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不安と祈り
避難所の夜は長かった。
薄暗い体育館の中、毛布に包まった人々の小さな息遣いと、遠くで泣く声だけが響く。母は弟の小さな手を握りしめ、祈るように目を閉じた。
「お父さん、姉ちゃん、大丈夫でいて…」
声にならない言葉を胸の奥で繰り返す。弟は眠れず、母の胸にもたれながら小さな手を握ってきた。母はその温もりに、わずかな希望を感じた。
避難所では、知らない人々が互いに支え合っていた。水や食料を分け合い、声をかけ合う。恐怖の中で芽生える小さな優しさが、母の胸を少しずつ温める。
しかし、不安は消えない。
父と姉はどこにいるのか。怪我はしていないのか。もし二人が無事でなかったら――その考えが、胸を締め付けた。
朝が来る頃、母は決意を固める。
――何があっても、家族を探す。絶対に、見つける。
避難所で出会った人々と情報を共有し、支援の手が届く場所を探す。小さな動きの中で、母は少しずつ前に進む勇気を取り戻す。
弟も母の背中にしがみつきながら、少しずつだが希望を信じ始めた。
まだ揃わぬ家族への想いが、母と弟を前に進ませる。
――絶望の中にも、祈りは光となり、心の奥に小さな希望を灯すのだった。




