トラベル・デスティネーション<旅の目的地>
第3章、スタートですよ!
現実と話の中の季節が合ってない? hahaha、何を今更……。
砂漠地帯の真ん中に取り残された楽園、オアシス。そこに人間たちは街を作り、逞しく生きている。そして中央部には、街のシンボルにもなっている王城があり、街、いや国一帯を治める王族が住んでいる。その一室にて。
外の喧騒とは打って変わって静寂が包み込んでいる。その中で動きだす小さな影があった。その影は窓から外を見て、一つ決心したように頷くと、近くに置いてあった日除け用のフードを手に取り、自分の体に纏った。そして扉を開け、誰もいないことを確認すると、するりと扉の外へ体を滑り込ませた。後には誰もいない、静かな部屋のみが残された。
所変わって中央都市、学校。マリゴールドクラスでは朝礼が行われている。
「今年は、このクラスも学生交流会の対象になるわよ!」
クラスの担任であるマリゴールド・カフレン、愛称マリーが声高らかに宣言した。
「「「やったぜ(ね)!」」」
その宣言に教室前方側に座っている3人、フィン・コリン、コナー・グリーヴ、レナルド・ライリーが揃ってガッツポーズした。
ちなみに派手な反応こそしなかったが、教室の真ん中あたりに座っているヴァルターとレリア・プルプラタもお互い顔を見合わせて喜び合っていた。
「このクラスにもやっと後輩が入ったからね、良かったね!」
と喜びを分かちあう教師と生徒の後ろで、
「学生交流会?」
と、意味が分かっていない生徒が4名ほど、揃って「?」マークを浮かべていた。
「ああ、そっか。初めて聞くんだもんね」
その様子に気付いたミルトニア・ドロレスが4人に学生交流会について話し始めた。
「学生交流会」とは読んで字のごとく、学生同士の交流を行うイベントである。毎年夏頃に行われるこのイベントは、新入生が入ったHRクラスが参加の対象となる。そう、お察しの通り、まず新入生がクラスに入らなければ参加できないのである。もっと言うと、新入生が入らないクラスがあったりするのである。マリゴールドクラスが正にそのパターンで、ヴァルターとレリアが入って以降、ずっと新入生が入らなかったため、このイベントに長い事参加することができなかったのである。今年クルム達4人が入って、ようやく参加できるようになったのだった。
なぜ新入生が入らないクラスが出るのか。組み分けは学校の上層部が決めているのだが、その方法はマリゴールド達教師には知らされていない、実に謎の多い部分である。
「で、今年はどこに行くんで?」
フィンが尋ねる。学生交流会では何をするかというと、早い話が旅行である。しかも、冒険者の護衛付き国外旅行である。これは将来都市から離れて旅をすることを想定して、旅がどのように行われるかを知る実地講習という目的があった。また、護衛中の冒険者と直接コミュニケーションを取り、そのの動きを知るいい機会でもあった。
「あ、ええと、今年はね、『砂の国』ね」
マリーが答えると、それまで盛り上がっていた3人の動きがピタッと止まった。
「す、砂の国……?」
「あの砂漠地帯に……?」
ヴァルターとレリアも呆けた顔をして呟いた。
「何でこのクソ暑い時期にクソ暑いところに行かなきゃ行けないんですか!」
フィンが猛然と抗議し始めた。
「夜は涼しいわよ?」
「寒いの間違いだろーがぁぁ!」
うがぁ! と叫ぶが行き先は既に決定事項であり、変えられないのだった。
「去年とか海の方に行ったって言うじゃないですか! なんでそっちじゃないんですか!?」
「あぁ、大きなクラゲの魔物が出たとかで、しばらく立ち入り禁止になったんですって。そこに『砂の国』からお誘いがあったそうよ。『ウチに来ませんか』って」
そこでフィンは燃え尽きたようにがっくり座り込んだ。よく耳を澄ますと「水着が……」とか言っているのが聞こえた。ミルトニアが呆れた視線を向ける。
クルムがポカーンとしたまま隣に座っているリピアを見た。リピアは黙って両手を上に向け、肩をすくめた。クルムの隣ではシモン、ライム、カリンが興奮した面持ちでひそひそ話している。こうして、クルム達は入学してから初めての大きなイベントである、学生交流会を迎えることになったのだった。
同じ頃。ギルドハウスにて。
「いーーーやーーー!」
「いい加減、諦めろってのに……」
何かを嫌がる女性の声と、それに呆れる男性の声が外まで響いてきた。
「砂の国って、サンドワームがたくさんいるところでしょ!? 私ウネウネしたの嫌いなの! 行きたくなーいー!」
「冒険者がそんなことでどうすんだよ……。大体、ウチのグループに指名で依頼が来てるんだぞ? 断れるわけないだろ」
「それだったらみんなで行ってきてよ! 私はここで留守番する!」
「そういう訳に行くか! 魔術士に離れられたらこっちが困るわ! ……あのなあ、ここでミラが行かなかったら、クルムがそのウネウネしたのに喰われるかも知れないんだぞ? しかも、ミラが知らないところで、だ。それでいいのか?」
「うっ……。うぅ~~~~~……、むぅ~~~~~」
男性――グレイブが、女性――ミラを必死に説得する。ミラは涙目で唸っていた。もし自分が参加しなかったら、クルムがサンドワームに……。しかも自分の名前を呼びながら泣き叫んで……。そこまで想像してしまったところで、がたっと立ち上がった。
「分かったわ! 行く! クルムは何があっても私が守る!」
目が完璧に据わり、ちょっと泣いていた
「やべえ、やり過ぎたかな……」
グレイブがポツリと呟く。だが直後、行くならまあいいか、と思い直した。
こうして、クルム達の学生交流会にグレイブ達の冒険者グループが参加することになった。
砂の国やら、サンドワームやらについては次で説明しますので、少々お待ちくださいね。
英語がムチャクチャなのはカンベンしてくださいな。
これからもよろしくお願いいたします!




