幼馴染
遠藤 郁
主人公。バスケ部に所属高校一年生。
高校生になりモテはじめた。瑠華とは幼稚園からの幼馴染。
瑠華に片思い。
桐谷 瑠華
郁と幼馴染のバスケ部マネージャー。
超がつくほどの鈍感。
湯川 浩
バスケ部部長。二年生。
小説本放課後の教室、瑠華に呼び出された。
「なんだよ瑠華・・・。」
すると瑠華は大声で言った。
「ゆーたん誕生日おめでとう!」
そう言って瑠華はクラッカーを鳴らした。
「ありがとう。でも、そのゆーたんって止めてくんない?」
「別にいいじゃん!小さい頃からそう呼んでるんだからさぁ。あ、それよりプレゼント!」
瑠華はバックを漁り、一つの中くらいの箱を出した。俺はその箱のリボンを解き、箱を開けた。
「こ、これ・・・。」
中に入っていたのはギター用エフェクターだった。それもすっと欲しかったやつ。ずっと探していて見つからなく、再入荷を待っていた程欲しかったエフェクターだった。
「最近ギター始めたって言ってたからさ!お金とかあんまり無いからそういう小さいのでごめんね!」
エフェクターは小さくても一万弱はする。こんな物を買ってくれた瑠華の優しさに感謝をした。
「瑠華、ありがとう。」
俺は瑠華に笑顔を向けた。
「あ!待って待って!もっかいその笑顔お願いしますっ!」
「は?なんで?」
すると瑠華は携帯を出しながら答えた。
「なんかね、ゆーたんモテるのね!友達とか先輩からとかから笑顔の写真が欲しいって頼まれてたからさ!」
「え・・・。なにそれ。」
「だってゆーたんの笑顔をあんまり見た事無いんだって。だから待ち受けにしてぐふぐ・・・いや、励みにしたいんだって!」
「・・・。」
「わ!そんな冷たい顔しないで!んー、普通に笑うのになぁ・・・。そんなに見た事無いのかなぁ。」
瑠華は不思議そうに首を傾げたが、俺には笑顔があまり見れない理由がわかっていた。俺は瑠華の前でしか笑顔を見せない。すると瑠華も自然と笑顔になるからだ。瑠華の笑顔を他の奴に見られたくない。だから俺は瑠華に対しては最高の笑顔を見せる。最高の笑顔を見せれば瑠華も最高の笑顔になるから。
そんな事を考えているとどんどん険し顔になってきた。すると瑠華は心配して声をかけた。
「ちょ、ゆーたん険しい顔してどーしたん?」
瑠華の声ではっとした。
「な、なんでもない。笑顔の写真は無理だからな!」
「えー!けちんぼ!」
瑠華が頬を膨らませてそっぽを向いた。こんな顔も可愛いと思える。この顔も誰にも見せたくない。
瑠華の顔を愛おしく見つめていると、瑠華は廊下に笑顔を向けた。
「あ・・・!湯川先輩!!」
廊下にいたのは一つ上の先輩、湯川先輩がいた。湯川先輩はこちらに気づいたようで教室に入ってきた。
「おー、お前ら放課後でなにしてんだー?イチャイチャしてたんか?」
笑って湯川先輩がそう言うと瑠華は焦って否定した。
「ち、違いますよー!ゆーたんに誕プレ渡して撮影会しようとしてたんです!」
「誕プレ?撮影会?よくわかんないけど郁の誕生日なのか!?じゃぁ俺からもなんかあげるよ!」
「え、良いっすよ!そんな気使わなくても!」
「良いって!・・・ん~なんかポケットに・・・っお!」
湯川先輩は何かを見つけたようでポケットから何か物を出した。すると俺の手を引き、俺の手にポンッと渡した。
「な、なんすかコレ・・・?」
鼻息を「フンッ」と鳴らし、自慢げに湯川先輩は答えた。
「これはな、部活一回サボっても許される券だ!部長権限で許してやる俺が発行した券なんだよ!」
「は、はぁ・・・。」
「どーしてもズル休みしたい時はこれを使え!」
そう言い残して先輩は教室から出て行ってしまった。
「よかったじゃんゆーたん!いつでも部活がサボれるね!」
「俺基本サボらないし!」
「あ、ゆーたん真面目だもんね!あはは!」
瑠華は「関心関心」と言いながら笑っていると、いきなりもじもじし始めた。そして上目遣いで話かけてきた。
「あんね、ゆーたん。ゆーたんに聞いてほしい事があるんだ。」
「なんだよ。」
冷静なフリをしているが全然冷静じゃない。これは、瑠華から告白される雰囲気なのか?期待して良いのか?そう思っていると瑠華が話始める。
「ゆーたんにとって、うちの事可愛く見える?」
ドキッとした。これはもう確実なんじゃないか。そう思えてくる。それなら俺も正直言ってしまおう。
「可愛いと思う。」
「うちって性格悪いと思う?」
「思わない。でも元気すぎると思う。」
「そ、そっか・・・。じゃぁさ、湯川先輩から見たうちってどう写ってると思う?」
「可愛い子に見えてるとおも・・・、って何でココで先輩が出てくるの?」
すると瑠華はこれまでに見せた事が無いくらい赤面になった。瑠華は小さい口を開いて俺に言った。
「う、うちね・・・、湯川先輩の事好きなんだ・・・!」
「・・・え。」
衝撃的だった。ずっと片思いしてた女の子が高校入って知り合った男に恋してるなんて気づかなかった。
それにうぬぼれてた。自分で思うのもなんだが、高校入ってからモテるようになった。そして瑠華からのプレゼントもこんなに豪華だった。瑠華は俺の事が好きで、俺も瑠華の事が好きだから勝手に両想いだと思ってた。
あっけらかんとしていると瑠華は「どうしたの?」と首を傾げた。
「今、ゆーたんさ可愛いって言ったよね!?じゃぁ大丈夫だね!」
「俺が可愛いって言ったって、先輩がどう思ってるかなんて知らねーよ。」
「いや、モテるゆーたんが可愛いって言うなら先輩も可愛いって思ってくれてる・・・はず!」
「・・・あぁ、そう。」
俺は気力が無く、返事も聞こえるか聞こえないかぐらいのボリュームで言った。
瑠華は幼稚園の頃からの幼馴染。小学校にあがる頃には片思いしてた約十二年分の思いは無駄だったのか。悲しみに浸っていると、急に瑠華が慌て始めた。
「ゆ、ゆーたんどうしたの!?な、なな涙出てるよ!!」
「え!?」
瑠華が騒いで気づいたが、無意識のうちに涙が出ていた。涙腺は強い方なのに、こんなにも容易く涙が出た。
フラレた事がわかった今、この気持ちがバレないように嘘をついた。
「い、いや。花粉だよ花粉!俺花粉症なんだよ!!」
「え?そうだっけ?まぁ、でも目薬しなよ!」
そう言って目薬を出し、気遣ってくれる瑠華。昔からこうやって優しくしてくれた。
「ゆーたん、はい目薬!」
「ありがとう。」
目薬を渡す時、手が触れた。俺はそれだけでドキッとしたが、瑠華には何も無いんだな。俺と手が触れても何も思わないんだな。ただの『幼馴染』としか思わないんだな。
「はい、目薬。ありがとう。」
俺は目薬を返す時最後の望みをかけ、手を握った。すると意外にも瑠華は握り返してきた。するとその手をギュッギュッと握ってきた。これではまるでただの握手だ。
「ん?ゆーたん握手したいんじゃないの?」
「・・・まぁそんなところだよ。」
「あ!やっぱり!やっぱ幼馴染だと心が通じるね!」
全くもって通じて無い。でも、こうやって自然と握手できる関係も心地よいかもしてない。
「どうしたの?まだ目痒い?」
「え?あ、もう大丈夫!」
そう言って俺は精一杯の笑顔を瑠華に向けた。その笑顔に応じ、瑠華も笑顔で返してきた。その可愛らしい笑顔のままで瑠華は話した。
「ゆーたん、うちいつか湯川先輩に告白するかも!」
「・・・うん。」
「告白するときは絶対にゆーたんに一番に報告するから!失敗したら慰めてね!」
「・・・うん。」
「ゆーたん元気無いね?どうしたん?」
元気がなくなったのは瑠華のせい・・・、だなんて言えない。そうすれば瑠華の顔は歪み、この手も離れる。そんなのは嫌だから元気に振舞った。
「元気だよ!瑠華、プレゼントありがとうな!」
「うん!ゆーたんも聞いてくれてありがとう!応援してね!」
「うん!もちろんだ!」
『もちろんだ』こんな事言ったが、俺に瑠華の恋の応援ができるのか。
正直、俺は絶対できない。フラれれば良いと思っている。告白する前にぶち壊したい。邪魔したい。
もし瑠華の告白が成功したら俺は素直に喜べない。瑠華が湯川先輩のものになったら、この繋いでいる手も笑顔も湯川先輩の物になる。この辛いけど心地良い環境も無くなる。絶対に嫌だ。
でも、俺が今ここで気持ちを言えば今の環境はすぐに壊れる。
あぁ神様、願わくば瑠華がフラれる事を望むが、もしそれが叶わないのならこの心地よい環境を少しでも、一秒でも長く過ごしていたいです。
せめて、十二年分の気持ちが眠りにつくまでずっと待っていてほしい。
そうじゃなきゃ、俺は瑠華の嫌がる事をしてでも瑠華を手に入れるかもしれないから。
文
前のが少し悲しめのやつだったんで今回は爽やか!
でもまたもや悲しめ(/ω\)
幼馴染にありがちパターン書きました(つд⊂)
途中感情入ってハッピーエンドにしようかと思ったが、
その理由で何度もハッピーエンドにしてきたんで、
今回はこらえてバットエンド(^p^)
郁が不便です(´;ω;`)
ごめんよ!!