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記憶14

 その後のイジメは今までからすると、とても可愛いものになった。


 その8回目は、読んでいた本の紛失。


 今回も、お手洗いに向かった合間に起った。既に何回も読んで、頭の中に内容が全て入っている本だった。似たような本は何冊か持っているので、どなたかに差し上げたという事にしようと考えた。


 ただ、本を貰った人にお願いしたい。本の内容を、忠実に再現して欲しいという事を。そして私に届けて欲しい、お弁当を。


 本の内容はキレイで美味しいお弁当の作り方となっていた。おかずは色とりどりで、たこさんウィンナーに胡麻で目が作ってあり、お握りは米俵型で、それぞれが混ぜご飯で色が違う上、海苔が巻いてある。


 見ているだけでヨダレ物である。


 自分でも何度か作った事はあるが、中身を知っているために醍醐味が半減する。ならば母から作って貰うという事もできない。給食もあるのに作って貰うこと迷惑をかけてしまう。もし作って貰ったとしても、本と同じ様にはしてならない。


 もっと幼い頃にお願いしたことがあったが、お弁当内容はお握りとヤキソバに申し訳程度、プチトマトといった残念な結果だった。


 なので何かの行事によりお弁当が必要な場合は、私が作って持って行っていた。ついついお弁当の本を買ってしまい、学校に持参し給食前には読み返していたのだった。





 数日後、午前中の授業に異動教室があり、戻ってくると机の上にお弁当が置いてあった。


 赤いペイズリー柄の包みを開くと、カーキ色のお弁当とメモ用紙が出てきた。メモには『食べて下さい』と書いてある。


 おそらく、本を差し上げた方がお礼として届けてくれたのであろう。


 それならば是非頂くとしよう。断然、食べ物を粗末にはできない。


 給食の量を減らしてもらい、昼休みに外でお弁当を食べることにした。


 見た目や味は、私が作ったお弁当には劣るが一生懸命作ったという感じが出ていた。なので食べ終わったお弁当を洗って包む際に同じくメモ用紙を書いて入れて置いた。内容は次の通り、『五十五点。本と同じに作りましょう』といった親切心でアドバイスを書いた。そして、授業が終わり帰り際、机の上にお弁当を出して置いた。私が帰れば持ち主が取りにくるはずだ。


 それを始めとし、頻繁にお弁当が机の上に見掛けるようになった。


 お弁当箱や包みが毎回異なる。メモ書きの筆跡もそれぞれ違い、だいたい二週間もすると同じお弁当箱と筆跡を見掛けるようだった。


 その毎に、点数とアドバイスを書いたメモを入れといた。


 評価したせいか点数は徐々に上がっていった。食べる側としては何よりである。





 しかし、何ヶ月も続くと体重が気になり出す。


 やはり、昼食べすぎのようで夕飯が殆ど喉を通らなく、家族に心配されつつある。このままでは面倒な事になってしまう。


 なので今度からはメモ書きの内容をプラスした。『これ以上お弁当を作らないで下さい』ということを。


 だが、次の日にもお弁当は置いてあった。今日はピンクのお弁当包みでよく見かけるキャラクターがプリントされている。元々、複数の人の形跡はあったので直ぐに止めてもらえるとは思わなかった。同じ様にメモ書きを入れ、帰り際に机の上に出して置く。


 また移動教室から戻るとお弁当が置いてあった。今度は紺色のお弁当包でお弁当箱は黒だ。


 私のメモ書きの内容は伝達して貰えないのだろうか……。


 どれだけ私を太らせたいのだろう……。


 まだ暫く、ほとぼりが冷めることは無くお弁当を食べ続けた。


 食べた時の夕飯は、小鳥の餌ほどしか食べれず、結果痩せてしまった。良いのか悪いのか分からないが、このままだと家族の余計な心配が出てきそうだ。要らぬ厄介事から免れるため、地道に毎回メモを入れた。





 努力は実を結び回数はかなり減った。だが、卒業まで完全には無くならなかった。





 何故私の机の上にお弁当があったの謎だが、よくもまあ、多くの人お弁当を食べたものだなと思う。


 ただ心残りを挙げるとしたら、本と同じ様な100点満点を食べる事ができなくて残念だったという事。最高得点で89点で、まだ少し見た目の華やかさが足りなかった。

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