記憶5
一日という短い時間を、余すことなく堪能した私は、そろそろ行動計画通りに観光しているであろう同グループに合流するため、最終観光場所に向かうことにする。今から向かえば、お土産を買い終わっている同グループに出くわすはずた。バスに乗り十分程度揺られ、下車してから五分程歩くと、向かいから少し掠れた笑い声と女子の声高な笑い声が聞こえた。私は、それに向かって足を早めた。
合流無事完了。
計画通りに進む素直な人達で本当によかった。おかげで問題なく終わることができる。
私は後ろに着こうと思いグループに寄った。
グループ男子一人が近づく私に言い放った。
「こっちくるんじゃねーよ、一人で宿に帰れ」
掠れ声の持ち主は最後に舌打ちをした。
こいつは何を考えてるのだろう。頭のネジが飛んでる男子にわざわざ教えてさしあげるとしよう。幼稚園児でもわかるように丁寧に。なんて親切。
「よく考えなきゃだめだよ、君。ホテルの前に先生が待ってるでしょ。到着の報告しなければいけないよ」
「何、あたり前のこといってんだよ。するに決まってるだろ」
やっぱり頭弱い奴なのか。このグループのリーダーなのに、事の顛末を考えることができないなんて。私はさらに分かりやすいようにユックリと話した。
「私が一人ホテルに戻ると〜、先生は〜他の奴らどうした〜! って聞いてくるよ〜、はぐれましたと伝えるよね〜…」
「だから、どうしたんだよ。俺達が戻った時にお前が一人でどこかに行ったって言えばすむだけだろ」
説明途中で噛み付いてくるじゃない。せっかちな奴だな、しかも五月蝿い。
「それじゃ、出発報告後直ぐに逸れた〜って伝えていいのかな〜?」
その男子はハッとしている。今さら気付くなんて、ネジ何本ぶっ飛んでいるのか。
「私はホテル周辺をずぅ〜っと探して戻ってくるの待っていた〜って伝えちゃうよ〜」
実際は違うけどね。一人楽しくしてましたなんて自分の不利益な事なんて言う訳がない。
「もしかしたら〜、もう到着してるかもしれないと思って〜先生に確認しにきた〜と訴えたら鬼の顔で怒られるのは貴方たちだよ〜?」
明らかに、五月蝿い男子は動揺してうつむている。同グループ連中もどうしようだとか、大丈夫だよとか囁き合って、動揺している。
あっ! 女子一人泣きそうだ。うわ、泣いちゃった!
よし、ここらでいいだろう。
「皆で一緒にに帰れば問題ない。もうそろそろ戻らないければいけない時間になる。じゃあ、一緒に行こうか」
そう告げた私はグループの面々を見渡し先頭切って歩き出した。五蝿い舌打ち男子はホテルまで黙って着いてきていたし、同グループ連中も同じように黙って着いてきていた。
私が説明を説いていた場所はお土産屋のメッカで周辺には他校生もいたし、本校生もいたし、同じクラスの生徒もいたが、私は目に入れずホテルへ戻った。
滞りなく到着報告は終わり、夕飯を食べ、お風呂にユックリと浸かり、読書する暇なくグッスリと寝た。
眠りに落ちる寸前まで、同室には同グループの一人がメンバーに居たが、ずっと啜り泣きしていた。そういえば、私が、親切かつ丁寧に説いていた時に泣いた子だった。