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フラグ管理は各自でお願いします  作者: real
2章 運命《フラグ》が存在するのなら
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第28話  思考が空回りしています



 揺れる馬車の中、ずっと昨日の出来事が頭を巡っていました。

 彼が問いかけた言葉、名前は、どういう意味だったのか。

 聞き間違い? いや、そんなはずない。

 私の名前は今と昔でよく似ているけれど、それでも彼ははっきりとかつての名前を口にした。

 だってあれは聞き覚えのある音で……。


 当然詳しく話を聞こうと思ったんですが、ゼロさんはすぐに姿を消してしまいました。珍しく慌てた様子で、私から――逃げるように。

 その後しばらくは王都の中を探しましたが、自分が本調子ではないこと、遅い時間であること、そしてゼロさんが本気を出したなら私には見つけられないだろうと理解したために宿に戻ることにしました。


 考えが合っているのなら……ゼロさんは……彼は……。




「……リィム! 聞いてんの!?」

「ひゃっ!?」


 突然の大声に驚いてしまい、変な声まで出てしまいました。

 声の主はメサイア。どうやら呼びかけられていたのに気付いていなかったようです。


「ごめんなさい、聞いて、ませんでした……」


 昨晩は考えながらふらふらと宿に帰り着いたところでメサイアに見つかり結構怒られたんですが、話がほとんど頭に入ってきませんでした。

 あまりにも不自然な様子の私を見てお説教も止まったんですが……この調子ではまた怒られてしまいそう。


「はあ……ほんとどうしたのよ? 昨日帰ってきてからずっとその調子じゃない」


 怒った口調で、そのくせ心配そうな表情を浮かべながら問いかけてくるメサイアに、本当に何でもないのだと告げましたがメサイアの目はそんなはずないだろうと言っているようで……。

 でもごめんなさい、さすがに説明しきれないので……。

 まさか前世の記憶があって、その名前を呼ばれたのでその人にももしかしたら記憶があるのかもしれない、なんて言えないですよ……。

 と、隣から袖をくいくいと引かれました。


「ぼくのせい、だったりする……?」


 不安げな瞳で見つめてくるサニア。慌ててそうではないと伝えましたが、周囲は皆私の様子がおかしいことは確信しているようでした。





 心配をかけてばかりはいられませんね。気持ちを切り替えなくては。これから洞窟に突入するというのにこんな状態では先が思いやられます。


 今朝、王城より戻ってきた勇者さんとカインさんはトマスさんがいることに驚いたり、サニアが洞窟に向かおうとするのを反対したりと忙しない状態でした。

 と言っても、実は勇者さんのほうはサニアのことにあまり反対しなかったんですよね……時間がないからだと言っていましたけど、それにしてもあっさりしすぎだったような。

 ただサニアはひとりででも洞窟に行くつもりのようでしたから、そういう意味では目の届くところにいてくれたほうが安心なんですよね。勇者さんもそんな意図で反対しなかったのかも。


 何でそんな曖昧な認識なのかって言うと、私がうまく話すことができなくて……さっきから何度も話しかけてはくれているんですけど、なんと返したらいいかわからず口ごもってしまいます。

 ……理由はわかっています。前世かつてと重ねてしまうから。

 今は何を考えてもすぐに記憶が重なってしまう。似た姿、似た表情、思い出しているのは、いつの記憶?

 もしかしたら、もしかしたら。

 彼にも記憶があるんじゃないか、と。

 今はまだ忘れているだけで、いつか、思い出すんじゃないかと。

 ……そんな都合のいい話、あるはずがない。そう理解、しているはずなのに。

 けれど心のどこかでその可能性を考えてしまう自分がいて、延々と同じ思考の中に引き戻されてしまいます。果てしないその思考に、少し疲れてしまって。

 ごめんなさい、もう少し時間をください。



 落ち着くための時間がほしいんです。




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