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あらしのあとに

当小説では、プロローグをゲームでいうところの「チュートリアル」という扱いにしております。そのため、事務的な説明が入ってしまいますが、できるだけさっさと済ませるようにいたしますので、どうかご容赦を…。

 二人は夜通し交代で看病を続けたが、子どもの容態が悪化することは無かった。そして嵐が収まり、朝日が昇り始めたころに子どもは目を覚ました。


「アルス、起きたわよ!」

 子どもを見つけた女性が呼ぶと、アルスと呼ばれた男性が答える。


「本当か、マルタ!」

 マルタと呼ばれた女性はうなずいた。


 その子の意識はまだはっきりしないようで、ぼんやりとした様子で視線を彷徨わせている。マルタが優しく

「大丈夫、どこか痛かったり気分が悪かったりしない?」

 と声を掛けると、その声に気付いた子どもの目がアルスの方へ向いた。


「ア……、ウ……」

 返事をしようとしているのだろうか、口を開けて何かを言おうとしているようだが、音が漏れ出るばかりで言葉になっていなかった。


「しゃべれないのか?」

 アルスがつぶやくと、

「起きたばかりで意識がはっきりしないんでしょ……。もう少し時間が経ったら医者に連れていくわ」

 とマルタが答えた。


 完全に夜が明け、少年を病院に連れていくための準備をしていたところで、ギルドハウスのドアから"ドンドン"という音が聞こえた。

 アルスがドアを開けるとそこには若い女性が立っていた。


「おはようございます。昨日はひどい嵐でしたね…。こちらは大丈夫でしたか?」

とギルドハウスに入りながら挨拶をしたが、

「丁度いいところに! 今から医者のところに行ってくるから、ここの開店準備お願いね!」

 とマルタは全く取り合わないどころか、ギルドの開店準備を丸投げして外に飛び出してしまった。


「え? え? どういうことですか?」

 混乱する女性に、

「まあ、ちょっと色々あってな……」

 とアルスはつぶやいた。



 アルスとマルタがギルドハウスの運営をしながら暮らしているのは、通称「大地の国」と呼ばれる国にある中央都市(セントラル)という、王城を中心とした円状の都市である。

 この都市は東西南北の地方都市とつながっているため、人や物流の流れが非常に盛んであることが大きな特徴となっている。

 中央都市(セントラル)に定住している人口をはるかに超える数がやってくるため、滞在するための宿場街も大きく、酒場やカジノなどといった周辺施設も充実している。

 それだけの人がやってくると、中には財布のヒモが緩くなる人もいたりするので、それを狙った商人が商売を始めることもあった。


 都市の外は街道が整備されているものの、旅をするには危険が伴う。積み荷を狙った盗賊や魔物がどこからともなく現れて襲いかかってくるからである。

 そのため、腕に自信がない場合護衛を雇うことが常識となっていた。先に述べた通り、中央都市(セントラル)は人や物流の一大拠点でもあるため、護衛の依頼は毎日ひっきりなしにやってくる。

 アルスとマルタが運営しているギルドハウスは、通称「冒険者ギルド」という組織の直轄であり、護衛やその他の依頼と、冒険者の斡旋、管理を主業務としている。

 しかし、現在マルタはそんなこと知ったことかとばかりに、ギルドハウスの開店準備を自分の主人と受付を担当している女性に丸投げし、保護した子どもを抱えて医者のもとへ駆け込んでいるのであった。



「見た限り大丈夫そうだ。もう少し安静にしていれば、体力も戻ってひとりで歩きまわれるようになるだろうよ」

 ギルドハウスから子どもを抱きかかえ医者の家へ駆け込んだ(その間子どもは特に抵抗しなかった)マルタは、医者からかけられたその言葉に安堵の表情を浮かべた。


「はあ、良かった……」

「うむ。しかしこの子が倒れていたことによく気づいたな。昨日の嵐は雨やら風やらで結構な音を立てていたはずだが……。おそらくだが、お前が気づかなければこの子は雨風にさらされ続けて命を落としていただろうよ」

そうつぶやく医者の表情は一瞬厳しくなったがすぐに緩め、

「だがこの子は助かった。たまたま玄関先を覗いたお前のおかげでな。ある種の奇跡だろうよ」

 と言いながら子どもの頭をなでた。


「奇跡の子、ね……」

 マルタは空を見上げながら言った。嵐が去った空は青く澄み渡っていた。


《今回のまとめ》

・ここは中央都市(セントラル)、色んな人がやってくる賑やかな都市だよ!

・アルスとマルタは「冒険者ギルド」直轄のギルドハウスを運営しているよ!

・だけどギルドハウスの開店をブッチして医者のところに行っちゃった。職務怠慢だね!



お読みいただきまして、ありがとうございました。

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