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そして少女は、少年と出会う

お待たせしてすみません…!

第2章、2パート目です! 入学式とか、どんな話をしてたかロクに覚えてません。

印象に残っていることと言えば、校長が壇上で水を飲んだらムセたこと……(汗

 学校内のとある教室。7人の少年少女たちが窓から正門を覗いている。

「おー、今年もたくさん来てるなあ」

「だな。毎年のことだが、今年は結構な人数だな」

「またにぎやかになるね」

 3人組の少年たちが口々に思ったことを言い合っている。

「今年はウチのクラスにも入ってくれるのかしら」

「うん、是非入ってほしい。イタズラの被害が分散されるから……」

 先ほどの3人組よりは年少の、少女と少年が続いた。少女は楽しそうに外の様子を見ているが、少年はげんなりとした、どこか懇願するような感じで呟いていた。

「ねえ、ホラ。外にいっぱい後輩たちが来てるわよ!」

「……そうね」

 あと2人の少女たちは自分の席に座っていた。正確には少女の1人が興味無さげに座っていて、その隣でもう1人の少女があれこれと話しかけている、という状況である。


「何だお前、キョーミないのかよ。お前もこっち来いよ~」

 窓際にいた3人組の一人が席にいる少女に声をかけるが、

「……別にいいわ」

 そっけなく応じるだけだった。その表情は銀の髪に隠され、伺うことはできない。

「全くもう……」

 隣の少女は頬を膨らませていた。



 一方その頃。

 クルム達は学校職員の指示に従って、講堂に向かっていた。なお、アルス達とはこの時点で別行動となっている。

「すごい人だね~」

 カリンがきょろきょろと周りを見渡す。

「はぐれないようにしなさいよ」

 ライムがいつも通り、クルムの手を引きながら注意を促した。シモンはいつも通り、先頭をずんずん突き進んでいる。

「シモン、そっちじゃない!」


 講堂の入り口に着くと、クルム達4人は赤い色の紙を渡された。無くなさいように、との注意も添えられて。他の子ども達を見ると、人によって紙の色は白だったり青だったり様々だった。

 そして子ども達、そして親たちが全員講堂に並べられた席に付くと、入学式が始まった。



 中央都市(セントラル)にあるこの学校がどのような教育を行っているか、アルス達が持っている学校案内より抜粋する。

 学校のカリキュラムは大きく2つに分かれている。1年目から4年目が基礎教育の期間で、読み、書き、社会など基礎的な能力を養成する。基礎教育の期間が終了するとそのまま卒業することもできるが、希望者は更に専門的な教育を受けることができる。


 専門的な教育は幾つかあるが、代表的なものを挙げると騎士、冒険者、役人の養成、などなど……。それぞれで必要な教育量が異なるため、卒業年数も違う。今挙げた例で言えば、冒険者は卒業まで3年だが、騎士は卒業まで4年かかる。騎士が冒険者よりも1年長い理由は、上流階級のマナーを身に付ける期間がプラスされているからだった。


 更に他の教育機関にはない特色として、上流階級、つまり貴族と平民の区別をしないという点がある。これは互いに互いを良く知るべし、という学校の方針に基づいており、教育内容も差別化はしていない。貴族のみが受けるような教育は、それぞれの家で家庭教師が教えているため、学校では取り扱わない。


 以上が大まかな内容である。子ども達がこの学び舎でどんな才能を開花させるのか、どんな未来を選択するのか、どれだけ成長してくれるのか、その答えが見られるときはすぐそこまで来ていた。



「はい、そしたらこの後はこれから来る先生たちの言うことを聞いてね」

「「「はーい!」」」

 入学式終了後、子どもたちは教室で先生の話を聞いていた。子ども達のクラス分けは、入学式前に渡された色紙によって行われたため、クルム、シモン、カリン、ライムの4名は同じクラスとなった。4人以外にも赤い紙を持った子供たちが26人、合わせて30人が1クラスに集まったのである。

 今クルム達がいるのは「授業クラス」と呼ばれるクラスで、これから1年はこの30人が同じ教室で学ぶことになる。そして、このクラスの担任となるのは、先ほどまで話をしていた若い女性で、名をマリゴールド・カフレンという。


 マリゴールドの話が終わってしばらくすると、別の教師が何人か入って来て、子ども達の名前を呼ぶ。呼ばれた子ども達が集まると、教師が引率してどこかに連れていった。そんなことが何回か続いた後、教室に残ったのはクルム達4人だけとなった。

「ごめんなさいね。みんなの担当は私になるから、どうしても最後になっちゃうの。それじゃ、行きましょうか」

 子ども達がなぜ授業クラスから幾つかのグループに分かれたか、それは授業クラスとは別にもう一つ所属するクラスがあるからである。そのクラスは授業クラスに対して「HR(ホームルーム)クラス」と呼ばれている。HRクラスは各学年から何人かずつが集まることで1つのクラスが構成され、学校行事関係は基本的にこのHRクラスで参加することになっている。これは授業クラスの中だけで人間関係の構築を完結させないように、という配慮と広い社会性を育てる、という目的によって行われている。



「さあ、着いた。ここがあなた達のHRクラス。先に私がクラスの子達に話をするから、ちょっとここで待っててね」

 マリゴールドは教室のドアを開けた。……なぜか開けた直後に周囲を警戒していたが、特に何も起こらなかった。


「おっ、マリー先生、待ってましたよ」

「お待たせ。……今日はさすがに何も仕掛けなかったのね」

「え? そりゃー当たり前じゃないですか~。俺らのかわいい後輩にひどい事なんかしないですよ~」

 教室に入ったマリゴールドへ最初に声を掛けたのは3人組の少年グループの1人だった。マリゴールドがこの少年を受け持つようになってからというもの、少年から受けたイタズラの被害は数知れず。最初はドアに挟んだ黒板消しが頭上に落ちてくるという大変ベタなものだったが、マリゴールドが被害を貰わないように対抗策を用意するようになると段々イタズラがエスカレートし、ひどいものだとドアを開けた瞬間に反対側の窓から黒板消しの山が飛んでくるようになっていた。

 この学校へ新任教師としてやって来たばかりなのにこの仕打ち。だが、出会ってから半年くらい経った頃、いつも通りイタズラの被害にあったマリゴールドの悲鳴が響いた数秒後、今度は少年のものと思われる悲鳴が響いた。近くの教室にいた教師が何事かと駆けつけてみると、笑顔で折檻……もとい、教育的指導をするマリゴールドと、ボロ雑巾になりかけた少年がいたのである。

 どうやら積り積もったものが一気に爆発、俗にいうところの”プッツン”状態になってしまったようで、マリゴールドが正気を取り戻したのは一通り暴れ終わってからだったという。

 その後教師も生徒も然るべきところからお叱りを受け、この事件は終息したのであった。


 マリゴールド本人としては消してしまいたい黒歴史そのものだったが、多少のトラブルには動じない精神的耐性も身に付いたため、どうにも悩ましいところである。少年の方のイタズラについては止む気配は無いが、無用な被害を出さないようにはなっていた。

 そんな事件がありはしたもののクラスの仲は良好で、クラスの生徒はマリゴールドを愛称の「マリー先生」と呼んでいる。


 今日は入学式。そんな日だからこそ何かしでかすのではないか。そんな心配をしたマリーだったが杞憂に終わったようで、内心ホッとしていた。……少年がこっそりあくどい笑みを浮かべていることに気付かず。



「センセ、それでどんな子が来るの? 早く!」

 別の少女が待ちきれない様子で催促する。

「まあ慌てないの。ちゃんと全員いるわね。えー、今年はこのクラスに4人、新しい子たちが入ってくれることになりました。今廊下にいるから呼ぶわね。入ってきて!」

 マリーはドアを開けて、クルム達を呼んだ。


「入ってきて、だって」

 カリンがみんなの方を向く。

「誰が先に入る?」

 ライムは入るのをためらっているかのようである。

「じゃ、俺が先に入るよ」

 シモンが手を挙げた。

「クルム、シモンの次に入ってくれない?」

「え? うん」

 ライムはかなり緊張しているようで、クルムに2番目を譲った。ちなみに最後尾はカリンである。


「さ、早く入って入って!」

 マリーの手招きに応じるように、そろそろと4人は教室に入る。クルム達の前には日の光に照らされた明るい教室の中で、思い思いの場所に座っている7人の先輩たちがいた。

 クルムはその7人を順番に見る。体の大きい少年、嬉しそうにこちらを見ている少女、色々な人がいるが、ある少女のところでクルムの目が止まった。その少女もクルムの方を見ている。少女の持つ長い銀色の髪が、心地よいそよ風に揺らされた。

 こうして入学式の日に、少女は少年に出会った。だがその出会いが特別な意味を持つことは無かった。今は、まだ。

ついにユニーク数が3,000を越しました。

毎度同じようなことしか言ってませんが、お越し頂いてありがとうございます!

これからも、クルム君の活躍を見守っていって頂ければと思います。

……次はもっと早く上げるぞ~(汗

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