出会いと始まり5
「ど、どうゆうことですか!?」
さらりと告げられた言葉に、私はつかみかかるようにしてリズムさんの方に体を乗り出していた。
「え!?ちょっ!?うわっ!?」
「元の世界に返せる人がいるって本当ですか!??」
そう、さらりと告げられた言葉は"元の世界に返せる人がいるから"だった。
「ま、まあ、僕たちの知り合いにそうゆう力を持った人がいてね。その人なら君を元の世界に送り返してくれるだろう」
と、リズムさんは言った。
他の小説とかでは異世界に転移したまま帰れないとか、帰る方法があってもむちゃくちゃ困難なこととか、よくあるのに私は帰ろうと思ったら帰れるんだとも思った。
実際私はその言葉を聞いたときいろいろな不安が一気に消し飛んだ気がした。
だって、私は望んで異世界に来たわけじゃないし、そりゃ元の世界にだって飛び切りいいことは無かったけど、そこそこのいいことと、平和な日常。この二つがあれば、そこそこの幸せで暮らしていけるって自分でもそう思っていたし。
とか何とか自分でも何いってんのかわかんなくなっていることをいっているが、わかることはただ一つ、元の世界に未練があるのだ。何もかも吹っ切ってこっちで生活できるほど自分は小説にあこがれてない。
「ただし――」
喜んでいる私に、リズムさんは冷静な口調で、淡々と告げる。
「あの人は風来坊的な感じの人だから、いつ会えるかは分からないけど」
ものすごく落ち込んだ
なんだろう、この人は。人のテンションのアップダウンを操る天才なのだろうか?そうだとしても、私のテンションをアップダウンさせて何が楽しいのだろうか?
いやまあ確か昔友人に「リアクションが大きくていじっていると楽しい」とか言われましたけど!
「香奈ちゃんってみてるとたのしいわね~」
ほら言われた。
ちなみに言ったのは、最初座っていた二人のうちの女の人のほうだ。
「まあとりあえずその人と連絡を取ってみるよ。もしかしたら意外と連絡が取れて、すぐ帰せるかもしれないからね」
リズムさんはそういって、立ち上がると馬車の裏のほうへまわって行った。
リズムさんが連絡を取りに行った瞬間からあたりが静まり返ってしまった。
まあ、ただ自己紹介し合おうとしてたら、なんかとんでもない話になったからね。しかも司会進行してたのあの人だし。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
いつの間に汲んだのかは知らないけれど最初に座っていた女の人のほうが、お茶というか紅茶みたいなのを入れてきてくれた。
少し冷ましてから飲んでみる。
甘さはそこまで無く、すっとする味。
「どうかしら?わたくしが昔家族とよく飲んでいた紅茶なのですけど。お口に合いましたか?」
これ紅茶だったのか。紅茶を飲むのはこれが初めてなので、
「ええ、まあ」
と、こたえておいた。
「そう、それはよかった」
彼女はそういって、自分が入れた紅茶を楽しみだす。
……会話が続かない。
他の二人を見てみても、紅茶を味わっているか、ぼーっとしているのかのどちらかだ。
そして、それは。
「ん?あれ??みんなどうしたんだ?」
と言って、リズムさんが帰ってくるまで続いた。
続いてしまった。