襲来
その夜は、異様に静かだった。雨は止み、風も少し落ち着いていたが、空気には張りつめた緊張が漂う。
突然、轟音とともに家が揺れた。初めは軽い振動だと思ったが、次の瞬間、まるで大地が怒り狂ったかのように家全体が激しく揺れた。
「地震だ!」
父が叫び、母はすぐに弟と姉を抱き寄せた。食器棚のガラスが割れ、皿やコップが床に散乱する。家具は倒れ、電気の明かりがちらついた。
弟は恐怖で泣き叫び、姉も声を震わせる。母は必死に押さえつけながら、「大丈夫、大丈夫だよ!」と繰り返す。父は倒れたテレビを押さえ、家族の体を守ろうと必死だった。
揺れは長く続き、まるで終わる気配がない。
外に出ようとしても、庭の木々は折れ、瓦が落ち、道はひび割れている。逃げ場のない恐怖に、家族の心は一瞬で張り裂けそうになった。
やがて揺れが収まり、静寂が訪れた。しかし、それは恐怖の前触れに過ぎなかった。
窓の外、町はめちゃくちゃに破壊され、建物は崩れ、人々は避難に必死だった。家族は手を握り合い、安堵の間もなく、情報を得る術もないまま、これからどうすればいいのか途方に暮れた。
父は弟と姉を抱き寄せ、母と共に小声で言った。
「行こう、まずは安全な場所へ…」
――明日、会えなくなるかもしれない。
その思いが、誰の胸にも暗く重く沈んだ。




