記憶13
昼休みや放課後、しらみ潰しに探し回ったが、結局みつからなかったので泣きながら帰路についた。帰り道が、涙で通った跡がわかるのではないかと思うくらいに泣いた。
途中、何人もの帰宅する生徒がこちらを見ているようだったが気にせず前を向いて歩く。早く、一人きりになりたかった。
家に戻って自分の部屋まで入っても、立ち直る事はできずにいた。ベッドに潜り込むと、さらに悲しくなってしまいむせび泣いた。そのまま、夕飯も食べずに泣き疲れ眠りについてしまった。
翌日、やはり立ち直る事はできず学校には行けなかった。布団の中で悲しいことは考えないように努力したが、何かの拍子に思い出し涙のスイッチが入る。ティッシュボックスを傍らに過ごした一日となった。泣きつかれては寝り、目が覚めては、また泣き疲れては寝るを繰り返した結果、真夜中に目が覚めてしまった。これ以上は眠れないと悟ると、私はベッドに腰を掛け考え始める。
これ以上、悲しんでもミノウ君は戻らない。
何処に行ったのか。
あれだけ探したのに見つからないという事は、既にこの世を去ったと思うしかないだろう。
それならば、悲しんでいる場合じゃない。盛大に皆で弔うことにしようではないか。
私は今まで集めて家の子になった子達を、テレビが見えるように並べた。隙間なく部屋に並べた子達と共に、『ミノウ君』が主役アニメのDVDで勇姿を見ながらお別れをする。
翌々日も学校へは行かず、その日は一日中、お葬式となった。
朝から晩まで、別れを惜しみながらテレビを見ていた。時には笑い、時には泣き、時には怒り、全力で弔う。
君の事は一生忘れはしない。たとえ、保管用として二個買いしておいた同じ姿の君がいても。君は、君だ。一緒に過ごした短く儚い時を。雨にも負けず、風にも負けず、真夏の太陽にも負けない、共に登下校した日々を。出会ったときから会えなくなった日まで決して忘れはしない。
またいつの間にか、その場で眠ってしまい気付くと窓の外は明るくなっていた。
昨日の弔いで心の整理ができたお陰か、涙が出る気配はない。清々しい気持ちとなり、今日も早く家を出て登校し、何時ものように読書に勤しんだ。なんとか、悲しみを乗り越える事ができ良かったと思う。
しかし、登校したその日にまた不可解な事が起きたのだった。
三日ぶりのクラスは、何やら静かな気がする。私の読書を邪魔するような騒がしい声は聞こえない。逆に隠し事をするよう喋っているようだ。
まあ、気が散らなくてすむのだか、やはりいつもとはクラスの雰囲気が違った。
チャイムが鳴り皆が席に着く。私も本をしまうと、いきなり隣から五月蝿い声で『大丈夫か』と、問われた。
全く意味が分からない。赤の他人に何を心配されなければいけないのか、意味不明だ。なので素っ気なく『何が』と言葉を返す。
お隣は何かを言いたかったのか、私を見ながら口をを開けては閉じ、開けては閉じを繰り返している。ようやく言葉が出かかったとき、ドアが開く音がして担任が教室に入ってきた。そして、五月蝿い男子は口をつぐんだ。
そして、クラスメイトの溜息がそこら中から一斉に聞こえた。
何なんだろこのクラスは。やけに息が合って、示し合わせたとしか思えないタイミングだった。きっと仲が良いクラスなんだろう。そういう事にしておこう。私は深くは考えず思い込んだ。
ここの生徒達は不可解な人が多い。呆れた私は、皆と遅れて溜息をついた。
やはり担任も敏感に察知したらしく『どうしたんだ』と言って慌てていた。