分断
避難所へ向かう途中、道は瓦礫で埋まり、揺れで崩れた建物の影が、不気味に並んでいた。
父は弟と姉の手を強く握り、母は後ろから支える。息を切らせながら進む家族の目に、隣の家の屋根が崩れ落ちる光景が映った。
「わぁ…」
弟の小さな声が、震えるだけだった。姉は目を閉じ、必死に涙をこらえる。
避難所の入り口が見えたその時――突然、地面が再び揺れ、瓦礫の下敷きになりかけた瞬間、家族は離れ離れになった。
母が弟を抱きかかえ、父は姉を守ろうと反対側に飛び出した。その隙に、強い揺れが再び襲い、互いの姿は視界から消えた。
「お父さん…!」
「お母さん…!」
「姉ちゃん…!」
声だけが宙に消えていった。誰も応えられない。
周りも混乱の渦に巻き込まれ、避難所は絶望的なほどの騒ぎに満ちていた。人々は泣き、叫び、助けを求める。
母と弟は、かろうじて避難所の屋内にたどり着いた。
母は弟を抱きしめながら、涙をこらえ、「大丈夫、無事なら、きっと…」と自分に言い聞かせるように繰り返す。
だが父と姉の安否はわからない。心臓が締め付けられるように痛い。
その夜、避難所の雑魚寝の中で、母は弟の頭を撫でながら考えた。
――明日、会えるのか。もし明日、会えなくなったら、どうすればいいんだろう。
眠れぬまま、母はただ、家族全員の無事を祈り続けた。




