幕間 それは寝グセ?
お久しぶりです。ちょっと短いですが、前回あんな話をこさえてしまった故、
お口直しをご用意いたしました。
次あたりの本編で、リピアの過去編圧縮バージョンを記載いたします。
では、どうぞ~。
ある日の朝のこと。
「おはよーぅ……」
クルムが眠そうに目をこすりながらドアを開けて来た。
「クルム、おはよう」
マルタが笑顔で出迎える。と、
「あら、クルム……」
マルタがクルムの頭の上あたりに注目した。
「?」
クルムが首を傾げる。
クルムの髪の毛は子どもらしい、艶のある黒髪である。それぞれの長さはというと、前髪は目にギリギリかからないくらい、側面と後ろは首に届くくらいである。髪の量が多いので耳は隠れてしまっている。そして、全体的に丸みを帯びたシルエットをしている。
この髪型がクルムの性別間違いを引き起こす一因になっているのだが、本人がいたく気に入っているのと、とても似合っていたので、カットしたりせずにそのままにしていた。
そんなクルムの髪型なのだが……。
「てっぺんの髪の毛……、立ってるわよ?」
いつもは跳ねないクルムの髪の、頭頂部のところが1房立っていた。
「え?」
クルムは両手で頭を押さえた。押さえた手に立った髪の感触があった。
「どうしたのかしら……。ちょっとクルム、こっち来なさい」
手に櫛を持って、マルタが手招きした。
ところが。
「直らないわねぇ……」
マルタが手に櫛を持ったままため息をついた。
髪の根元を水で塗らし、櫛で梳いても頑固にポジションを保ったままだった。
「何でかしら?」
眉根を寄せて考え込み始めるマルタだったが、
「おーーい、クルム! 行こうぜ~!」
外からシモンの声が聞こえてきたため、
「あ、もう来ちゃったの? しょうがない、クルム、今日はこのまま行きなさい」
「あ、うん」
クルムは愛用の肩掛けかばんを持ち、頭頂部の寝ぐせをひょこひょこ揺らしながら出かけていった。
「クルム、どうしたの? 髪の毛」
学校に向かう途中で、カリンに聞かれた。
「うん、朝起きたらこうなってて……、直らないの」
カリンが手櫛で直そうとしてみたが、やはりだめだった。
「お~、おもしろ~」
シモンが立ったままの髪で遊びだした。
「コラ、シモン、止めなさい!」
ライムがたしなめた。
相変わらずひょこひょこと動く髪を気にしながら、クルム達は学校に向かっていった。
別の日のこと。
クルムはマルタと魔術の練習をしていた。相変わらず火を出したりといった攻撃系の魔術は使えないままなので、癒しの魔術を中心に練習している。
いつも通り、クルムが魔術を発動しようと集中していると、
「あら? クルム、髪の毛が……」
立ったままのクルムの髪が、魔素の活性化と合わせてクルクル回っていたのである。
「?」
マルタを見たクルムが首を傾げると、髪もそれに合わせてクルンと丸まった。
(やだ、面白い……)
マルタはこの光景を見て、頭頂部で立っている髪をしばらくこのままにしておこう、と決めた。
はい、という訳でクルム君に属性「アホ毛」が追加されました。
本編再開時にも反映いたしますよ~。
本編も早く再開させますので、どうかご容赦を……。




