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小さな奇跡
避難所での生活も数日が過ぎ、母は父と姉の手がかりを探していた。情報掲示板や支援スタッフに尋ね、必死に名前を書き込み、声をかける。
弟はまだ小さく、混乱の中で母の背中にぴったりと寄り添う。
ある朝、遠くから見覚えのある人影が近づいてきた。
「お母さん!」
母は一瞬、目を疑った。駆け寄ると、それは――父だった。軽い怪我はあったものの、無事だった。母は涙を流しながら抱きしめる。
「よかった…無事でいてくれたのね…!」
父も母の胸に顔を埋め、声にならない声で応えた。
弟も喜びで跳ね回り、避難所の空気が少し柔らかくなる。
しかし、姉の姿はまだ見つからない。再会は完全ではない。
母は父と弟の手を握り、心の奥で誓う。
――姉ちゃんも、必ず見つける。絶対に諦めない。
その日、避難所では小さな奇跡があちこちで起きていた。失われたと思われた命が、支え合う人々の手で救われていく。
母は心の中で祈った。
――どうか、明日も、家族が笑顔でいられますように。
小さな再会が、希望の光となる。
絶望の中で見つけたその光は、これからの困難に立ち向かう力になるのだった。




