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そして少女は…

そりゃーっ! 3連続だ!

第2章、6パート目でござい!

どうぞ~。

 校舎内で迷ってしまったクルム。きょろきょろと周りを見渡しながら歩いていると、

「あれ、クルム? こんなとこで何やってんの?」

 と、聞き覚えのある言葉が響いた。

 声のした方を向くと、そこにはフィンが立っていた。


「あ、フィンお兄ちゃん!」

「おう、フィンだぞ~。どしたんだ、こんなとこで」

「ミルトニアお姉ちゃんに屋上に来るように言われたんだけど……。行き方が分からなくなっちゃって……」

「え? 階段使って上まで行くだけだろ?」

「その階段ってどこにあるの?」

「……あー、そっか」

 ミルトニアに指定された屋上のある校舎は4階建てで、1~4階の間を移動するためには校舎両端にある階段を使うのだが、屋上に行く階段は4階の真ん中にしか無いのである。普段生徒が屋上に行く用事は無いので、入学式の時も特に説明されることは無かった。ミルトニア達は学校生活が長いので行き方を知っていたが、入学して2週間ちょっとのクルムはまだ知らなかったのだった。


「そうか、まだ知らないよな~。……分かった、案内してやるよ」

「ホント?」

「ああ、こっちだ」

 フィンが歩き出したので、クルムは後を追った。


「しかし、何だってミルトニアのやつはクルムを屋上に呼び出したんだろうな」

「う~ん?」

「なにも聞いてないのか?」

「……うん」

 クルムをチラと見たフィンは、

「……そっか。まあ詳しくは聞かないよ」

 あさっての方を見ながらそんなことを言った。


「さて、4階だ。ここの真ん中に階段があって、上がると屋上だぞ」

「お兄ちゃん、ありがとう!」

「いいってことよ。ここから1人で大丈夫……」

「あれ、フィン? こんなところで何してるの?」

 2人が振り返ると、フィンと同年代と思われる女子生徒が立っていた。

「げっ、ジニア……」

 フィンが顔を引きつらせながら唸ると、

「げっ、なんて随分なご挨拶だね。なんかまた悪いことでもしたのかい?」

 女子生徒がずいっ、とフィンに近寄った。

「……いや、してないぞ?」

「目が泳いでる」

 一刀両断だった。


「お兄ちゃん。このお姉ちゃん、だあれ?」

「え? あ、ああ、コイツはジニアっていってな……」

 わたわたとクルムに説明を始めるフィンにため息をつきながら、

「初めまして。ボクはジニア・リネアリア。フィンとは家がお隣さん同士なんだ。よろしくね、クルム君」

 クルムに向けて言った。

「あれ、どうしてぼくの名前を知ってるの?」

「だって、ボクたちの間じゃ有名だもん。『フィンが入学式の時に可愛い子を泣かした』って」

「うわ、バレてーら……」

 フィンが頭を抱えた。

「また泣かされそうになったらボクに言ってね。ちゃ~んと、言い聞かせておくから」

「でも、フィンお兄ちゃんはとっても優しくしてくれるよ?」

 その言葉を聞いたジニアはフィンの方を向くと、

「……フィン、君はこんなにいい子を泣かしたの?」

「やめろ、今心が痛い……」

 ジニアは白い目をフィンに向けた。


「それで、フィンはクルム君とこんなところで何してるの?」

「あ、そうだ。クルム、屋上行かなくていいのか?」

「あ、そうだった。行かなきゃ!」

「そっち行ってしばらくしたら上に上がる階段が見えてくるからな」

「うん! お兄ちゃん、ありがとう!」

「ああ、気をつけろよ」

「うん、ばいばーい!」

 クルムはフィンに手を振った後、屋上へ上がる階段の方へ向かっていった。


「ねえ、クルム君なんで屋上に行ったの?」

「ん? ああ、ミルトニアに呼ばれたんだと」

「ふぅん……? 後輩を屋上に呼び出す先輩……? ねえ、ボク達も屋上に行ってみない?」

「え? いや、さすがにそれはまずいだろ……」

「でもさあ、なんか怪しくない?」

「それはそうだが……」

「ほら、行くよ! なんかあってからじゃ遅いし!」

「あ! コラ、待てよ!」



 クルムが屋上への階段を上がると、大人数名が扉から外を覗いていた。その大人の1人が、

「あれ? おとーさん? 何やってるの?」

 おとーさんこと、アルスだった。

「ぅおう! クルム? あれ、何でここに?」

「え、ぼくは屋上に行くんだけど……」

「あ、そうか? ああ、そうか、ハハ、そうだったな」

 とても挙動不審なその姿にクルムは首を傾げた。

「おとーさんはどうしてここにいるの?」

「いや、ちょっと学校の見回りにな、ハハ……。お、お前ら、次行くぞ」

 大人たちは階段を下りていった。その様子を最後まで見ていたクルムは頭の中で「?」マークを浮かべながら、屋上の扉を開いた。


「あー、ビックリした。まさかクルムが後ろから現れるとは……」

「どうすんだ?」

「うーん、そうだな……」

 アルス達が階段を下りてくる様子をフィンとジニアは目撃した。

「ねえ、あの人達、クルム君の名前言ってたよね」

「ああ、そうだな」

 その大人たちの中にクルムの父親がいることを2人は知らない。

「怪しくない?」

「……怪しいな」

 そして、不審者認定されてしまった。

「ねえ、フィンはクルム君のこと見ててよ。ボクは先生に知らせてくるから」

「分かった。かち合わないように気を付けろよ」

「任せてよ」

 ジニアを見送ってから、フィンは階段を上がり、扉を少しだけ開いて様子を伺い始めた。



 屋上に出たクルムの前には、夕日に染まった空と、その下に佇む2人の女子生徒、リピアとミルトニアの姿があった。そしてミルトニアの周りには、精霊と思しき光がふわふわと漂っている。

「あなたは……クルム?」

 リピアは驚いた顔をクルムに向けている。

「クルム君、来てくれてありがと」

 リピアとは対照的に、ミルトニアは笑顔を浮かべていた。

「ミルトニア、どういうこと? ……あなたが呼んだの?」

「黙ってたのは謝るけど、怒らないでよ」

「私がどういう存在なのか、あなたは分かるでしょ?」

「知ってるわよ。そのせいであなたが孤立してることも。でも、クルム君なら心配ないわよ。あの子も『見える』もの」

「……え?」

「ね、クルム君?」

 突然呼ばれたクルムは多少驚きながらも、

「え? うん、リピアお姉ちゃんのまわりにいっぱい、キラキラしたのが見えるよ?」

 そう答えた。

「……そうだんだ」

 リピアはうつむいて、呟いた。

「……そのキラキラしたものが、どういうものなのか、クルムは知ってるの?」

「”せいれい”っていう名前で、エルフの人とだけおしゃべりできて、でもまわりの人からは嫌われちゃって、それで、それで……」

 指を折りながら必死に説明しようとするクルムを見て、リピアはクスリと小さく笑った。

「分かったわ。精霊のこと、ちゃんと知ってるのね」

「あら、私が説明する必要、なくなっちゃったのね」

 ミルトニアが小さく呟いた。そこまで調べたのかと、少し驚いてもいた。

「それなら、私と関わらないほうがいいって、分かるでしょ?」


 リピアのその言葉は、思ったよりも遠くまで響いた。ミルトニアも扉から様子を見ているフィンも、ぐっと息を飲み込んだ。

「私は魔術を習っているけど、でもいつ暴発するかも分からない精霊と一緒にいるの。私と一緒にいたら、あなたも巻き込まれるかも知れないわよ」

「リピア! それは……」

「私にその気が無くたって、この子たちがどうかは分からないもの」

 リピアは周りで浮かんでいる精霊たちを見ながら、そう呟いた。精霊たちは何を言うでもなく、その場に漂い続けている。


「だからクルム、あなたも私と……」

 関わるな、と言いたかった。

「でも、ぼくはそんなことないと思うな……」

 クルムがそんなことを言い出さなければ。

「……え?」

「だって、お姉ちゃんのせいれいって、とってもきれいだもん。誰かにケガさせちゃったりとか、絶対しないと思うもん」

「……だから言ったでしょ? それは私じゃどうにもならないって……」

 リピアは思わず顔を上げた。するとクルムがずっと自分の目をまっすぐ見ていることに気付いた。綺麗な目だな、と場違いにもそう思った。

「それに、お姉ちゃんが『誰も傷つけたくない』ってずっとせいれいさんにお願いし続けてるから、せいれいさんもずっとそばにいてくれてるよ?」

「……それは!」

「お姉ちゃんはホントは優しいから、だからみんなを近づけたくないだけで……」

「……やめて」

いつか自分がドラゴン(’’’’’’’’’’)と戦って、自分がいな(’’’’’’’’’’)くなっても悲しむ人が(’’’’’’’’’’)いないようにって(’’’’’’’’)……」

「! やめて!」

 その言葉を聞いた瞬間、弾けたようにリピアの感情が爆発した。ミルトニアでも聞いたことの無い声を上げたリピアは、クルムが入って来た扉から出ていってしまった。扉が開いた瞬間、「おわっ!」という声が聞こえたが、誰も気にする余裕が無かった。


「リピア……」

 ミルトニアはリピアが走り去った扉を見て、顔を歪めた。

「ぼく……、ぼく……、お姉ちゃん、おこらせ……ちゃった?」

 クルムはその場にペタンと座り込み、すすり泣き始めた。

「あ、クルム君……。ごめんね、こんなことになっちゃって……」

 クルムの声にハッとなったミルトニアはのろのろとクルムに近寄り、優しく抱き寄せた。そこに、様子を伺っていたフィンもやって来た。

「……ミルトニア」

「あ、フィン……、見てたの?」

「……ああ、悪い」

「ううん、いいの……。リピア、どうしちゃったんだろ……」

「分からない。多分、クルムは何か感じたんだろうけど、それはリピアに触れてほしくないことだったんだろ」

「……そうね。私もぜんぜん聞いたことの無い話だった。でも、クルム君が出任せを言ったわけでも無いみたい」

「とにかく、ここにいてもしょうがない。クルムを家まで送ってやらないと……」

「うん、そうね。クルム君、立てる?」

 腕の中のクルムを見る。

「お姉ちゃん、ぼく……」

「いいの。リピアも慣れてないこと言われたから、びっくりしてるだけよ。だから大丈夫、ね? さ、帰りましょ。早くしないと暗くなっちゃうわ」

 何とかクルムを立ち上がらせ、3人は屋上を出た。



 校舎に入ると何やら騒がしい声が聞こえてきた。

「だーっ! しつこいぞ! だから俺たちは怪しい奴じゃないっての!」

「怪しい奴はみんなそう言うんだ! いいから大人しくしろ!」

「俺はここに通ってる子どもの親だぞーーっ!」

「何あの声?」

「さあ?」

 2人は顔を見合わせ、「?」マークを浮かべた。

明日は諸事情でちょっと上げるのは難しいです。

まあ、今回いつもの倍くらいのボリュームにしたので、どうかご勘弁を……。

今回もお読み頂きまして、ありがとうございました。

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