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学校へ行こう!

やべえ、前の話に「ちょっとグロ注意ですよ」って書いとくの忘れてた……。


(今回から第2章スタートです! 子ども達もちょっと成長したので、漢字解禁です! やったぜ)

「えへへ、どうどう? 見て見て~!」

 クルムが新品の肩掛けバッグを下げてクルクル回っている。周りの大人たちはその様子を微笑ましく見守っている。クルムの隣でフェリも楽しそうに回っていた。

 クルムがこんなにはしゃいでいるのには理由があり、それは明日から学校に通い始めるからである。バッグもそのために買ってもらったものであり、一緒に筆記用具やノート用の紙も用意してもらっていた。


 クルムがギルドハウスで暮らし始めてから2年が経った。クルムは7歳になり、大人たちに見守られながら健やかに成長していた。……ただし性別の間違われ率は5歳の頃から変わっていない、どころか成長するにつれて少しずつ間違われ率が上がっていた。毎日のように見ているはずの大人たちでさえ、時々「あれ? どっちだっけ?」となってしまうくらいである。



 中央都市(セントラル)では義務教育制度があり、子どもたちは8歳になる年から学校へ通うことになっている。この国独自の制度である義務教育は、国の繁栄に多いに寄与していたが、他の国では中々実施に踏み切れないでいた。


 そもそも現在の環境で義務教育を行うためにはいくつかの問題がある。1つ目は資金の問題。当たり前だが教育はタダではできない。教えるための設備、モノを教えられる人材、教材、etc……、といった具合に、ひたすらお金がかかる。更に教育というものは、成果を出すために年単位の時間がかかる。それらの費用を毎年国が負担していたのでは、あっという間に国庫は空っぽになってしまうのである。

 したがって、これらの費用は教育を受ける側が出すことになる。その金額は庶民に賄えるレベルではないため、教育という仕組みは貴族の特権となっている国がほとんどである。


 2つ目に、教育を受ける子ども達の問題。都市と呼ばれる大きな所に住んでいる子ども達ならともかく、それ以外の場所に住んでいる子ども達は学校に行く時間が取れない。その理由は大人たちと並んで、子ども達も働き手としてカウントされるからである。

 元々人があまりいない場所では、人手不足を補うために子ども達を駆り出す習慣がある。結果として子ども達は学校に行く暇が無くなってしまい、それが代々続いて……、という具合に、教育を受けさせる隙間が生まれなかったのである。


 それ以外にも細々とした理由はあるものの、これらの問題が大きな壁となって、義務教育の実施を阻んでいる。中央都市(セントラル)のある「大地の国」もようやく安定して義務教育を受けさせることができるようになったが、そこに至るまでにはとても長い時間をかけたのだった。



 翌日。クルムの初登校日。

 昨日大人たちに見せていた新品のバッグにこれまた新品の筆記用具などを入れ、さらに今日のためにあつらえてもらった服を着て、学校へ出かける準備を整えた。

 クルムが外に出ると、これまた学校へ行く準備を整えたシモン、ライム、カリンが待っていた。

「クルム、遅いぞ!」

 シモンが声を掛けた。

「もう、シモン! 急かさないの!」

 ライムがシモンをたしなめた。

「いい天気だね~」

 カリンはマイペースだった。

 ちなみに、初登校日は入学式を兼ねているため、それぞれの両親も学校へ向かうことになっている。そのため、ギルドハウス前の人口密度は一時的に急上昇していた。


「あのちっちゃいクルム君がもう学校に通う年になったんだ……」

 ギルドハウスの中から様子をうかがっていたミラがボソッと呟いた。

「何年寄りくさいこといってんだよ……」

 隣にいたグレイブが返すと、ミラがギロリとにらんだ。

「しばらく午前中は寂しくなるなあ……」

 受付カウンターの向こう側にいるヴェリベルも呟く。すると、外にいたアルスが顔を覗かせ、

「じゃあ行ってくる。午後までには戻ってくるが、それまで留守番は頼んだぞ」

 と声を掛けた。

「はい、分かりました。帰ってきたら学校での様子、聞かせてくださいね」

 ヴェリベルが手を振りながら返した。



 学校は都市中央、王城の近くに建てられている。クルムたちはそこに向かって歩いていた。

「それにしても……」

 クルムを見ていたマルタが顔に手をやりながら何かを言おうとしていた。

「どうした?」

 アルスが聞き返すと、

「クルムってホント、他の子より小さくって、華奢よね……。ライムちゃんとかカリンちゃんと同じくらいの体格って、どうなのかしら……」

「ああ~~……」

 マルタの放った言葉に何も言えなくなるアルス。

 それもそのはず、今いる4人の子ども達の中では、一番背の低いカリンとクルムが同じくらいの身長なのである。具体的には、

 カリン ≦ クルム < 7歳女子の平均身長 < ライム < 7歳男子の平均身長 < シモン

 と、こんな具合だった。はっきり言って、クルムを後ろから見ると女の子にしか見えないのである。


「まあ、これからどんどん大きくなるさ」

 横で話を聞いていたシモンの父親がマルタに向かって声を掛けた。

「そうだといいけど……」

 ため息交じりにマルタが返した。


 そんなことを話しているうちに、都市中央にそびえる王城の前に着いた。王城の東側にある大きな建物が、目的地の学校である。入学式ということもあり、学校の前はたくさんの人であふれかえっていた。

「クルム、行くぞ。はぐれないようにな」

 アルスに先導され、クルム達は学校の正門をくぐった。

 これからどんな出会いがクルム達を迎えるのか、それは誰にも分からないが、その出会いがクルム達にとってプラスになるであろうことは、確信を持って言えることであった。

お読み頂きましてありがとうございました。学校は何しろ人が多いので、登場人物の名前も相当増えますが、頑張って覚えてください! その代わり、地名とかの固有名詞はなるたけ簡単に、少なく済ませますので……。

今後ともよろしくお願いいたします。このお話が、皆様の彩りとなりますよう……。



※本文中に出した平均身長ですが、数値は以下の通りとお考えください。

7歳男子の平均身長:122.5cm

7歳女子の平均身長:121.5cm

これは日本の2015年度の統計から持ってきています。食事事情が日本とは(悪い意味で)ダンチの世界でそのまま当てはまてもいいのかな? と少し思いましたが、大して変わらんだろうと思って、そのまま採用しています。

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