく急ぎ足になっているような気がするものの……。


 しばらく歩くと、大き目の建物が見えてきた。どうやらここが、今日一夜を過ごす宿泊所のようである。

「私たちのクラスは男子がこの部屋、女子は1階上ね。荷物を置いたらロビーに集合して」

 マリーは女子たちを引き連れ上の階に消えていった。クルム達は示された部屋に入ると、

「おお、こりゃ広い」

 大人数が一度に寝られることを想定した造りになっているためか、部屋は広かった。

「じゃあ、荷物を置いたら下に行こうか」

 レナルドの一声で全員が一か所に荷物を置いた。

「あ、貴重品は外から見えないポケットに入れといてって、先生言ってたね」

 ヴァルターがクルムに言いながら、上着の内ポケットに貴重品をしまい込んだ。それを見たクルムもいそいそとしまい込むのだった。


 男子組がロピーに移動したが、女子組の姿はまだ無かった。

「あれ、いない。もうどこかに行ったのか?」

「そんな訳ないでしょ……」

 と言い合っていると、

「あ、もう来てたの」

 階段の方から声がした。振り返ると、女子組が階段を降りてくるところだった。

「遅いぞ~」

「女の子の準備には時間がかかるものなのよ!」

 フィンが気の抜けた声を掛けると、ミルトニアが噛みついた。

「はいはい、全員いるわね。じゃあこれから自由行動だけど、さっきも言った通り都市の外には絶対出ないこと。あと路地裏とかを通るのも避けるように。この都市夕方になると鐘が鳴るから、それが聞こえたら宿泊所に戻ってくるようにね」

「「「は~い」」」

「それと、シモン君、ライムちゃん、カリンちゃん、クルム君たちは単独行動は禁止。必ず私か、年上の誰かと一緒に行動すること。OK?」

 それを聞いた4人は一斉に頷いた。

「よろしい。それじゃケガしないように、楽しんでらっしゃい。夕飯の時間にまた会いましょう」



 クルムはリピア、ヴァルター、レリアと一緒に行動していた。シモンはフィン、コナー、レナルドにくっついて行き、ライム、カリンはミルトニアと出掛けて行った。そんな訳で、残ったメンバーで行動することになったのである。

「それで、どこに行くの?」

 リピアが全員に尋ねる。

「私、市場行きたい!」

 レリアがシュビッと素早く手を挙げた。

「僕はどこでも……」

「何よ! はっきりしなさい!」

 隣でヴァルターがぼそっと呟いた言葉にも素早く反応した。

「クルムはどこ行きたい?」

 騒ぎ始めたレリアとヴァルターをよそに、リピアはクルムに聞いた。

「ぼくも、市場に行ってみたいな……」

「じゃ、市場に行きましょうか。2人とも、置いてくわよ~」

 かくして4人は、揃って市場へ向かったのである。


 市場はもうすぐ夕方になろうという時間にも関わらず、大変な盛況ぶりを見せていた。西の都市(ウェスト・ポイント)に元々住んでいる人は元より、これから砂の国に向かうと思われる冒険者、商人など様々な人でごった返している。

「クルム、手を握って。離れないようにね!」

 4人は人並みにさらわれないよう、お互い手をつなぎながら動いていた。

「それにしても……」

 ヴァルターが呟く。

「リピアさん、いつの間にあんな明るくなったのかな……?」

「そうよねえ。前は近寄りがたい感じだったのに、今や頼れるお姉さんって感じ」

「ほら、そっちの2人も、よそ見してるとはぐれるわよ!」

「あ、ごめんなさ~い!」

 リピアに対する思考は、そこで中断された。今は、リピアを信じて人波をかき分けることに集中するしかないようだ。


 4人は時間いっぱいまで市場をぐるりと見て回った。中央都市(セントラル)では決して見られない珍しい品物の数々。だが、持ってきたお金に限りがあるのと、帰りにもう一度寄ることになっているので、このタイミングで買うことはできなかった。それでも満足することができた4人は、笑顔のまま鐘の音を聞きながら宿泊所に戻った。

 全員でそろって夕食を食べながら、それぞれ見てきたものの話をした。フィンが商人に勧められるままツボに手を突っ込もうとしたら、いきなりツボが口を開き、危うく食べられかけた話や、ミルトニア達は市場の隅にいた占い師に占ってもらった話など、話のタネは尽きることが無く、とても賑やかだった。


 その後は風呂に入り、消灯まで思い思いに過ごした。シモンの提案で、ライム、カリン、クルムは少しの間、夜風に当たりながら星見をしていたところ、室内から爆発音が響いた。何事かと戻ってみると、フィンがなぜか部屋のドアの前で正座をしていた。マリー曰く、どうも他のクラスの知り合いと何かイタズラをしたらしく、宿泊部屋の1つが煤まみれになってしまったとのことだった。

 罰としてイタズラに加担した者全員で部屋の掃除、その後手荷物検査を強制され、幾つかの品物が没収されていた。フィンは「せっかく用意したものが~……」と嘆いたが、完全に自業自得だったので、同情する者はいなかった。マリーは出てきた品物を見ながら呆れかえり、フィンのバックは最初の3分の2くらいのサイズに縮んでいた。

 そんなドタバタがありながら夜は更けていく。明日はいよいよ砂の国。目的地の首都には夕方前に到着予定である。

いつの間にか40,000PV突破してました。

いつもいつもご愛顧いただきましてありがとうございます。


今年もあと少しですね。インフルとノロが手と手を取り合って大暴れしていますが、

風邪ひいたまま年越しを迎えてしまわないよう、お気を付けくださいね。

また、次のお話もよろしくお願いします!

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