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マリゴールドクラスの生徒たち

第2章、3パート目です!

珍しく早く上げられました。どうぞ~。

 マリーの後ろをおっかなびっくり進むクルム達。その様子は親鳥について行く雛のようである。それを見る少年少女たちの方も、どんな子が来たのかと興味津々である。

 最後尾にいたカリンが入って数秒、教室のドアが閉まったとき、どこからか「ガコン」という音がした。

(((何、今の音?)))

 と教室にいたほとんど全員が思ったが、その疑問はすぐに解決された。なぜなら、天井からやけにおどろおどろしい人形が落ちてきたからである。……クルムの前に。人形はクルムの目線の高さのところで止まった。


「あ! 何これ!」

 マリーが驚いた声を上げる。見ると座っている少年少女たちのほとんどがあっけに取られた顔をしていた。

「いや~、大成功!」

 その中で声を上げたのは最初に先生に声を掛けた少年だった。

「ちょっと、どういうこと!」

「いや、今回は先生を対象にしたんじゃないんで」

「でも、最初にドアを開けたときは何も無かったじゃないの!」

「そりゃそうですよ。3回目にドアが閉まり切ったら作動する仕掛けにしたんで」

「は?」

「いや、だから、俺朝一に来て仕掛けたんです。で、開けっ放しにしとく。それでここの連中が全員来たらさりげなく閉める。で1回。次に先生が入って来て閉めたのが2回目。最後に今ので3回目。それで3回目になったら人形が落ちてくるようにしてたんです。いや~、うまくいった!」

 その説明を聞いた全員がポカーンとしていた。

「な、何て無駄に凝った……」

 誰かがぼそりと呟く。全員の心の声を代弁していた。

「せっかくこのクラスに来てくれたんですから、やっぱり他とは違うことやって歓迎しないと、と思いまして、ええ!」

 相変わらずハイテンションで語り続ける少年。一方、被害を喰らったクルムは沈黙し続けていた。


「ちょっと、クルム、大丈夫?」

 ライムが声を掛ける。クルムは無言のままだった。

「……」

 その時、クルムの眉が「八の字」になり始めた。

((あ、やばい))

 何人かがこの後に起こることを正確に予想した。

「……う、グス、ヒック」

 そして予想通り、クルムは泣き始めてしまった。


「あ、あれ?」

 自分の思っていたことと違うことが起こり、慌て始める少年。

「せっかくこのクラスに来てくれた子を泣かすなんて……。覚悟はいい?」

 鬼の笑顔を浮かべて少年の方を向くマリー。

 少年の悲鳴が響き始めた横で、ライム、カリンと少女たちが揃ってクルムを慰めていた。



 十数分後。

「さて、それじゃあ改めて自己紹介と行きましょうか」

 騒動が一通り落ち着いたところでマリーが声を掛けた。クルムがまだグスグス言っているのをちらと見て、

「じゃ、先にあなた達から……。もう変なマネはしないようにね」

 どこかボロボロになった少年が立ち上がるのを見て、ジロリとにらんだ。


「あー、俺はフィン・コリンってんだ。……あ~、その、さっきは悪かった。今度からちゃんと気を付けるから、許してくれ」

 バツが悪そうな様子のフィン。クルムは赤くなった目で上目遣いをしながらこくこく頷いた。ちなみにマリーの後ろに体半分を隠している。

(うっ、なんかすごい罪悪感……)

 フィンの心にザクザクと何かが刺さる。フィンは自分のせいだと思っているが、何のことはなく、いつもの人見知りが発動しているだけだった。


「次は俺か……。俺はコナー・グリーヴ。一応フィンが暴走したときのストッパーみたいなポジションなんだが……。まあコイツに悪気はないし、許してやってくれ」

 コナーはこのクラスでは最も背が高く、スラリとした体形をしている。ライムもカリンも揃ってほえー、みたいな顔をしていた。


「僕はレナルド・ライリーです。さっきはフィンがひどいことしちゃって、ゴメンね。学校で何か分からないことがあったら気軽に聞いてね」

 レナルドはフィンやコナーと比べるとどこか大人しそうな感じである。だが、優しそうで、どこか安心できる雰囲気を漂わせていた。


「次は私? 私はミルトニア・ドロレスよ。もう大丈夫? あのバカがまたやらかしたらいつでも私に言ってね」

 長い髪をポニーテールにしているミルトニアは活発さがそこかしこから出ている。クルム達の方を見てウインクをする姿は、頼りになるお姉さんという感じである。


「……リピア」

「「……」」

「あ〜、ごめんねえ。この子、無口で気難しいのよ。悪い子じゃないから、許してやって」

 銀色の髪を持つ少女がボソッと呟いた後で、ミルトニアがフォローしていた。リピアは興味を無くしたようにそっぽを向いてしまった。


「あ、僕? 僕はヴァルターです。えーと、今は基礎教育の最上級生で、これからどの道に進むか考えてるところです。……えー、先輩のイタズラに負けないよう、頑張ろうね」

 ヴァルターは小さめの眼鏡をかけた小柄な少年であった。どことなく苦労人っぽい雰囲気が漂っており、フィンがニヤッと笑うと、びくっと体を震わせた。


「最後は私ね! 私はレリア・プルプラタ! こっちのヴァルターがあんまりにも情けないから、いっつも私が守ってあげてるんだから! これからよろしくね!」

「な、何言ってるんだよう……!」というヴァルターの嘆きは思いっきり無視された。勝気そうなレリアは慌てるヴァルターの横で堂々と腕を組んでいた。


「はい、みんなありがとうね~。そしたら次はあなた達の番よ」

 マリーがクルム達の方を向いて促す。最初に手を上げたのはシモンだった。


「はい、俺はシモン! 夢は冒険者になることです! よろしく!」

「おー、冒険者だって。俺たちの後輩か~」

 シモンの言葉に反応したのはコナーだった。どこか嬉しそうにシモンを見ている。


「私はライムです。私は魔術士になりたいなあって思ってます。よろしくお願いします!」

「魔術士? 私達と一緒だあ、嬉しいなあ!」

 ライムの言葉にはミルトニアが反応した。隣のリピアの腕をばしばし叩いているが、リピアは無関心を貫いていた。


「あ、えっとカリンです。……私も魔術士になりたいって思ってますけど、絶対なりたいって訳じゃなくて、その、これから考えていきたいっていうか、あの、よ、よろしくお願いします……」

「うん、時間はたくさんあるからゆっくり考えてね。僕も力になるから」

「ちょっとヴァルター、何言ってんの! あんたいつからロリコンになったの!」

「ええ!?」

 カリンのことを気遣った(つもり)のヴァルターにレリアが噛みついた。周りは生暖かい視線を2人に向けた。


「そして最後に……」

 マリーが自分の後ろを見る。クルムがしがみついたままだった。

「ホラ、がんばって!」

 ライムがクルムを引っ張り出した。クルムはミラとライムの服の裾を掴み、恥ずかしそうに頬を赤くしながら、

「あ、えと、クルム……、です。その、えと、あの、あぅ……」

 と言ったが、そこで限界だったのか、下を向いてそれ以上何も言えなくなってしまった。

(ああ、かわいい……)

 一部の少女たちは両手を顔に当てて、悶えていた。

 別の生徒たちは何とも言えない笑顔を浮かべていた。

 極一部の生徒は相変わらず心に何かが刺さるのを感じていた。

 別の生徒は興味ないふりをしながら、チラチラ様子を伺っていた。


「まあ、いきなりみんなの前でしゃべるのも大変だろうし、徐々に慣れてくれればいいわ。それじゃみんな、これからよろしくね!」

 こうして、クルム達の学校生活がスタートした。

え~、ブックマーク数50件突破しました。ありがとうございます!

何か記録更新するの待ってから上げてるみたいに思われそうなので、もうちょい更新速度上げてガンバリマス(´・ω・`)

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