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記憶8

 まず始めに誰より先に登校し、用務員さんが入口を開けてるまで木陰に隠れて待つ。確認ができたら昨日の内に調べ上げた三人組の下駄箱の中にある上履きに、手始めにガビョウを一個づつ投入する。誰も居ないことを確認し、教室には向かわず外に出て三人組が登校するまで隠れて待つ。チャイムがなる前に教室に入れば、だいたいの生徒は登校が終わっているので三人組もその時間には登校している。


 それまで読書をしながら待つことにしよう。


 隠れる場所は、校舎と塀の間にスペースがあり一本の大きな桜の木がある。木の下が木陰となり心地好い風もあるので過ごしやすい。なので、この場所はいつも私が昼休みを過ごす場所でもある。何より今まで他の人を見掛けたことがない。私のお気に入りの場所でとても快適に過ごせる。


 ちなみに、本日の本は昼ドラもビックリなドロドロな恋愛小説。あからさまな主人公イビリには感心する。こんな凄いイビリができる人は現実にはいないだろう。


 朝の清々しい空気の中、私の頭の中は鍋で何を煮込んだか分からないぐらいドロドロとした内容がグルグルしていた。


 暫し、読書を堪能していると時間は程なく過ぎ、遅刻になる一本手前でで登校し、教室に入る。どうも見たことある顔の三人組は、なんと全員同じクラスだったので一人づつ笑顔で顔を合わせれば完璧だ。ついでにサービスで『おはよう』と挨拶をしておこう。


 挨拶をされ、こちらを見る三人組は私が今登校したのが不思議みたいで頭の上にハテナマークが見える様な顔をしてる。そして、何だか慌てている。


 今からそんな顔をしていたら、心持たなくなってしまうのではないかと思いながら、食べ物の恨みはこんな物では済ましては牛乳に対して申し訳ないと思い直る。自分の席に着く間、これからの計画の最終見直しを行った。


 まぁ、もともと私の牛乳ではなかったけど。


 いや、でも食べ物の大切さは誰もが知らなければならないことだね。生産者と乳牛に謝りたくなるほど貴方たちには悔い改めてもらわないといけない。覚悟してほしい。


 それと、私の今日の上履き事情は平穏無事。前にも紛失した事を事務の方も覚えて下さったようで、快くスリッパを貸出してくれた。有りがたい。





 それから一週間、ガビョウを上履きに入れた続けた。


 二日目は、一日目より多く八から九個。三日目には二日目より多く十五個ぐらい。一日づつ量を増やしていくと、七日目は三人分で四箱のガビョウを使用した。食べ物の大切さを知ってもらうのも一苦労だ。


 同じものではつまらないので、二週間目からは虫の死骸に切り変えたが、収集に大変苦労をした。家に帰ってから二時間ほど死骸のみを探し回った。生きている虫は多くても死骸は少ない。効率の良い収集方法を発見したが、大変苦労をした事で思い出すと気分が悪くなるため思い出したくない。


 こちらもガビョウ同様に一日づつ量を増加。七日目分の量を収集するには本当に苦労と手間隙をかけた。三人には感謝してほしいぐらいだ。




 三週間目からはタバコの吸い殻を入れた。


 タバコの吸い殻は腹立たしいことに収集は簡単だった。通学路や公園の周りに必ず落ちている。もっと腹立たしいことに空き缶や紙屑なども落ちている。帰宅して吸い殻収集のついでにゴミ拾いも行うことにした。


 時々、近所の方から話しかけられ、こぞって『偉いね』等と言われた。話し込むのが面倒なので『どうしようもなく汚いので致し方ないです。向こうにもゴミがあるので失礼します』の対応で切り抜けていたら、収集三日目はゴミ拾い仲間ができた。


 この日は定年して直ぐのおじさんと二人で町内を回った。四日目にもおじさんは参加で、さらに奥さんもご一緒だった。すると、五日目はご夫婦のお友達やご近所のお知り合いが参加し、六日目も参加人数が増え、七日目には二十人程の集団となっていた。


 おかげで町内はとっても綺麗です、ハイ。


 おかげでゴミ拾い後に隣町までタバコの吸い殻を収集しにいきました、ハイ。


 おかげで今度からは、毎週日曜日の朝が町内ゴミ拾いの日に決定になりました、ハイ。


 やっぱり食べ物の大切さを理解して貰うには苦労をすると実感した。三人には、感謝は勿論のことお礼までしても罰はあたらないと切実に思う。


 何はともあれ、タバコの吸い殻も無事に収集でき、町も綺麗になって良かった、良かった。





 最終の四週間目からは良く堪え頑張ったという意味を込めて、ご褒美でポプリを作って入れて置いた。


 お庭で摘んだハーブや花で作った正統派もあれば、路肩に佇んでいたハーブで作ったイレギュラーな物もある。一週間、違った香りを楽しんで貰えたはずだ。一回だけ青臭い香りがした。


 まあ、受け取って貰おう。

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