記憶10
不可思議な形で終わったが、この四回は可愛らし出来事だったと思う。
五回目、制服紛失。
本当に、やめて下さい。
お値段高いんだから!
ずっと、貯めていたお年玉や月々のお小遣がドンドン減ってしまうこの悲しさ、理不尽さ、やるせなさ、分からないのだろうか。
よし!
分からぬなら、分かるまで分からせよう、制服代。
うーん、五七五にならない。
まあ、いいか。
犯人なんて知りません。しかし、私のこれから取る行動は決まっている。
疑わしきは罰しまくる。
クラスメイト全員に私が受けた仕打ちを同じ様に行えば、犯人にもお返しができているでしょう。犯人は誰でも構わないが、同じ事をされては私の貯金がいつかは底をついてしまう。すでにお金は上履きに掛かってしまっている。これ以上は黙認できない。
やるなら今しか無いでしょう。
という事で、皆さんの制服を私と同じにして差し上げた。
本日、最終時限目以降、クラスメイト全員体操着姿となる。
その時の教科担任に事情を問われたのは、教壇に近い席の青ざめ女子で、何故かまた青ざめた顔でこちらを向き視線を漂わせた。私と視線が合うと、更に青ざめた顔をした青ざめ女子は、か細く悲鳴を上げ、教科担任に向き直り『分かりません』と答えていた。だか、その問いにその答えは理に適ってい無いと思う。紛失したのは明らかなので、道理であれば『隠されました』、『盗まれました』などが正しいはず。『分かりません』では教科担任も分からない。
やはり、事情が良く分からない教科担任は他の生徒達にも問いただすが、こぞって『分かりません』の返答だった。仕方がないとの判断か、授業が開始された。
次の日ホームルームは何故クラスメイト全員が制服で授業を受けたかだった。今度は、担任に問いただされた生徒達は返答は、案の定『分かりません』だった。
それと思い出したが、私が受けた仕打ちとは制服を隠された事だけではなく、更にカッターかハサミで破かれ、チョークで悪戯書きをされ、ゴミ収集場所のごみ箱に捨てられてた。勿論、全く同じに受けた仕打ちは返した。
これで、犯人にも私の気持ちを知って貰う事ができたはずだ。同じ事は起きないだろう。
良かった、良かった。
安心していた矢先六回目、机紛失。
朝早く目が覚めたため、本日も用務員さんの次に登校した。教室に入って私の席に向かうと椅子はあるが机が無かった。
私は昨日からの読みかけの本が読みたかったので、机を探す時間が勿体なかった。早々に探すのを諦め、隣の席の机を私の席に移動する事にした。
どうせ机は個人所有物ではなく、学校の所有物なので誰が持っても同じはず、今日から私の机はこれだ。教科書やプリントや雑誌などの中身を出し、椅子の上に置いて机を移動させた。これでやっと本が読む事ができた。
私が読書を楽しんでいる間、生徒達が教室に入って来ていた。遠くの方から生徒たちの話し声が聞こえていた。暫くすると、騒がしく五月蝿い声が聞こえた。途中までは笑い声だったが、私の隣の席に近づくと無言になっていたような気がした。何分、小説が佳境に入っているので周りは気になどしてられない。
すると、遠くで五月蝿い男子の声がした。『机、何処やった』と。そして、良く聞き取れないが声高女子の慌てた声が聞こえた気がする。