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記憶9

 三人組への下駄箱投入最終日、いつものように遅刻一歩手前で教室に入る。


 初日同様に挨拶でもしようかと思い、窓際にたむろっている三人組含め女子集団に笑顔で近づいて行くと、蜘蛛の子を散らしたように自分の席に着席された。それを見てクラスメイト全員も席に着いた。


 まだチャイムは鳴っていない。立っているのは私だけ。皆俯いて座っている。考えながら私も席に向かうことにする。


 どうした!何があった!


 それとも、新たなイジメか?


 今となっても、クラスメイト全員が異様な行動を何故とったのか分からない。




 その後チャイムが鳴り担任が入った時、第一声が発しられた。


「どうした! お前ら!」


 やはり、いつもクラスを見慣れている担任だけあって異様な空気を感じ取っていた。不幸なことに、感じ取り過ぎてキョロキョロと視線を漂わせていた。そして、俯いていて誰も視線を合わせようとはしない生徒達が居る。


 私はいつも通り真っすぐ担任が居る教壇に顔を向けていた。しかし、私に視線を向けられても訳が分からないので困ると思っていたのだが、そんな心配は要らなかった。


「何かあったのか?」


担任は一番近い席の生徒に話し掛けていた。


 その生徒は三人組の一人で、話し掛けられた途端、か細くて短い悲鳴を上げた。


「ひっ!」


「お、おい。どうした」


「あの…」


「どうした、何かあったのか?」


「あの、実はっ!」


 バサッ!


 あっ、小説を机の下に落としてしまった。悪い、悪い。話しの途中に物音させてしまって申し訳ない。


 屈んで小説を取り面を上げると―――


 どうした!皆さん!


 何故、皆さん私を見ている。今まで視線を合わさなかった担任まで何故私を、今、見る。


 三人組の一人、喋っていた女子大丈夫か?顔がなんか血の気が失くなって青くなっているぞ。そして、何故そんなに私を凝視するんだ。


 何だ、何だ、やっぱり新たなイジメなのか。呆れるな、全く。でも、皆さん愉快な顔だな。目が真ん丸になってこぼれ落ちそうだよ。同じ顔で見られたら可笑しい過ぎだよ。笑っちゃうよ、全く。


「ひっ!」


 短い悲鳴が顔が青ざめた女子からまた聞こえた。担任からも聞こえた。


 鈍い動作で手で口元を覆い、ギギギギと油を注さなければならない様な動きで前を向いた青ざめ女子は、


「…なんでも、無いです」


と、発した。


「…そうか、分かった」


それを受けた担任は、納得した様に呟いた。


 ええいっ、なんと中途半端な。伝えたい事はキチンと言葉にしないと伝わらないぞ。それでいいのか、青ざめ女子。


 一人釈然としない中、担任の一言。


「ホームルーム始めるか…」


その言葉に、仕切りに頷くクラスメイト。




 どうした!


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